規律を重視し過ぎる日本人。その高い意識が不快になってきた(中川淳一郎)

2021.5.28

文=中川淳一郎 編集=田島太陽


2020年、最初に緊急事態宣言が発令されたころに現れた「自粛警察」。その後は「マスク警察」だけでなく「ウレタンマスク警察」も話題となるなど、日本での行き過ぎた規律意識が論じられることが多くなった。

ネットニュース編集者の中川淳一郎が、日米の校則を比べながら、コロナで露わになった日本人の意識を考える。

【関連】ネット・職場の「謎ルール」と日本社会の同調圧力に呆れ果てた

規律を重視し過ぎていることの末路

「マスク警察」や「他県ナンバー狩り」「余ったワクチンを打った市長に批判殺到」等の話題を見ると「規律」というものが日本では非常に重視されることをしみじみと感じる。日本の場合、規律は「不公平は許さないし、糾弾されてしかるべき」といったかたちになっている。会社員でも役員報酬の高さが糾弾されるし、高齢者もワクチンを自分よりも早く打つ年下の公務員や市長・町長らがいたら糾弾する。これはもしかして校則を若くして徹底的に叩き込まれた原体験があるから、規律を重視し過ぎていることの末路ではないだろうか。

役員は会社に貢献したからこそ、一般社員の何十倍もの報酬を得ているわけだし、キャンセル等で余ったワクチンがもったいないから打っただけである。しかし、このような言い分は規律の前には「不公平だ!」のひと言で撃沈されてしまう。

さて、ここでは校則について日米で比較してみる。

日米の校則を比べるとわかる、禁止項目の違い

学校の教室

私は小学校1年生から中学2年生の10月までは日本の公立に通い、以後アメリカの公立中高で過ごした。日本の校則とアメリカの校則はずいぶんと異なった。以下、覚えているものを挙げる。

【日本】
・ボールペン禁止
・髪染め禁止
・買い食い禁止(ただし、あらかじめ買っておいた菓子パン等を持って行くのは許された)
・寄り道禁止
・制服・ジャージ以外の服禁止(中学)
・渡り廊下に入るの禁止(中学)
・放課後、保護者がいない場合に学区外に行くこと禁止(小学校)
・自転車通学禁止
・必ず部活に入らなくてはいけない

渡り廊下近くで同級生を肩車していたところ、教師が通りかかったのを見た悪友にうしろから蹴っ飛ばされ、渡り廊下に我々ふたりは入ってしまった。教師は我々こそ被害者であることは知っておきながら、「これも決まりだから……」とばかりに我々ふたりをビンタした。

また、小学校の場合は「男子は冬でも短パン」という校則もあった。だから、中学に上がったときは、これでようやく冬でも寒くなくてすむ、と喜んだものである。

【アメリカ】
・授業中に教室を抜け出して廊下を歩くのは禁止
・銃刀類の持ち込み禁止
・ケンカ禁止
・違法薬物の持ち込み・使用禁止
・自慰禁止
・部活は任意

アメリカの場合、こうした校則を違反するとdetention(放課後、数時間拘束される)かsuspension(悪事の度合いによって長くなる停学期間)の処分になった。日本で禁止されていることについては、いずれも禁止されていない。

しかし、なぜか喫煙は黙認されており、校舎の裏はタバコを吸う者が休み時間にたむろしており、大量の吸い殻が捨てられていた。そして「自慰禁止」については、特例もあった。とある男子生徒は授業と授業の合間の休み時間(わずか4分)、トイレへ行き大便器に座って自慰をしていたのである。

「息子は自慰をしなくては死んでしまうのだ!」

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