コンビニおでんから考えるデフレ脱却(中川淳一郎)

2020.1.22

なんらかの主張を政治活動に転換させた途端

2019年2月、人手不足から本部の許可を得ぬまま自主的に時短営業をしてきた東大阪市のコンビニオーナー・Aさんに対して、当初は「もの言うオーナー」などとして応援の声が多数挙げられていた。

だが、同年12月、日刊スポーツの電子版に「顧客対応などを改めなければ12月31日付でフランチャイズ契約を解除すると通告された大阪府東大阪市のセブン-イレブンオーナーAさん(58歳)が29日、大阪市内でセブン本部と話し合いを行った」という記述が出てから同店に対する潮目は変わった感がある。

同記事には、「Aさんは『顧客からのクレームが出ない接客態度を取ること』、自らの『Twitterアカウントの削除』などの回答書を持参した」との記述もあった。セブン-イレブン自体も商品の質はさておき、本部と店舗の上下関係が厳し過ぎることからネットでは批判的な目で見られる。だが、元々客からクレームが出るような店であることが報じられたことから、セブン本部も同店舗も「どっちもどっち」的な論調に。むしろAさんが契約を守っていないだけだろ?的な展開になっていった。

この件は5ちゃんねるでも取り上げられ、オーナーが「しんぶん赤旗」に登場していたことが明かされ「やっぱりそっち系か」とも書かれた。同紙の「ここがいいネ!共産党」という欄でもAさんが選挙の街頭演説で共産党候補者(たつみコータロー前参議院議員)を絶賛し、たつみ氏に「清き一票をお願いします」と呼びかけていたことも書かれた。

さらには、同店でかつて働いていたと主張する人物が、オーナーからひどい目に遭わされたとTwitterで告発する事態にも。真偽については各人判断いただきたいが、Twitterまとめサイトの「時短営業を続け契約解除された東大阪市のセブンで働いていたという人の証言ツイート」に詳しく出ている。

このツイートに連なるかたちで「家近所やけど、これ全部ホンとの話。くそオーナーで有名」というコメントも書かれ、同まとめのコメント欄には「すっかり風向き変わるもんだなあ」という意見も。

デフレ脱却の鍵、ネットの「風」

この一連の流れを見ると「コンビニやファミレスの時短営業には賛成だし、横暴な本部は許せない」という流れは間違いなく存在する。そしてこれが「消費者があまりにも利便性を追求してきたせいだ」という反省にもつながってくる。

そこから、「良いサービスにはそれなりの対価を払わなければいけない」という流れに繋がらぬ限りデフレ脱却、賃金上昇は見込めない。だからこの流れは加速していったほうがいい。

とはいっても、東大阪のコンビニの件を見ると、なんらかの主張を政治活動に転換させると途端にうさん臭く思えてしまうというネットの「風」が存在することも可視化されたといえよう。

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中川淳一郎

(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者。1973年東京都出身。1997年博報堂入社、CC局(現PR戦略局)配属。2001年退社。以後無職、ライター、雑誌編集者などを経て現在はウェブメディア中心の編集者に。ひたすらネット上の珍騒動や事件を毎日テキストファイルに記録する生活を長年つづけている。

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