芸能人による性暴力報道に欠けた視点。セカンドレイプを繰り返すマスコミの罪(小川たまか)

2021.2.10

マスコミは過去の罪をなかったことにしている

1月28日号の『週刊文春』より(筆者撮影)

芸能人が関連するような、目立つニュースでしか「性犯罪」事件に関心を持たない人もいる。いる、というか、おそらくはそちらのほうが多数派だ。

それだけに、このようなコラムがおもしろおかしく読まれ、当事者への憶測を「言ってもいいこと」かのような風潮が作られることを危惧する。性被害当事者が被害を告白したあとで、周囲や世間からバッシングされたり、口を塞がれたりすることを「セカンドレイプ(二次加害/被害)」という。『デイリー新潮』の記事は報道によるセカンドレイプだ。

1990年代前半、海外旅行中だった大学生6人が現地在住の男にレイプされた事件が起こったとき、日本のマスコミは彼女たちを寄ってたかってセカンドレイプした。

海外でさも浮かれていたかのように書き立てられ、全国紙でさえ「彼女らにも責任があるのではないか」といった内容の投書を掲載。ある週刊誌に至っては被害者の大学・学科名・ツアー日程を報道した。被害者の情報を晒した上で、「(彼女たちにとって)授業料はあまりに高くついたのだった」と、まるで罪人に天罰が下ったかのように書いた。

被害者の中に処女が何人いたかなど、根拠不明としか言いようのない記事もあった。あまりの醜悪さに、このころに「強姦報道のセカンドレイプを考える」というシンポジウムが東京で開催されている。

被害者たちを直接取材した『週刊現代』の女性記者は、その後「被害者の女子大生たちは地味で真面目な学生」「他紙が書いているような軽率な女子大生なんかでは決してない」と証言し、『創』では「外国人男性とのアバンチュールを求めて軽率な行動を取った女性という方程式に、被害者をあてはめてしまったメディアの状況が見て取れる」と分析されている。

このような被害当事者への苛烈なバッシング報道を見て、「自分は黙るしかない」と考えた人がいったい何人いるだろうか。マスコミの罪でしかない。マスコミは性被害の暗数を増やすことに積極的に加担したとしか言いようがない。

当時と比べれば、今は少しは「マシ」になったかもしれない。しかし当時、被害者を執拗にバッシングしたメディア関係者に反省があるかといえば、私はそうとは思えない。

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