「素晴らしいカルチャーを守れ」のその先へ(九龍ジョー)

2020.3.26
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文=九龍ジョー 編集=森田真規


話題の本を編集者として手がけつつ、ライターとしても音楽、演劇、映画、プロレスなど幅広いジャンルのポップカルチャーをフォローし、さらに近年は伝統芸能に関する連載を数多く抱えているカルチャー界の目利き、九龍ジョー。

新型コロナウイルスの感染が日本国内においても拡大していることがわかってきた今、このままいけばカルチャーやエンタテインメント産業の従事者は失業し、容易に取り戻すことのできない損害がもたらされてしまうかもしれない。そこで私たちが今、すべきこととは――。


先行き不明なウイルスとの闘い

ますます先の見えない新型コロナウイルスのパンデミック。ただ、3月19日に政府の専門家会議による状況分析と提言が出たことで、その特異性と対策について、一応の共通見解のようなものが見えてきたと思う。

また、25日にはその状況分析をなぞるかたちで小池百合子都知事が重大局面宣言を出した。現在は、首都圏に「オーバーシュート(爆発的患者急増)」の危険が迫っていることも周知されつつある。

専門家会議の分析を少しだけおさらいする。

どこかで感染に気付かない人たちによるクラスター(患者集団)が断続的に発生し、その大規模化や連鎖が生じ、オーバーシュートが始まっていたとしても、事前にはその兆候を察知できず、気付いたときには制御できなくなってしまうというのが、この感染症対策の難しさです。
もしオーバーシュートが起きると、欧州でも見られるように、その地域では医療提供体制が崩壊状態に陥り、この感染症のみならず、通常であれば救済できる生命を救済できなくなるという事態に至りかねません。

「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(3月19日)

つまり、自覚症状がなかったり、軽い症状に留まっている感染者が二次感染を起こし、それがオーバーシュートにつながる可能性がある、と。「クラスターの感染源(リンク)がわからない感染者が増加していくと、いつか、どこかで爆発的な感染拡大(オーバーシュート)が生じ、ひいては重症者の増加を起こしかねない」というのだ。

重要なのは、最も感染拡大のリスクを高める環境での行動をじゅうぶん抑制すること、とある。では、その「最も感染拡大のリスクを高める環境」とはなんなのか?

(1)換気の悪い密閉空間
(2)人が密集している
(3)近距離での会話や発声が行われる

この「3つの条件が同時に重なった場」のことだという。実際、この提言の時点でクラスターの発生が報告されているのは、「屋形船、スポーツジム、ライブハウス、展示商談等」である。

当初より危険が指摘されていたほどには、満員電車からの二次感染が報告されていないのは、(3)にあてはまらないからだろうか。であれば、演劇などは、上演中に客席での会話は基本的に行われないわけで、かつ、じゅうぶんに換気がされるような劇場であるなら、安全と言えるのだろうか。いや、そうはいっても、上演前後や幕間にはロビーで歓談がなされることもあるだろうし、芝居が跳ねたあとに「どこかで会食でも」という流れもじゅうぶんにあり得る。

結局のところ、すべて確率論になってしまうことは避けられないし、感染者の行動にも左右される。劇場サイドがどんなに万全の対策を取ったとしても、クラスターが発生してしまうことはあるだろうし、その逆もまたしかりだ。

提言には、北海道での感染抑え込みの実績を受けた上で、このようなくだりもある。

ただし、緊急事態宣言、大規模イベントの自粛要請等のうち、どのような対策やどのような行動変容が最も効果を上げたかについては定かではありません。また、決してこの先について楽観視できる状況になったわけではなく、最近、患者数が増加傾向にある札幌などを含め、引き続き、これまで集団感染が確認された場に共通する3つの条件を避けるための取組を行っていく必要があります。

「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」(3月19日)

ましてや、いまだ未知の多いウイルスだ。この先、突然変異によって性質が変わる可能性だってある。

私たちの労働環境と生活基盤を守れ


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九龍ジョー

ライター、編集者ほか。編集を手がけた書籍・雑誌・メディア多数。著書に『伝統芸能の革命児たち』(文藝春秋)、『メモリースティック』(DU BOOKS)、『遊びつかれた朝に』(磯部涼と共著、ele-king books)など。『Didion』編集発行人。Errand Press相談役。

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