無理やり過ぎる杉田水脈擁護 ネット負の遺産として永久保存(小川たまか)

2020.10.27

文=小川たまか 編集=田島太陽


杉田水脈衆議院議員が「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言したと報道されてから1カ月が経った。当初本人は否定するも、与党内からも批判の声が挙がり、その後ブログで「(発言を否定したことは)事実と違っていた」と綴った。

支持者からは「誤報」「デマ」「切り取り」とさまざまに擁護されたこの騒動の推移を、ライターの小川たまかが報告する。


記者たちの憤りも感じた自民党本部前

「学術会議への人事介入で、一番喜んでるのは杉田水脈でしょ」

10月13日、永田町の自民党本部前で、知り合いの記者がそっとこう呟いた。この日、13万6000筆の辞職を求める署名が持ち込まれたが、自民党は受け取りを拒否した。

10月13日、杉田水脈の辞職を求める署名を持って自民党本部を訪ねた「フラワーデモ」主催者ら。党は受け取りを拒否

9月末に報道された杉田水脈議員の「女性はいくらでもうそをつく」発言は波紋を呼んだが、その後、学術会議に関する報道が流れたことでいくぶん話題が逸れた感があった。人事介入のおかげで報道が減って、杉田議員はホッとしているはず、そういう意味だった。

とはいえ、3日で忘れ去られることもある政治家の失態。もうひと月が経つ今でも話題がつづいているのは、それだけこの議員の注目度が高いからだ。これまでの数々の暴言と説明責任から逃げつづける態度。署名受け取りを拒んだ関係者に質問をぶつけつづけた現場の記者たちからも確かな怒りを感じた。

杉田水脈議員が誰のほうを向いて発言しているのかはわかりやすい。釈明については「ブログ」を読んでくれと彼女は言うが、あのブログで納得できるのはネット上で彼女を支持する人たちだけだ。

抗議の声を上げた人が納得できるような説明を杉田議員はけっして行わない。そのように頭を使うことをせずとも、一部の差別主義者の代弁に徹すれば議員でいつづけることができた成功体験があるからだ。

杉田支持者、読売の報道はほとんどスルー?

はい、それでは彼女の支持層はどのような人たちなのか。

党内閣第一部会などの合同会議で、「女性はいくらでもうそをつけますから」という発言があったと報じたのは9月25日の共同通信。翌26日に杉田議員は「一部報道における私の発言について」というブログを公開して、「報道にありましたような女性を蔑視する趣旨の発言(「女性はいくらでもうそをつく」)はしていないということを強く申し上げておきたいと存じます」と綴った。

このブログが公開される前後から、ツイッター上では「共同通信の誤報」「切り抜き」「本人が否定している」といった書き込みが散見された。彼らの中では、共同・朝日・毎日・東京あたりが報じただけなら偏向報道決定、かのようだった。

週が明けて9月28日には、読売新聞が「『女性はいくらでもウソつける』…自民・杉田衆院議員、性暴力相談事業を批判」という記事を出した。会議の出席者から独自に裏を取ったと思われる記事だった。

読売が報道したとあっては都合が悪いのか、杉田支持者の多くはこの報道はスルーしているように見えた。

私は9月27日にYahoo!ニュース個人で杉田議員のブログ内容を批判する記事(「女性はいくらでもうそ」は言ってない? 杉田水脈議員の弁解ブログが輪をかけてひどい理由)を書いたが、杉田擁護者の中には「悪意のある共同通信記者の小川たまかの虚偽報道」とツイートしている人がいた。「敵」を雑に一緒くたにするところがおもしろい。私はしがない野良のライターなので共同さんに失礼である。

与党内からも批判が出たけれども……

9月29日、橋本聖子男女共同参画担当相が杉田発言について「非常に残念だ」「自民党として適切な措置をするべきだ」と発言したことが報道されると、今度は「橋本聖子事務所によると、橋本聖子大臣は『女性はどれだけでもうそをつける』との発言を批判していないとの事」というツイートが拡散し、このツイートを根拠にして報道を否定する書き込みがなされた。

【参考】杉田議員を批判した橋本聖子氏の発言「事務所が否定」は誤り。「女性はいくらでも嘘」発言めぐり拡散(BuzzFeed News/2020年10月2日)

BuzzFeed Newsの記事にもあるように、橋本氏の発言には録音がある。そうでなくとも、新聞報道よりも匿名アカウントのいちツイートのほうが自分たちに都合がいいからそれを信じるとは「ネットで真実」にもほどがある。

9月30日には下村政調会長が杉田議員を口頭注意したことが報じられ、10月に入ると世耕幹事長が「言語道断」「今回が最後」と非難を重ねた。

このように与党内からも批判があり、ついに杉田議員本人も10月1日更新のブログで発言を否定したブログについて「事実と違っていたことをお詫び」したのだが、デマだ切り取りだと擁護しつづけてきた杉田ファンの気持ちは収まらない。

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