1回死んだ、知らない人とルームシェア…納言・薄幸の2020年個人的ニュースベスト3

2021.1.1

3位 1回死んだ

よく人間は“死ぬほどうれしい”とか、“死ぬほど〜~”という言葉をたとえで使うことがあると思うのだが、私はスベり過ぎて、本当に1回死んだことがある。

コロナ騒動もまったく無かったころ、そうそうたる顔触れの先輩たちに混じって、とある番組の収録に参加させてもらったときのこと。2時間ほどの収録だったのだが、体感4年に感じるほどに、それはそれはもう、お見事にスベった。

同じくらいスベったはずなのに、収録終わりの楽屋で、頬を破こうとしてんのか?ってくらい、シャケ弁を頬張っている相方に対して、食欲をなくしな!という、二度と使わないであろう注意をしたくらいだ。

もし、たまたま床にスタンガンが落ちていたら、躊躇することなく相方に放電をかましていただろう。よかったな相方。たまたま床にスタンガンが落ちてなくってさ。

そんな悔しい収録の帰り道。

両足4キロの重りをつけて歩いて帰らされても、なんの文句も言えない出来だったのに、ありがたいことに番組側がタクシーチケットを用意してくれたので、それを使ってタクシーで帰宅していた。

もちろん、これぞ絶望!!!という顔をしながら乗っていたのだが、しばらくすると、車内中に、何かが燃えたような匂いが充満してきたのだ。

運転手さんも不思議がっていたが、タクシー自体には異常はなさそうだ。すると運転手さんが、ハッとした顔をしたかと思うと、こう言葉を発した。

「これは、線香の匂いだなあ」

ぼくは、幸せだなあ。みたいな加山雄三風の言い方が気にはなったが、確かにそのとおりだった。線香の匂いが、タクシー中に広がっていたのだ。運転手さんもこんなこと初めてらしい。

あの匂いは、確実に私から漂っていた。

私はこの日、本当にちょっと死んだのだ。死ぬほどスベったと思っていたけど、スベり過ぎて本当に死んだのだ。人間って、いや、芸人ってスベり過ぎると死ぬ生き物なのだ。

なんだかいろいろ勉強になった日だった。

その証拠に、先輩から救いの飲みの誘いが来たくらいから少しずつ線香の匂いは薄れていった。その日の酒は、しょっぱかったぜ。。。

知らない人と始めたルームシェア

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