性交同意年齢の議論、リベラルとフェミニストが対立する理由(小川たまか)

2021.6.18

文=小川たまか 編集=田島太陽


「50歳近くの自分が14歳の子と性交したら、たとえ同意があっても捕まることになる。それはおかしい」

立憲民主党・本多平直議員が性犯罪刑法の改正を検討する党内のWT(ワーキングチーム)で興奮のあまり口にした発言に批判が殺到した。

WTに出席していた大阪大学の島岡まな教授は、この件が報道されたあとに出演したTBSラジオの中で、驚く気持ちと今さら驚きはないという感情が同時にあった、と語っていた。

島岡教授の心中を察する。よくわかると感じる。なぜかを説明する。

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「子供の性的自己決定権」を狭めるべきではない?

本多議員の発言は性交同意年齢の引き上げに関する議論の中で出たものである。島岡教授は、年齢の引き上げを求めていて、本多議員はそれに反対の立場だ。

同意年齢の引き上げは2017年夏に性犯罪に関する刑法の大幅な改正が行われた際も議論されたが、結局見直しは見送りとなっている。つまりこれまでずっと、本多議員のような反対派の声のほうが通ってきていた。だから反対派の声が大きいことに、今さら驚きはない。しかしそれを、議員がこのような表現を使ってまくし立ててしまうことにはさすがに驚かざるを得ない。

2017年秋から始まった#metooや、2019年3月の4件の性犯罪無罪判決に端を発するフラワーデモが報道されるにつれ、少しずつ現行刑法における暴行脅迫要件のハードルの高さや、13歳という他国と比べても低い性交同意年齢の問題が一般にも知られるようになってきた。日本と同じく13歳だった韓国も2020年ついに16歳に引き上げた。

引き上げの声が少し強まってきたことで、本多議員ら反対派は焦りがあったのかもしれない。そうでなければ、いくらなんでも「50歳近くの自分が……」などという醜悪なたとえを使わないだろう。

後述するように、性犯罪刑法のさらなる見直しに反対している中には日弁連(日本弁護士連合会)を含む、いわゆる「リベラル」と呼ばれるような法曹関係者が多い。本多議員や彼に同調していた他の議員も、党内で「法律に詳しい」と見なされていたと聞く。

性交同意年齢の引き上げに反対する法曹関係者らの意見のひとつは、「子供の性的自己決定権を狭めるべきではない」というものだ。確かにこの点は慎重に議論されなければならないが、一方でこのようなリベラル法曹関係者の論を使い、「子供の性的自己決定権」をネット上で叫ぶ成人男性たちの一部に不思議なまでの過激さや攻撃性が感じられたのも事実だ。

守りたいのは「自分が13歳と性交する権利」では

ネット上のどこかで性交同意年齢の話が行われると見るや即座に出動し、「淫行条例があるからいいんだ」「子供にも性欲があるのだ」「ババアが若い女に嫉妬しているんだろう」とまくし立てる人たち。

「日本の性交同意年齢は13歳」であることを知っている人は、13歳前後の子供を持つ保護者の中でもおそらく多数派ではない。残念ながらこの問題についての関心はそれほど薄い。けれど一部の成人の間ではよく知られ、熱く支持されているのである。

あなたたちが主張しているのは「子供の性的自己決定権」ではなく、「自分が13歳と性交する権利」なのではないのですか……? そんな言葉が喉元まで出かかったのは一度や二度ではない。

だからこそ、本多議員の発言は驚く。それ言っちゃっていいんですか?と。それ、反対派の一部が必死に隠し守ってきた本音だったんじゃないんですか? 無能な味方ほど怖いものはないというが、本多議員に一番憤っているのは自民党支持層やフェミニストではなく、性交同意年齢の引き上げに反対の立場を取る人たちなのではないかとさえ思う。

立憲民主党は性交同意年齢に関する議論の取りまとめを見送ったと報じられていたのに、この騒動以降の6月10日に一転して13歳から16歳に引き上げる見解をまとめたのだから。

性的同意年齢だけではなく、性教育の施策にも目を向けてほしい

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