父はベッドに縛られるべきだったのか。精神科専門松沢病院の「身体拘束最小化」プロジェクトがすごい
精神科専門病院・東京都立松沢病院の「身体拘束最小化」プロジェクト本がすごい。具体事例の説得力に『はぁって言うゲーム』などで知られるゲーム作家・米光一成は「ポジティブになれる!」と勇気をもらった。
身体拘束最小化に向かって
父はベッドに縛られていた。
ぼくは、父が倒れたと聞いて急遽広島に戻った。ベッドの上で縛られてる父を前に、看護師は「暴れて落ちてしまうとケガしちゃいますから、安全帯を使っています」と説明した。
大人しく寝ていたので落ちたりしないのではないかとも思ったが、「息子さんが来られて大人しくなった」と言われて、ぼくは納得してしまったし、あのときは、病院も、ぼくたちも、そうするしかないのだろうと感じた。
病院で身体拘束をすることがある。
意識が混乱して、家に帰るんだとベッドから出ようとして転落する。点滴台に手をかけて体を起こそうとして倒れてケガをする。経鼻チューブを自分で抜いてしまう。暴れてしまう。そういったことは確かに起こる。患者の安全を守るために必要な身体拘束もある。
病院で再びケガをするのは避けたいと、考える。よかれと思って、身体拘束をしているのは確かだ。だが、本当に「身体拘束」が「よい」ことなのだろうか。
『「身体拘束最小化」を実現した松沢病院の方法とプロセスを全公開』(東京都立松沢病院編集/医学書院)は、過去に身体拘束数が多かった松沢病院が、2012年から身体拘束最小化に向かって取り組んできた状況を公開した本だ。
「身体拘束最小化」そのものが興味深い上に、困難なプロジェクトをチームでどう成し遂げるかという実例としても興味深い。
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