そうか、私はお笑いが好きなんだ。
撮り溜めていた番組一覧を見てみると、ネタ番組やトーク番組、バラエティ番組ばっかりだった。私は女優になりたいと思っていたが、映画やドラマなんてほぼまったく観ていなかった。一番好きな番組は、『さまぁ〜ず×さまぁ〜ず』。持っているDVDはさまぁ〜ずさん。そうか、私はお笑いが好きなんだ。
女優を諦めたその日から、私はお笑い芸人に憧れ、憧れの人物がさまぁ〜ずさんになった。考えの浅さもエグいけど、行動力もエグい私は、次の月からは、さまぁ〜ずさんと仕事ができる日を夢見ながら、お笑い養成所に通うようになっていた。
卒業後もテレビに出るのは本当に大変だった。何度もスベり、何度もオーディションに落ちてはヘコむ毎日。それから8年ほど経ち、よくやく少しずつテレビにも呼んでもらえるようになってきた。収録や取材なんかでよく「誰に憧れているのか?」と聞かれることがあったが、さまぁ〜ずさんの名前は出さなかった。なんかこっぱずかしいというか、言うなら一緒に仕事させてもらったときに言いたい、と。なんとなくだけど、そう思っていたからだ。

本当に少しずつだけど、仕事も増えていき、やさぐれ飲酒へビースモーカーだなんていう、この上なく汚い認知のされ方もして頂け、街でも声をかけてもらえるようにもなった。


「酒を飲まないと吐く」くらい緊張。さまぁ~ずとの初仕事
そして去年。お笑いを始めてから、ちょうど10年。初めてさまぁ〜ずさんと仕事させてもらうことになった。しかも、さまぁ〜ずさんと居酒屋で酒を飲むという最高の仕事。本番前、私は『M-1』の予選と同じか、もしくはそれ以上に緊張していた。
緊張をほぐすため、居酒屋だからという言い訳をして、収録が始まる前にスタッフさんの許可を得て、酒を飲ませてもらった。とんだクズ行為だっていうのは、わかってるよ。でも、そこまでしないともう吐きそうなくらい緊張していたのだ。酒を飲まないと吐く、っていうのも摩訶不思議な話だけど。
どうにか会話が成立するくらいの状態に持っていき、いざ本番スタート。
本物のさまぁ〜ずさん。大好きなさまぁ〜ずさん。さまぁ〜ずさん本人たちの前で私は「憧れています」ということができたのだ。ひとつの夢が叶った。本番前は今日でもうお笑い辞めてもいいくらいまで思っていた。
でも、人間というのは貪欲なもので「憧れています」と口にした瞬間、お笑いまだまだ辞めないぞ、という決意に変わったのだ。さまぁ〜ずさんを筆頭に尊敬しているたくさんの先輩たちと、もっともっと仕事をするためにも、絶対に辞められない。そして、私もいつか誰かの“憧れの人物”になって、ソイツと仕事がしたいなと、心から思った、そんな一日だった。
納言・薄幸の「クイックジャーナル」は毎月1回の更新予定です。
関連記事
-
-
「奪われたものは取り返すつもりで生きていく」FINLANDSが4年ぶりのアルバムで伝える、新たな怒りと恥じらい
FINLANDS『HAS』:PR -
牧場バイトからアイドルへ、かてぃが歩んだ多彩な仕事遍歴
求人ボックス:PR