UUUM鎌田和樹 年始の「新宿駅南口事案」から見る、YouTuberと社会問題の関係性

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2020.1.17

UUUM鎌田和樹

構成=田中一成 編集=鈴木梢


HIKAKINやはじめしゃちょー、水溜りボンドといった多くの人気YouTuberを擁するだけでなく、あらゆるエンタテインメントを世に送り出しているUUUM株式会社。その代表を務めるのは、HIKAKINとの出会いをきっかけに同社を設立した鎌田和樹氏だ。鎌田氏の「クイックジャーナル 〜カルチャーからニュースを読む〜」初回のテーマは、インターネットカルチャーやYouTuberと社会問題の関係性について。

インターネットは誰かを傷つけるための媒介ではない

1月6日、多くの人にとって仕事始めの日、Twitterのトレンド上位だったのが「首吊り自殺」だった。JR新宿駅南口の歩行者用の陸橋で男性が首を吊っていたのだ。男性はその後搬送されたが、死亡が確認された。

Twitterのタイムラインでは、問題の本質から遠く離れたやり取りが拡散された。現場を写真撮影して投稿している人もいれば「(首を吊ってる人の)服装が陰キャww」と笑う人もいる。「写真を撮るなんて人として終わってる」と返せば「撮影がダメな理由を論理的に説明してくれ」というツイートが広がる。

僕は初めてインターネットを目の当たりにしたとき、便利さ、その広大な可能性に心を躍らせた。けれども今は、匿名で悪口を言うコミュニケーションツールという側面が拡大しているように思う。人の死をコンテンツにするというのも、匿名性の悪い部分が表出した結果だろう。アカウントを複数作ることも簡単だから、無責任な悪意がいともやたすく飛び交う。

インターネットでは「白」だと主張すれば「黒」も生まれるし、「グレー」な意見も生まれる。そして「何も言わない」人が一番損をしない世界になっているのではないか。みな、本当のインターネットの使い方をわからなくなっているように思う。もちろん答えはないけれど、ひとつ言えることは、インターネットは誰かを傷つけるための媒介ではないということ。

2ちゃんねるの開設者・ひろゆきさんがテストしている新しいコミュニティ「ぺんぎん村」に注目している。コンセプトは「暇なときに一緒にテレビを見て感想を言ったり、漫画を見て感想を言い合ったり(略)近所の人とやるようなことを、ネット越しにやろうとする村」。禁止事項がいくつかあり、最も興味深いのは「相手の人格を否定すること」。

日本では社会的な問題が起こると感情に流され、本質的な議論から遠ざかる傾向がある。一方アメリカでは、YouTubeで3億回再生を突破しているラッパー・Logicの曲『1-800-273-8255』が若者を自殺から救ったり、社会現象を巻き起こしているNetflix『13の理由』が自殺やセクシャリティに対する問題提起になっていたり、コンテンツが社会問題にアプローチすることが増えている。日本でも同様の流れは起きうるのだろうか。僕はすぐには起きないと思う。日本とアメリカではコンテンツを取り巻く土壌が異なるからだ。