性交同意年齢の議論、リベラルとフェミニストが対立する理由(小川たまか)

2021.6.18

リベラル人権派が家父長制主義者とタッグを組むねじれ

筆者は性交同意年齢の引き上げに賛成する立場であり、その理由や、淫行条例があるからいいわけではないことなどはこれまでも書いてきたので、それをここで繰り返すつもりはない。

※参考:義務教育で性交を教えないのは「性的同意年齢13歳」と矛盾しませんか
※参考:日本の性的同意年齢は13歳「淫行条例があるからいい」ではない理由

今回書いておきたいのは、性犯罪刑法の改正については、いわゆるリベラルとフェミニストの間でそこそこ深刻な対立があるということだ。もちろん、「リベラル」「フェミニスト」という括りは大雑把でそこからこぼれ落ちるもののほうが多いものの、保守層の皆さんがイメージするそれぐらいのざくっとした定義として考えていただきたい。

性犯罪に関する刑法の改正が検討されていた2016年末、日弁連はこれに一部反対する意見書を出した。改正にあたっての9つの論点のうちすでに5つはほぼ退けられており、改正可能性があるのは量刑の引き上げや構成要件の拡大など4点に限られていたのに、それでもなお反対した。

日弁連のこの意見書に対して、被害当事者や支援者などからなる57団体が抗議。性虐待の当事者らが特に反発したのは、日弁連による「13歳以上であれば親や養親との性交に真摯な気持ちで同意することがないとは言えない」という意見だった。ある当事者は、これを「日弁連によるセカンドレイプ」と表現した。

※参考:性犯罪の厳罰化に日弁連が一部反対の意見書 被害者支援57団体が抗議へ

リベラルは基本的に、謙抑主義の立場から刑法の罰則規定強化に反対する。一方でフェミニストあるいは被害当事者団体らは、これまでの性犯罪刑法は被害者視点に欠け、現状では被害当事者が裁判に辿り着くまでの壁が高過ぎるとして改正を求めている。両者の対立は、2019年4月に始まった性犯罪の無罪判決に抗議するフラワーデモが、ネット上で「人権派」弁護士らから猛烈なバッシングにあったことでも明らかだ。

事情を知らない保守層あるいはアンチフェミの方が「フェミニストは本多発言にだんまりなのか」などと皮肉っているのが見受けられるが、いやもうこっちは従前からあなたたちの知らないところでバチバチですとしか言いようがない(個人の見解です)。

数年前のジェンダー法学会で、ある発表者が「性犯罪刑法の改正をめぐって、アメリカでは次のような同盟関係が見られるというシニカルな指摘がある」と発言していた。

【フェミニズム+重罰論者】vs【家父長主義者+リベラルな人権派】というねじれ関係があるというのだ。発表者は日本でも同じことが起こりつつあるのではないかと指摘していたが、私の実感としてもこれに近い。

性教育の施策や例外規定も議論されるべき

ここまで書いておいてなんではあるが、「子供の性的自己決定権を守る」立場から同意年齢の引き上げを懸念する意見を理解できないわけではない。

自民党のガチ保守の中には、子供に性的な情報を一切与えてはならないとか、子供が性的な好奇心を持つなんてもってのほかという立場から同意年齢の引き上げに賛成している議員もいると聞くからだ。性教育に対して未だに拒否感を示す議員たちだ。

※日本では2000年代のバックラッシュ以降、性教育の暗黒時代が長くつづいた(参考:政治家のジェンダー意識改革を止めた?2000年代の「バックラッシュ」とは)。今年4月に文科省が教材を公表した、子供たちを性暴力の当事者にしないための「生命の安全教育」は内容的には「性に関する安全・健康教育」と考えられるものの、文科省は「性教育」ではないとしている。

私は性的同意年齢の引き上げに賛成だが、一方で義務教育の中での性教育や性的同意の概念を教えることも必要であり、それは両輪であると考える。子供の性的自己決定権を守る立場の議員の方々は、性的同意年齢の議論だけではなく、性教育に関する施策にも目を向けてほしい。

また、立憲民主党が13歳から16歳へ引き上げる見解をまとめたのであれば、すぐに考えなければならないのは、たとえば16歳同士の性的行為をどのように扱うかというような話だろう。海外では行為者を成人の場合に限定するなど例外を設けている。この点を整理することが世論の理解のために必須であるように思う。

検討会の中では年齢差を設けることについての議論も行われており、本来であればこのような「例外事例」こそWTの中でも話し合われるべきだったはずだ。検討会につづく法制審議会でこの点を掘り下げることができるよう、議論の整理を行ってほしい。

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