規制されて「考えない」で済むのは本当に幸せか?(UUUM鎌田和樹)
HIKAKINやはじめしゃちょー、水溜りボンドといった多くの人気YouTuberを擁するだけでなく、あらゆるエンタテインメントを世に送り出しているUUUM株式会社。その代表を務めるのは、HIKAKINとの出会いをきっかけに同社を設立した鎌田和樹氏だ。
近頃、香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」や、年始の箱根駅伝で注目された「厚底シューズ」を世界陸連が規制を検討するなど、何かと人の選択の幅を狭め制限する動きが多い。規制することで人々が「考えない」状態を作ることははたして幸せなのだろうか。UUUMに所属するクリエイターたちとの取り組みも例に挙げながら考える。
「100%良いこと」なんて存在しない
今日もSNSのタイムラインは燃え上がっている。不倫、失言、訴訟……何かの問題に少なくない人々が石を投げつけている。それらを見て「UUUMは大丈夫だ」と笑って安心することなんて絶対できなくて、いつも「明日は我が身」と考えている。
UUUMでは年に2回コンプライアンス研修をする。HIKAKINやはじめしゃちょーといったトップクリエイターも皆集まってもらい、数時間かけて行う。薬物、暴力、著作権問題、その他のスキャンダルなど、最新のニュースを網羅的に伝えて「では、僕らの場合はどうしたらいいのか」と話し合い考えることを促す。「このチェックリストをクリアすれば問題ない」という炎上対策マニュアルなんて存在しないからだ。
LGBTやMe Tooをはじめとしたジェンダーに対する意識も高まりつづけている。100%良いことなんてもはや存在しない。何が炎上するかなんて予測不可能だ。僕らがクリエイター達にできることは、「考える材料」と「これをやったら人を傷つけるもしれない」と気づくきっかけを提供すること。経営者もクリエイターも、一人ひとりが考えつづけなければならない。
香川県の「ネット・ゲーム依存症対策条例(仮称)」が物議を醸している。「18歳未満はゲーム1日60分、休日は90分まで」「義務教育終了前のこどものスマートフォン利用は午後9時まで、18歳未満は午後10時まで」と制限する条例だ。
多くの著名人やネットユーザーが反対意見を表明した一方で、「やりたいだけやらせると勉強時間や睡眠時間が短くなる」「育児に時間をかけられないから条例で決めてもらえれば負担が減る」と賛成する意見もある。僕が問題に思うことのひとつは、条例案を考えている人がどれだけゲームやスマートフォンを理解しているかということだ。人は理解していないことを過剰に遠ざける傾向があるように思う。
職業柄、YouTubeに関しての反対意見も頂戴する。TVはOKでもYouTubeはNGという家庭もあるようだ。両者の違いは「親のフィルター」がかかっているかどうか。TVならキッチンにいる親がリビングにいる子供の様子を伺えるが、スマートフォンで見るYouTubeでは子供が何を見ているかを親がリアルタイムで確認できない。
その結果、不適切な動画に巡り合う可能性もゼロではないだろう。その可能性を徹底的に排除するために、制限する家庭もあるのだと思う。考え抜いた末の決断なら理解できるが、親がYouTubeやゲームのことを理解しようとせず、盲目的にシャットアウトすることもあるのではないか。子供と一緒に考える機会を一度でも持ったのだろうか。