「降りたら人生が終わる!」と叫ぶ痴漢加害者。では、被害者は?(僕のマリ)

2021.5.5

「痴漢は犯罪です」というポスターは、呑気過ぎる

痴漢は大人しそうな人を狙う。私が狙われやすいのは、髪が黒くて化粧も地味で、服装も華美でない、身長も低い、いかにも「大人しそうな人」だからだ。

かといって、痴漢対策のために外見を変えたいかと言われたら、そんなのは癪である。実際に、金髪にしたら痴漢に遭わなくなったとか、派手な服ばかり着ていたら変な人が寄りつかなくなった、というのはよく聞く話である。

要は人の属性を選んで犯行に走っているのだから、卑劣極まりないことだ。「弱そうな人」、あるいは子供や学生などの「本当に弱い立場」にいる女性を狙って己の欲を満たそうとする痴漢。

許せない犯罪行為だが、駅に貼られている「痴漢は犯罪です」というポスターは、当事者からすれば呑気過ぎる。そんな当たり前のことを書くより、痴漢の刑罰の重さをリアルに伝えるほうが効果的なのではないかと思う。冒頭で触れた、動画の中の男性が「人生が終わる」と叫んでいたように、そのくらい重い罪だということがもっと認識されるべきではないだろうか。

「性犯罪」に立ち向かう強さ

先日、私の親しい友人が痴漢に遭った。

彼女は朝のラッシュ時、混雑するJR線に乗っていたところを痴漢に遭ったという。最初はたまたま触れてしまっただけかもしれない、と考えた。しかし、一度電車を降りて乗車位置を変えてもうしろにへばりついてくる男に気づいたとき、腕を掴んだという。

男は「誤解なんです!」と慌てていたので、疑惑は確信に変わり、騒ぎに気づいた駅員が駆けつけて連行された。友人は警察署に被害届を提出し、示談にするか刑事裁判で前科をつけるか考えているらしい。

示談金の相場を聞いたとき、私は「安いな」と思った。痴漢がトラウマになって電車に乗れない人、男性が怖くなってしまう人、さまざまな被害者がいる。その人たちの「人生が終わる」可能性が軽視されていないか。

「これは病気だから、示談金を低くして、どうして自分がこんなことをしてしまったのか、自分を見つめ直すきっかけになってほしいとも思う。そうして世の中の痴漢が減ったらいい」と語る彼女が、どういう選択をするかまだわからない。

事件として処理するのに時間を費やすそうだが、逃げずに立ち向かった友人を私は尊敬している。もっと声を上げて「犯罪」に立ち向かう強さが欲しい。彼女の勇ましさに、過去の自分が救われたような気がした。

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