父はベッドに縛られるべきだったのか。精神科専門松沢病院の「身体拘束最小化」プロジェクトがすごい

2021.3.13
米光ジャーナルサムネ

文=米光一成 編集=アライユキコ


精神科専門病院・東京都立松沢病院の「身体拘束最小化」プロジェクト本がすごい。具体事例の説得力に『はぁって言うゲーム』などで知られるゲーム作家・米光一成は「ポジティブになれる!」と勇気をもらった。

身体拘束最小化に向かって

父はベッドに縛られていた。

ぼくは、父が倒れたと聞いて急遽広島に戻った。ベッドの上で縛られてる父を前に、看護師は「暴れて落ちてしまうとケガしちゃいますから、安全帯を使っています」と説明した。

大人しく寝ていたので落ちたりしないのではないかとも思ったが、「息子さんが来られて大人しくなった」と言われて、ぼくは納得してしまったし、あのときは、病院も、ぼくたちも、そうするしかないのだろうと感じた。

病院で身体拘束をすることがある。
意識が混乱して、家に帰るんだとベッドから出ようとして転落する。点滴台に手をかけて体を起こそうとして倒れてケガをする。経鼻チューブを自分で抜いてしまう。暴れてしまう。そういったことは確かに起こる。患者の安全を守るために必要な身体拘束もある。
病院で再びケガをするのは避けたいと、考える。よかれと思って、身体拘束をしているのは確かだ。だが、本当に「身体拘束」が「よい」ことなのだろうか。

『「身体拘束最小化」を実現した松沢病院の方法とプロセスを全公開』(東京都立松沢病院編集/医学書院)は、過去に身体拘束数が多かった松沢病院が、2012年から身体拘束最小化に向かって取り組んできた状況を公開した本だ。
「身体拘束最小化」そのものが興味深い上に、困難なプロジェクトをチームでどう成し遂げるかという実例としても興味深い。

「病院に絶対の安全を求めない」という発想の転換

この記事の画像(全2枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

関連記事

米光サムネ

営業自粛要請は必要か?「新型コロナウイルス感染対策」ゲームを図上演習して考えてみた

米光一成ジャーナル

「がんばってるんだから文句を言うな」『コンテイジョン』『感染列島』の比較で見えた日本体質の呪い

「パンデミック」プレイスタート時

「パンデミック」の恐怖から世界を救え。アフターコロナをボードゲームで実践

ケビンス×そいつどいつ

ケビンス×そいつどいつが考える「チョキピース」の最適ツッコミ? 東京はお笑いの全部の要素が混ざる

「VTuberのママになりたい」現代美術家兼イラストレーターとして廣瀬祥子が目指すアートの外に開かれた表現

「VTuberのママになりたい」現代美術家兼イラストレーターの廣瀬祥子が目指すアートの外に開かれた表現

パンプキンポテトフライが初の冠ロケ番組で警察からの逃避行!?谷「AVみたいな設定やん」【『容疑者☆パンプキンポテトフライ』収録密着レポート】

フースーヤ×天才ピアニスト【よしもと漫才劇場10周年企画】

フースーヤ×天才ピアニスト、それぞれのライブの作り方「もうお笑いはええ」「権力誇示」【よしもと漫才劇場10周年企画】

『FNS歌謡祭』で示した“ライブアイドル”としての証明。実力の限界へ挑み続けた先にある、Devil ANTHEM.の現在地

『Quick Japan』vol.180

粗品が「今おもろいことのすべて」を語る『Quick Japan』vol.180表紙ビジュアル解禁!50Pの徹底特集

『Quick Japan』vol.181(2025年12月10日発売)表紙/撮影=ティム・ギャロ

STARGLOW、65ページ総力特集!バックカバー特集はフースーヤ×天才ピアニスト&SPカバーはニジガク【Quick Japan vol.181コンテンツ紹介】