でか美ちゃんが「テレビから聞こえてきた金言」について考える連載、第8回。今回は『真夜中にハロー!』(テレビ東京)より。
コロナ療養期間で再確認した、仕事と娯楽の存在意義
先日、ついに私も新型コロナウイルスにかかってしまった。陽性反応が出たとはいえ無症状だったので、ただただテレビを自由に観て、ラジオを自由に聴いて、好きなときに食べて好きなときに寝るという療養期間を過ごした。
こう書くと堕落したうらやましい生活かもしれないが(実際堕落はしていたが)、2〜3日で飽きてしまい、早く外に出たいなーというのが当たり前に正直なところだった。そして自分にとって仕事という存在が、いかに自分を人として律してくれているのかも実感した。
療養期間の中でどうしても気分が落ちる瞬間はあった。本来なら今日はライブしてたのかーとか、この撮影があったのかーとか。
今は無事に復帰し、引きつづき生活の隙間で常にテレビやラジオに楽しませてもらっているが、改めて娯楽がなかったら孤独で仕方なかっただろう。想像するだけでゾッとする!
悩める人生を救ってくれる、アイドルとの出会い
“アイドルは精神的に弱っているときにハマりやすい”
さて、こんな定説はご存知だろうか? 何かのオタクなら聞いたことくらいはあるかもしれない。私のまわりでは、ことあるごとにこの説が立証されている。心の隙間にアイドルが入ってきてくれて、その存在に救われたという人は本当に多いのだ。
そんなアイドルに出会うことで、人生が開けていく瞬間を描いたドラマがある。
現在テレビ東京で放送中の『真夜中にハロー!』だ。
ハロプロ好きのマリコ、そしてその娘・ミサキの親子が経営するゲストハウス「サンプラザ朝沼」に、毎週悩める人が泊まりに来る。
そんな宿泊客にマリコがひと言「扉が現れるわ」と不穏に言い残すと、あるタイミングでまじで扉が出現。そこを開けるとハロプロメンバーがいる楽屋につながっていて……と、文字で説明しても奇想天外過ぎるのだが、そういった基本ストーリーがある。
職場になじめない中途採用の女性、後輩に抜かされた先輩、娘との関係性がイマイチな父親など、その悩みもさまざまだ。毎週ハロプロメンバーが悩みにぴったりな歌を披露し、解決そのものというか、解決できるメンタルへと導いてくれる。
この「解決そのものではなく、解決できるメンタルへの導き」という部分の描き方が、『真夜中にハロー!』のすごいところだ。それはまさにオタクが日々推しへ感じている感謝であり、罪悪感であり、圧倒的な愛の理由だから。
「大事なのはそこじゃないんです」
というわけで前置きが長くなりましたが、今回の金言はそんな『真夜中にハロー!』から。
「大事なのはそこじゃないんです」
第7話の主人公は、彼氏との未来に悩む杏果。杏果の彼氏・博之(ひろゆき)はオンラインサロンを始めたばかりの自称「夢中人(むちゅうじん)」で、大口ばかり叩き、行動力だけはあるけれどもなんの実績も伴っていない。明らかに悩む必要なく別れたほうがいいだろ、としか思えないが……というのが今回のお話。
これ、今からめちゃくちゃにネタバレをしますが、結論から言うと杏果は博之と別れない。それどころか、である。いつもエンディングの「I WISH」と共に人生のすばらしさを再確認し盛り上がるツイッターですら、この結末は賛否が分かれていた。
でも私は、今回の結末も「人生ってすばらしい」と思う。なんなら「たまんねぇな!」と、まぁまぁの大きい声で言ってしまいました。すばらしいです。人生ってすばらしい!
アイドルに出会う人間のあの瞬間の描き方もさることながら、このドラマのすごいところはもうひとつある。それは、悩める人たちが一歩前に進むとき、必ず自分の物差しだけで人生を切り開いているのだ。
ハロプロメンバーに励まされたから、マリコとミサキが助けてくれたから。背中を押してくれる要因はあれど、その先を決めるのは自分自身しかいない。
進む方向がどちらであっても一歩は一歩で、きれいごとばかりじゃない人生の描き方に毎週涙が出そうになる。
泣きそうになったところで、マリコが「This is the HELLO!」という決めゼリフを言うので、ハッと正気に戻って涙は引っ込むのだが。
今回の主人公・杏果も、誰がどう見ても別れたほうがいい博之と別れなかった。アンジュルムが歌う「大器晩成」を聴いた上で、
「博之が大器晩成かどうかはどうでもいいんです。
大事なのはそこじゃないんです」
と、彼から感じるとんでもないうさん臭さよりも、彼といるときはワクワクする、彼といるときの自分は楽しいという物差しを大事にしたのだ。
それに「大器晩成かどうかはどうでもいい」とは言いながらも、博之を見つめる杏果の瞳はあまりにも輝いている。どこかでやっぱり彼の眠れる力を信じているのだ。
杏果がよかれと思って後輩を指導するあまり、職場で煙たがられている描写も少しあった。それだけで杏果というキャラクターを判断するのも乱暴だが、博之とは違う場所で「意識高い系」と揶揄されるような側面もあったのだと思う。
だからこそ無計画で、バカげているほどにまっすぐな博之のことが、好きで好きでたまらないのかもしれない。
人には人の価値観があるから、自分自身を、人生をどういうふうに大切にしていくかはその人次第なのだ。
何度もしつこいが、別れたほうがいいだろ!と誰しもが思うストーリーで、別れない結末を選んだのが、とても『真夜中にハロー!』らしいなと思った。
そして「大事なのはそこじゃないんです」のひと言で、このドラマがいかに登場人物たちの人生を丁寧に描いているのかが伝わった。
その一話一話の描き方はハロプロ楽曲にも通じていて、だからこそ、突然扉が現れるという唐突なストーリー展開も視聴者はすんなりと受け入れられるのだと思う。
それに、扉ほどドラマチックじゃなくとも、人生を一歩進めようと思える瞬間はいつだって唐突だ。
ハロヲタでも、ハロヲタでなくとも楽しめる『真夜中にハロー!』
『真夜中にハロー!』はそのタイトルにもあるように、ハロプロが大好きな私みたいな人はもちろん、めちゃくちゃ楽しめる。
しかし、一話完結でそれぞれの人生を描いているからこそ、ハロプロやアイドルに興味がなくとものめり込めるドラマだ。悩んだことがない人間なんていないから、どこかで自分を重ねてしまうのではないだろうか。
残り3話。毎週ハロプロ関連の小ネタも差し込まれているので、ハロヲタ的にはストーリー以外の部分にも注目していきたい。
あ、ちなみに今回ご紹介した第7話、私もものすごくチラッと出演させていただきました。ハロプロ関連の小ネタとして、ハロヲタの芸能人をちらっと出演させるという遊び心も『真夜中にハロー!』の大好きな部分です! ありがとうございました!
This is the HELLO!
あなたが今何かに悩んでいるのなら、騙されたと思って『真夜中にハロー!』を観てほしい。
扉が現れるのは、もうすぐかもしれません。
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