複雑過ぎるニューヨーク地下鉄路線図が「いいとこどり」のリニューアル
ニューヨーク地下鉄路線図がやっと! 世界の路線図マニアたちが安堵した「問題児」の路線図リニューアル事件を、路線図エバンジェリスト井上マサキがご報告。
全部盛りのニューヨーク地下鉄路線図
僕と一部の路線図マニアの間で「問題児」と呼んでいる路線図がある。ニューヨーク地下鉄だ。
路線数27、駅数472。世界最大規模の地下鉄網を描いた路線図は、とにかく複雑。実際のPDFをご覧いただくとわかるが、ただでさえ路線や駅が多いのに、ストリートや近隣施設、公園、トンネル、橋の名前まで書いてある。ラーメンで言ったらトッピング全部盛りである。
東京をはじめ、ロンドンやパリ、北京など、他の主要都市の地下鉄路線図は、わかりやすさのために情報量を絞ってきた。路線をダイヤグラム型(縦・横・斜め45度の直線)で表現するなど、可能な限りシンプルな形で路線を描いている。
それなのに、ニューヨーク地下鉄の路線図は真逆の方向に向かい、全部盛りマシマシの状態で約40年もの間使われてきた。反抗期にしては長過ぎる、そろそろ同級生たちに迎合したらどうか、あなたももう大人なんだからと、ずっとこの問題児に気を揉んでいた。
そんな親心を知ってか知らずか(というか絶対知らないけど)、先月20日にMTA(ニューヨーク州都市交通局)が新しい路線図を公開した。その名も「MTA Live Subway Map」。
この路線図、ぱっと見はシンプル、しかし情報量はマシマシという、矛盾を両立させた内容に仕上がっている。いったいどういうことなのか。ちょっと触ってみてから、この記事に戻ってきてもらえたらうれしい。
幾何学か、地理学か
そもそも、ニューヨーク地下鉄の路線図はずっと「問題児」だったわけではない。
かつてニューヨークには3つの鉄道事業者が地下鉄を建設し、それぞれ路線図を作っていた。お互い競合関係にあるから、自分の路線図に商売敵を載せようとしない。でも利用者からすると困っちゃう。
そこで、民間の製図会社が統合版の路線図を作り、そのライセンスを販売した。ライセンスを購入した企業は、自社名入りの路線図を作って配布する。路線図は広告として機能していたのだった(これはニューヨークに限った話ではなくパリなどもそう)。
ようやくすべての路線が記載された公式路線図ができたのは、1940年にニューヨーク市交通委員会によって3社が統合されてから。その後、路線の追加などに伴って細かいアップデートを繰り返し、1972年にあるデザインが完成する。
イタリア人デザイナー、マッシモ・ヴィネッリにデザインされたニューヨーク地下鉄路線図は、他の都市と同じようなダイヤグラム型だった。実際に公式路線図として採用され、7年間使用されている。すっきりと美しい形に収まった……かのように見えるのだが、実はこれ、実際の地形とはだいぶかけ離れており、乗客から不満続出だった。
ニューヨーク地下鉄は、北のブロンクス地区、東のクイーンズ地区、南のブルックリン地区を起点とする路線が、中央にあるマンハッタン島を経由して走っている。まるで組み紐を編むように、南北に細長いマンハッタンに20以上の路線が密集してしまうわけで、これを縦・横・斜め45度で描いてしまうとどうしてもスペースが足りない。しょうがないからと駅を移動させちゃうと、どんどんリアルから離れてしまう。
美しいけどわかりにくい。きれいだけど読み取れない。ヴィネッリのデザインは批判を浴び、ついに1979年、現在の路線図の原形である、マイケル・ハーツのデザインが採用された。それが今の「全部盛り」のやつである。
問題児にも歴史があるのはわかったが、とはいえモヤモヤするものはある。実際に現地に行くならハーツのほうが詳しいけど、全体をざっと俯瞰するならヴィネッリのほうがクリアだ。幾何学vs地理学の、ちょうどいいところのものはないものか……。
お待たせしました。ここでやっと新作「MTA Live Subway Map」の出番である。
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