タブーとされる政治的発言が増えていったワケ
そんな状況ながら、なぜ芸能人をはじめとした著名人の政治的発言が今年は目立ったのか──。
ひとつは前述のとおり、別に地上波テレビに出ないでもいいし、CMを獲得しないでもネットやライブでキチンと稼げることがわかったからだろう。もうひとつは、これと関連するが、事務所に所属しないでも構わない、というコンセンサスが芸能人の間に生まれたからだ。
今年、政治的発言の目立った小泉今日子に関しては「キョンキョン、突然どうした!」みたいな声はあったものの、彼女はかなり前から名うてのエッセイストとしての地位は確立していたのだ。だから意見を言うことには慣れていた。実際、彼女は個人事務所を設立し、自由に発言をつづけている。
事務所とタレントのパワーバランスが変化しつつある
近年「新しい地図」をはじめ、錦戸亮、手越祐也などジャニーズ事務所からの退所が相次ぎ、オスカープロモーションからも米倉涼子や剛力彩芽、岡田結実らが脱退している。これも自分個人の才覚で食っていける、という自信とインフラ(インターネット)があるからだろう。これから芸能事務所は単なる「人気者養成機関」に成り下がってしまう可能性はある。ある程度売れたら芸能人からポイッと捨てられてしまう。
芸能人個人はSNSやYouTubeで膨大なファンと直接つながっている。だからこそ事務所は彼らの自由な活動を阻害する邪魔物的な扱いをされる。かつては「ウチの事務所を辞めたら芸能界から干すぞ! すべてのテレビ局・出版社に出禁通告をするからな!」と流出を阻止できたものの、今や「どうぞどうぞ。むしろ私、さっさと辞めて自由になりたいんです。テレビと出版社がなくても大丈夫ですし、古臭いメディア以外からは私、仕事もらえますんで」状態。
ネットが発達した今、こうした恫喝は「パワハラ」と糾弾され、しかも「個人の自由を阻害する害悪」とも扱われる。コロナでテレビや映画の仕事が激減した芸能人はYouTubeに収益の可能性を求めた。そして「案外できるじゃん♪」となった。2020年は、「芸能人の事務所離れ元年」であるとともに、「著名人の政治的発言がタブーでなくなる(かも)元年」と言えるかもしれない。
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