命より重い仕事なんてない 「仕事に殺される」前に考えてほしいこと (中川淳一郎)

2020.10.20
中川淳一郎1020ジャーナル

俳優、アーティストなど、著名人の自殺や逝去のニュースが頻繁に報じられている。言葉にならない、重苦しい雰囲気が社会全体に漂っているようだ。

仕事や人間関係の悩みなどから、気づかないうちに限界を超え、心身に不調をきたす人があとを絶たない。ネットニュース編集者の中川淳一郎は、複数の知人を過労で亡くした経験から「なんとかして仕事に殺されないようにしなくてはいけない」と呼びかける。


「仕事が人を殺す」状態になってしまった

過労が原因で知人がこれまでに何人か死んだ。ひとりは月間残業200時間を超える30代後半男性だったが、自宅で妻と食事中、突然食べ物を吐き、そのまま倒れて死んでしまった。30代前半女性は、鬱病を患い自殺した。電通に勤めていた高橋まつりさんも、パワハラを受けるなどして自殺した。

かくして「仕事が人を殺す」状態になってしまったのだが、なんとかして仕事に殺されないようにしなくてはいけない。たとえば納期が間に合わなかったり、不具合が発生したとしよう。そこで挽回できないと感じた場合「死んでお詫びを」とばかりに自殺をしてしまうこともある。

死んでまでやるべき仕事なんてものはない

日本人のメンタリティとして、死者に鞭打つようなことはしないもの。だからこそ「死ねば許される」と感じてしまうのかもしれない。だが、ここからは合理的な話になってくるのだが、死んでまで遂行すべき仕事なんてものはない。いや、あってはいけないのだ。

仮に仕事で運転中に誰かをひき殺してしまった、といったときは犯罪であるため刑罰を受けなくてはなるまい。だが、それ以外の場合においては「上司から怒られる」「取引先からの出入り禁止」「顧客からのクレーム」「左遷」「損害賠償請求」があるぐらいで、まぁ、生きていれば挽回できる類のものである

だが「死んでお詫び」のメンタリティになってしまうと、これらの件のほうが自分の命よりも重いと思ってしまう。だが、自分が死んだら、この世の中はなくなってしまうのである。この世が存在しているということは、自分が存在しているからこそ実感できるわけで、自分を殺すということはこの世界をも消滅させることと同じなのである。

ここは多少ゴーマンにオレ様がこの世界の存在を握る存在じゃ、ヒャッハー!」という天地創造の万能神のようなメンタリティも多少は獲得してはいかがか。自分こそが世界の存在を左右する存在であり、多少の失敗であれば、別に「しょうがない」と思う図太さを持てばいい。

そして、今の時代、リモートワークができることがわかった結果移住もブームになりつつあるだけに、一度とある土地で失敗したとしても、引っ越せばいい。江戸幕府を批判した蘭学者の高野長英が顔を変えて各地を逃げ回ったことはあるが、普通はそこまでしなくてもいい。


世の中は多くの「普通の人」があって回るもの

今回のコロナ禍で何人かの管理職から聞いたのが、「リモートワークは、誰が仕事をちゃんとしていて誰がさぼっているかを炙り出してしまった」という言葉だ。これからは今まで以上に厳しく査定をされてしまうことを意味する。会社(査定する側)や「できる人」にとってはよい時代ともいえるが、「普通の人」にとってはかなり厳しい時代になったのだ

しかし、世の中は多くの「普通の人」があって回るもの。そうした人々が苦しむような状況にしてはいけない。心身に不調をもたらすのは、自分があくまでも「普通の人」であるにもかかわらず「使えない人」「できない人」と思い込んでしまうことが原因である。

不調になったとき、たぶん、会社は辞めてしまったほうがいいだろう。一度「使えないヤツ」のレッテルが貼られてしまった場合、挽回は難しいからだ。閑職に追いやられて飼い殺し状態になってしまう。

仕事人として自信を取り戻すために


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中川淳一郎

(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者。1973年東京都出身。1997年博報堂入社、CC局(現PR戦略局)配属。2001年退社。以後無職、ライター、雑誌編集者などを経て現在はウェブメディア中心の編集者に。ひたすらネット上の珍騒動や事件を毎日テキストファイルに記録する生活を長年つづけている。

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