加害者に許可を取り、いじめ被害を“ほぼ実名”で演劇化――「ゆうめい」池田亮


1日でいいから全員本人役の『弟兄』をやりたい

macに表示させた台本を確認する池田 亮

いじめっ子たちは電話口で戸惑っていた。過去のいじめについてはいいい君と似た感じでうやむやにしたが、上演の許可に関しては、「あくまでエンターテインメント作品として考えている」「小劇場で規模は大きくない」と説明すると、なし崩し的にOKを出してくれた。

「目的は復讐とかではなくて、こうして過去の体験を演劇にした人もいるよという事例になりたかったんです。当時のいじめニュースばかりを見ていた自分がこれを見たら、ちょっとは気分が軽くなるんじゃないかと思ったのが演劇化の原動力でした。電話したときに元いじめっ子から『お前って陰湿なやつだな』って言われたんですが、確かにこんなことするなんて自分もやばいやつかもって、そのときは思いました(笑)」

いじめ経験から15年が経ち、『弟兄』も3度目の上演を迎えた現在、池田さんは意外にも「彼らと仲良くなれたらおもしろい」と考えているという。これは加害者たちとのやりとりや体験の作品化、そしてそれを社会に問うという一連のプロセスを経たことによるものかもしれない。

「今でも生々しい夢を見て当時の感覚がよみがえることもあるので、完全に脱却したわけではないのですが、当時の自分をずいぶん客観的に見られるようにはなりました。いじめっ子といじめられっ子が仲良くなれたらけっこうすごいですよね。夢想しているのは、1日だけでいいから『弟兄』に僕も含め全員本人役で出演し、アフタートークでどんな気持ちだったかを語り合ってみたいなって。今は被害者である僕からの視点だけで描かれているので、それも偏っててよくないかなと思ってはいるんです。もし全員に出てもらえたら、かなり見応えある芝居になると思うんですよね」

コミュニケーションを重視するゆうめいの稽古場

今回取り上げた『弟兄』のほか、2015年にゆうめいの初公演となったふたり芝居『俺』、そして実の父親が俳優として出演する池田家の三代記『あか』と、ゆうめい過去の3作品を一挙に再演する連続公演「ゆうめいの座標軸」が3月4日(水)から3月16日(月)までこまばアゴラ劇場にて開催。

新型コロナウイルスで上演中止が相次ぐ演劇界ですが、開催に関する考え方をとても真摯なステートメント(『ゆうめいの座標軸』こまばアゴラ劇場公演について:2020年2月28日20時 発表)にまとめ、万全の対策をして本番に臨むことを宣言しているゆうめいの公演に、みなさんもぜひ足を運んでみてください。


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