「写真リツイートは権利侵害」判決 裁判所は時代に取り残されていないか(中川淳一郎)

2020.7.29

国内月間利用者数4500万人(2017年)を超えるツイッターにおいて、写真のリツイートも著作者の権利の侵害に当たるという判決が、7月21日最高裁で出された。この判決に対して、有識者などから「利用者の意識が萎縮させられる」など、さまざまな意見が出ている。

ネットニュース編集者の中川淳一郎は、「一般ユーザーのリツイートにまで責任を負わせる判決には恐ろしさを感じる。裁判官はツイッターの仕組みを正しく理解しているのか」と警鐘を鳴らす。


思い出したのは「リツイートは名誉毀損」訴訟

7月21日、毎日新聞の電子版に「写真の無断リツイートは著作者の権利侵害 最高裁判決」という記事が登場した。内容は、北海道の写真家男性が自身のサイトに掲載したスズランの花の写真を無断転載ツイート。それをさらに別の複数人物がリツイートしたところ、ツイートした人物とリツイートした人物両方が権利侵害をしたことに当たると認められ、ツイッター社にこれら人物のメールアドレス開示をするよう言い渡される結果となった。

リツイートをめぐる裁判としては、元大阪府知事・橋下徹氏に関するツイートをジャーナリスト・岩上安身氏がリツイートし、岩上氏が訴えられた件が記憶に新しい。元ツイートの内容は、橋下氏が府知事時代、職員を自殺に追い込んだとするもの。橋下氏はこのような事実はないと否定した。岩上氏は特にコメントもつけずリツイートし、その後削除している。この件では大阪地裁の橋下氏勝訴の一審判決を大阪高裁の二審も支持し、33万円の支払いを命じられた岩上氏の控訴を棄却した。

身元が明らかな岩上氏だからこそ訴えられた面はあるが、「リツイートは名誉棄損か?」という論点を与えたネット時代の新しい裁判だったといえよう。これには「スラップ訴訟」や「おかしな判決」といった批判はあったものの、「一番影響力が強そうなリツイートしたヤツを訴えておけば、オレに対する事実無根の誹謗中傷を今後リツイートしたらこうなるからな」という橋下氏の自衛策であり警告とも感じられる。さらには、「リツイートは慎重に。特に社会的立場がある人は」という教訓にもなったかもしれない。

裁判官はSNSのしくみを理解しているのか

そして今回の写真のリツイート問題についてである。私は法律の専門家でもなんでもないため、最高裁の判断には疑義を呈する資格はないが、正直「参ったなこりゃ」という感想を持った。

最初に写真家のサイトからスズランの写真を無断転載してツイートした人物は権利侵害で訴えられても仕方ない。写真を一旦自分のPCなりスマホに保存し、写真家の許可を取ることなくネットに公開するのは単なるパクリである。だが、そのツイートをなんの気なしにリツイートした人物まで権利侵害をしたというのはツイッター社としても納得できなかったのでは。

リツイートした人物はこの写真が権利侵害をされたものだと知らなかった可能性がある。しかも、毎日新聞の記述では「氏名不詳の2人がそれぞれ写真を無断でツイートし、さらに別の3人がリツイートした」とある。

このツイート数とリツイート数でなんらかの社会的影響があったとも考えにくく、私自身は裁判官がネットの仕組みを詳しく把握しているのか? とそちらの方面が心配になってしまった。もしもこのスズランの花が万単位のリツイートをされたのであれば、ツイート主のフォロワーが増えたり、バズってる状況に乗じてなんらかの宣伝をし儲けを得られたかもしれない。だが、たかが3人しかリツイートをしていないのだ。

橋下氏の件については明確な名誉棄損であり、多数のフォロワーを持つ岩上氏がリツイートしたため、単なるリツイートではあっても、橋下氏は反応した。だが、写真の件は最初のツイートをした人物だけの開示請求でよかったのでは、とも思えてしまうのである。

かつてネットの誹謗中傷に対して警察に被害を訴えても「別に実害ないんでしょ?」や「たかが便所の落書きでしょ?」と取り合ってもらえない時代があった。
あのときは警察組織にネットに対するリテラシーがあまりにもなさ過ぎたわけで、今はサイバーポリス的な部署もあるため改善はされているが裁判所が果たして時代に追いついているのかが不可解である。

今回の判決が社会にもたらす悪影響


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中川淳一郎

(なかがわ・じゅんいちろう)ネットニュース編集者。1973年東京都出身。1997年博報堂入社、CC局(現PR戦略局)配属。2001年退社。以後無職、ライター、雑誌編集者などを経て現在はウェブメディア中心の編集者に。ひたすらネット上の珍騒動や事件を毎日テキストファイルに記録する生活を長年つづけている。

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