BLM、大坂なおみ、トランプと安倍晋三…粉川哲夫×TVOD“2020年”を考える(7~12月)

2020.12.31

トランプ大統領と安倍晋三

プシク 差別は、言語的・身体的に埋め込まれた無意識に裏打ちされて現象し、政治性や暴力性を持つわけですが、うっかり言っちゃいました、やっちゃいました、申し訳ございません的処理が多いですね。しかし、身についた差別(無)意識がなければ、言動や行為つまり表現としての差別は起こり得ないでしょう。
トランプは、コロナを「チャイナ・ウイルス」と言い、産経新聞とその論客も「武漢ウイルス」と言っていますが、トランプの場合、記者会見で身障者のジャーナリストの身ぶりを茶化したり、非白人に対する人種差別を露呈する発言をしています。彼が接触恐怖であることも証拠映像があります。
心理学者でもある姪のメアリー・L・トランプが、彼のどういう生活と環境からあのような性格と政治が生まれたのかを分析して本にしていますが、差別(無)意識というものは、しつけや教育なんかでは変えようがなく、説得や対話の域を超えているんですね。コロナで社会や集団の内部に「巣穴」が無数にできつつある今、逆にそれが差別をいっときリモートに隔離・封印するカプセルになる側面はないでもない気もします。

パンス 米国ではトランプが退きましたが、その少し前、9月に日本では安倍首相が突然辞任しました。長い任期の中で、初期はアベノミクスと極右的な雰囲気を打ち出し、後期は疑惑にまみれていましたが、やたらと高い人気を保持しつづけていました。さすがに再登板することはないと思いつつ、しばらくしたらなんとなく待望論が出てくるかもしれません。
10年ほど前までは、いずれ日本にも小泉より威勢のいいポピュリストが出てくるのだろうか、などと考えていました。しかし、そのあと本当に長期政権を担ったのは、毅然としているわけでもなければ、トランプとゴルフに行ってバンカーで転倒してしまうようなキャラクターでした。かつての日本ではさんざん唱えられた「改革」でしたが、ここ10年は、社会の新陳代謝より、ちょっとマヌケでも親しみの持てる存在が求められるようになったのかもしれません。

Japan’s PM falls into a golf bunker - BBC News

プシク 安倍政権の「長命」は、彼の「国民的」人気のためではなく、比較的破綻なきエネルギー供給がつづいた稀有な時期(石油からガスへの転換期)に恵まれたからに過ぎません。リーダーを個々人が選べない国、「市民」という概念が成り立たない国。ここでは「デモクラシー」もへったくれもありません。が、ちなみに、「デモクラシー」とは、現存する矛盾や格差を軽減するための「やせがまん」の便宜的なルールです。それ自体が「虚妄」だとしても、それがなければ、矛盾や格差は歯止めなく亢進するでしょう。
米国「市民」は、大統領特権を極限まで私有化したトランプのおかげで、それを身をもって経験したはずです。ただし、米国「市民」は、そのために、「デモクラシー」とは別の道もアリだなとも思い、「右」は反国家・反連邦(つまりは州=国家主義)、「左」は脱国家(ある種のアナキズム)への模索を始めたようにも思えます。むろん、それは、新バイデン政権にはカバーできない動向です。2021年にはそれらが否応なく露出するでしょう。

トランスローカル

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