プロレスやアイドルのように虚構と現実の狭間で楽しむ娯楽
しかし、やはり今回のランキングの上位を占めたのが、生身の人間よりもVTuberのほうが多いというのは、おもしろい事実です。彼らは結局のところゲーム配信したりしてて、生身の配信者がやってることとそんなに変わりないとも言えます。なのに、人々はVTuberのほうにお金を払っているということになる。なぜでしょうか。
とか言うと、もしかすると「存在しないアイドル(みたいなもん)にカネを払ってるってことだろ? やはりオタクはキモい」みたいなことを言う人がいるかもしれません。まあ、今どきそんなバカみたいな批判をする人はいないかもしれませんけど、もしそういう考え方をする人がいるなら、もうちょい深く考えてみてもいいんじゃないの、と僕は思います。
なぜなら、むしろ、生身の人間じゃないからこそ、「作られたコンテンツ」として、視聴者はそのデキに対して、積極的にお金を払う気持ちになれるのではないか、と僕は思うからです。
というのも、VTuberの視聴者だって、そのキャラクターがガチリアルに存在していると思って狂喜してカネを払ってるわけじゃありません。ちゃんと「中の人」がいることをわかりながら、そういうコンテンツに積極的にノッて、キャラを楽しんでいるわけです。
あれですよね、マンガ『ジャイアント台風』に描いてあることを全部本気にするわけじゃないけど、でもジャイアント馬場が強いということは認めようとする姿勢みたいなもんですよ。

つまりVTuberの視聴者も、やっぱり、(いわゆる)プロレスとか、(いわゆる)アイドルみたく、虚構と現実の狭間で娯楽を提供してくれるのを楽しんでいるわけです。同じゲーム配信でも、その配信をやってくれる人がどんなキャラ性を見せてくれるかも含めて楽しんでいると言ってもいい。
VTuberは意外とオーソドックスな存在
ちなみに今回のランキングに登場しているVTuberたちは、VTuberの大手事務所ホロライブやら、同様にVTuber事業で知られるいちから株式会社に所属している人たちばかりです。生身の芸能人と同じように、VTuberにも芸能事務所みたいなもんがあって、経済活動しているということです。
きょうびの芸能界だって注意深くファンに与えるイメージをコントロールしてキャラ勝負しているわけですから、やっていることは近いのではないかな、と思います。まあ、双方のファンは、あんなのと同じにすんじゃねえよと思うかもしれませんけど。しかし表面的にはともかく、構造的には一緒ですよね。
ライブ配信者について注目しておきたい事実としては、彼らは(VTuberに限らず)、YouTubeのチャンネル登録者数自体は、動画をアップロードする通常の人気YouTuberに比べてそんなに多くありません。たとえば今年1月末に始まった江頭2:50氏のチャンネル登録者数は216万人ですけど、桐生ココ氏は58万人ですからね(2020年8月末現在)。
今後、ライバー勢がもっと支持層を拡大するかどうかは、わかりません。だけど、虚構と現実のあわいにあるものをおもしろがるコンテンツとして、VTuberが意外とオーソドックスな存在であり、表面的に「2次元」を採用したモノが増えるかどうかはともかく、ネットを活用したライブエンタテインメントは、基本的にそういう構造を持つものが増えていくんじゃないでしょうか。
しかしまあ、プロレスやアイドルの例を挙げましたが、過去の例を見ると、そこで虚構と現実の垣根が不用意に壊されてしまったりすると、ものすごい禍根を残したり、深刻な問題を招いたりします。すでにVTuber界隈でもそういうギスギスは生まれていますが、そういうエンタメがやりたい運営サイドには、エンタメなんですから、視聴者を楽しませるだけの、じゅうぶんな慎重さが求められるところです。
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