「ドラフト最下位指名」から学ぶプロ野球の希望と絶望

2020.10.31
ドラフト最下位こそが人生

10月26日『プロ野球ドラフト会議2020』が行われ、12球団のドラフト指名選手が確定した。ニュースの主役になるのは上位指名選手たち。だが、ドラフト制度の醍醐味は最下位指名にこそあるのだと、スポーツライター・オグマナオトは力説、今こそ読んでほしいと『ドラフト最下位』を熱く推す。

ドラフトの余韻に浸る今こそ読みたい一冊

コロナ禍で迎えた『プロ野球ドラフト会議2020』。
各球団、収益大幅減が間違いないだけに、指名人数が減るのでは?という事前予想もあったが、蓋を開けてみれば昨年を16名上回る123名(支配下74名、育成49名)が指名された。

最後の123番目にコールされたのは、巨人育成12位の加藤廉(東海大海洋学部)。ドラフト会議が始まって3時間後、1位指名の生中継をしていたTBSでは、毎年恒例(なのに毎年“緊急生特番”を掲げる)中居正広司会による『ドラフト緊急生特番!お母さんありがとう』が放送されていた時刻だ。

さすがに育成最後の指名まで注目するファンは少数派かもしれない。ニュースでも野球サイトでも、いつも話題の中心は1位指名選手であり、上位指名の有力株たちだ。

だが、この「ドラフト最下位指名」にこそ、ドラフト制度という人間ドラマの醍醐味が詰まっている。そんなことを教えてくれる本が、『ドラフト最下位』(村瀬秀信/角川書店)。ドラフトの余韻に浸る今こそオススメしたい本といえる。

“最下位から千葉の誇りになった男”福浦和也

《プロ野球選手に“なった人”と“なれなかった人”。その境界線を引くものは何なのか》
そんな問いと共に、本書ではドラフト会議で最後にコールされた経験を持つ、16人の野球人を尋ねていく。

たとえば、“最下位から千葉の誇りになった男”福浦和也。
1993年のロッテ7位。のちに“幕張の安打製造機”として2000本安打を達成した名球会入りのレジェンドも、プロ入りでは全体最下位となる64番目での指名。しかも、入団時は“投手”だった。

入団時の背番号は、支配下登録枠70名の最後、を意味する70番。その上、プロ1年目に投手失格の烙印を押され、打者としてもなんの実績もなかったため、一番下からの再スタート。さらに、プロ4年目のキャンプでは球団裏方と部屋が同室だったため、《『ああ……俺はもう今年でクビだな。この部屋割りは“裏方のドラフト1位”だということなんだろう』って覚悟しましたよ》と回想する福浦の言葉が綴られる。

そんな苦しい立場から、いかにして福浦は千葉の誇りになったのか? 昨年限りで現役を退いた福浦だが、ドラフトで最後にコールされた男は、同期入団組で最後まで現役生活をつづけた、という四半世紀の歩みはやはり読み応えがある。

“再生された男”田畑一也

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