神保町よしもと漫才劇場に所属するお笑い芸人に自身の“出囃子”について聞く連載「大舞台で響かせたい」。今回はオフローズが登場。
舞台衣装は3人そろって白シャツと黒のパンツ。そんなまだまだ謎が多い彼らの個性をそれぞれの音楽の趣味から紐解いた。
オフローズ
カンノコレクション(1995年4月2日生まれ、大阪府出身)、宮崎駿介(みやざき・しゅんすけ/1992年12月8日生まれ、大阪府出身)、明賀愛貴(みょうが・あいき/1996年9月8日生まれ、大阪府出身)によるトリオ。NSC大阪校38期生出身。『キングオブコント2020』で準決勝、『M-1グランプリ2022』では準々決勝に進出した。
オフローズの出囃子 八神純子「みずいろの雨」
──なぜこの曲にされたんですか。
カンノコレクション(以下、カンノ) 芸人はJ-POPとか洋楽を出囃子に使ってる人が多いんですけど、僕らは歌謡曲がいいなと思ったので、中でも耳に残るこの曲にしました。僕たちはコントをやることが多いので、だいたい板つきで始まるんですよ。だから、どんな雰囲気の曲からネタが始まるのがかっこいいかも想像しながら、僕が決めさせていただきました。
──おふたりはこの曲にしたいと聞いたとき、どんな印象を受けましたか。
宮崎駿介(以下、宮崎) コント始まる前にこの曲がかかるといい雰囲気になるなと思ったので、これでいいかなと。最初に曲名を言ってるのもなんかいいですし。
明賀愛貴(以下、明賀) かっこつけてない感じもいいよねってなりました。
宮崎 芸人の中では、どれだけ出囃子でかっこつけられるかっていう戦いもあるんですよ。だけどストレートにかっこいい曲で勝負するのって意外と難しくて。
明賀 ラップ系とかゴリゴリの曲は僕らの雰囲気に合ってないしな。
宮崎 だからコント師だとムーディな曲を使いがちなんですけど、それもそれでいい感じのラインを選ぶのが難しくて。
──確かに歌謡曲には歌謡曲にしかないかっこよさがありますね。カンノさんはもともと歌謡曲をよく聴いていたんですか?
カンノ そうですね、今も好きです。昔はよく、おじいちゃんおばあちゃんとお出かけしてたんですけど、おじいちゃんが歌謡曲好きだったので、車でよくかけていて。あとはヒップホップとかも聞きます。
三者三様の趣味
──カンノさんは以前、B-BOY系のファッションをされていたというのもYouTubeで拝見しました。
カンノ カニエ・ウェストに憧れてるんで。カニエって大学を中退したのに、ほかと被らない自分のスタイルの音楽を作っててカッコイイじゃないですか。僕も大学中退してるんですけど、中退してもこんな人間になれるんだって思って。中退するとき、僕はお笑い界でカニエみたいな存在になろうと思って「The College Dropout」を聴いてました。いつかナイキとコラボして“カンノコレクション”っていうスニーカーも出したいですね。
──確かにスニーカーのシリーズでありそうな名前ですね(笑)。宮崎さんはどんな音楽を聴かれるんですか?
宮崎 僕は親や兄貴の影響で、サザン(オールスターズ)とかケツメイシとかをよく聴きますね。
カンノ 彼はサーフィンも嗜むんですよ。
宮崎 実は……(笑)。親父がサーファーで。
──意外な趣味! おふたりは知ってましたか?
明賀 聞いてはいたんですけど、まだ噓じゃないかと思ってます(笑)。
カンノ 僕も信じてないんですけど、揉めたときとかサーファーマウントを感じますね。
宮崎 結局、ふたりは波乗れないんで。3人の中で唯一波に乗れる男なんで、そこはマウント取ってます。
カンノ ぐうの音も出ないですね。
明賀 でも“唯一波に乗れる男”って字で書かれるのいかついな(笑)。
宮崎 恥ずいかも(笑)。
──“唯一波に乗れる男”かっこいいですけどね(笑)。明賀さんは?
明賀 僕はこのジャンルが好きとかあまりなくて、尾崎豊とかウルフルズとか昔の曲もめっちゃ好きだし、最近だとBiSHとか新しい学校のリーダーズとかが好きでライブに行ったりもしてます。あとは、ラジオから流れてきた曲を調べてプレイリストに入れたり。
宮崎 ラジオ聴くの?
明賀 実はね。コロナの時期に聴き始めたんですよ。『(おぎやはぎの)メガネびいき』(TBSラジオ)とか『オードリーのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)とか。最近はさらば(青春の光)さんとか、空気階段さんの番組も聴いてます。
カンノ 知らなかったわ~。
上京後には3人でルームシェア
──オフローズさんといえばコントのイメージが強いですが、最初からコントがやりたかったんですか。
明賀 僕はそうですね。『(爆笑)レッドシアター』(フジテレビ)が好きで、小学生のときから、はんにゃさんとかしずるさんとかのネタを友達と一緒にクラスでやったりしてました。だから、逆に漫才はあんまり観てこなかったですね。『M-1グランプリ』も芸人になるまで、観てなかったです。カンノもコントじゃない?
カンノ いや、僕はシンプルに漫才でツッコミがやりたくてNSC入りました。だけど、いざ入ってみたら漫才以外にもいろいろあるなって思って。気づいたら全然、漫才師のツッコミじゃない場所にいました。
宮崎 カンノはシンプルツッコミのタイプじゃないもんな。僕は行く当てがなくてNSCに入ったので、とりあえず一回、全部やってみようと。養成所時代、最初のコンビで漫才やって、次に組んだコンビでリズムネタをやったので、次はまあコントかなと。
明賀 宮崎のふたり目の相方はマエケン(前田健太)にめっちゃ似てるやつだったんですけど、そいつと『マエケンと大根』ってネタやってました(笑)。
宮崎 僕が大根の着ぐるみを着てるんですけど、最後に「でも、大根は嫌い~♪」って言われて大根が落ち込むっていうリズムネタをやってました。
明賀 そんな感じだったので、今みたいに構成を組むコントを書くとはまったく思ってなくて。
宮崎 あれも楽しかったですけどね(笑)。
──NSC卒業後はすぐに上京して、しばらく3人でルームシェアをされていたんですよね。
宮崎 そうです。だけど、3人だけの期間はほとんどなくて、同期が居候してたり、常に誰かいる感じでした。
明賀 しかも一応3部屋あったので、基本は各々部屋にいる感じで。ふとしたタイミングで全員リビングに集まってゲームやトランプしたりすることはあったんですけど。
カンノ 僕は、けっこうみんなと遊びたかったのでリビングで待ってたんですけど、ふたりは全然出てこなくて。
宮崎 カンノは感情の浮き沈みが激しいんですよ。最初は絡んでたんですけど、テンションが低いときに絡むとすごいぞんざいに扱われるので、徐々に絡む時間は減っていきました。
カンノ しょうがないですね。
──ルームシェアを解消してから、関係性に変化はありましたか。
カンノ そんなに変わってないと思います。なんやったら僕はもう少し継続したかったんですけどね。ちょっとイラついたことがあったときに、僕が「そろそろ更新日だし、ひとりで住むか~」って言っちゃったんです。でも本気じゃなかったんで、後日「もうちょっと継続しようか」って言ったら、明賀がすでに新しいところ契約してて。
明賀 本気だと思ったんですよ。だから「契約更新どうする?」みたいに言ってきたときは焦りましたね。もう家、決まってたんで。宮崎は何も知らなかったみたいなんですけど。
宮崎 そうなんですよ。このやりとりを聞いてなかったんで、ふたりの新居が決まってからギリギリで探し始めました。しかも、契約の解除の手続きとか僕がやらなきゃだったので、よけい大変でした。
カンノ でも結果的に解消してよかったでしょ? やっぱりそれぞれの時間があったほうが気が休まるし。
宮崎 よかったはよかったんですけど……。カンノは遅刻体質なんで心配事は増えました。
カンノ 「ひとり暮らしするなら遅刻だけはするなよ」って決められました。でも、それは守れてるので、よかったかなと。
宮崎 守れてないですけどね。
明賀 ゴリゴリ遅刻してます。リハに来ないとか多々あります。
カンノ ……はい……。でも、とんでもない遅刻はかましてません。
──いつかとんでもない遅刻もありそうで、怖いですね……(笑)。そうなったとき、大変なのはおふたりですもんね。
宮崎 そうなんですけど、カンノの遅刻とかの対応は基本、僕がしてて明賀はノータッチなんですよ! 自分は時間どおり来てるからいいでしょ、みたいなスタンスで。
明賀 いや、カンノがしっかり起きたらいいやん(笑)。
カンノ 逆に宮崎がめちゃくちゃ遅れちゃったときは僕がめちゃくちゃ連絡しましたからね! 明賀はマジでなんもしてくれなかった。チームなんやからさ~。
明賀 なんで俺が責められてんの(笑)。
もう、若手だからとは言ってられない
──『キングオブコント』のエントリーも始まり、6月13日には単独ライブを控えていますが、今年はいかがでしょうか。
宮崎 そうですね、まずは今回の単独ライブでいい新ネタができれば、という感じです。
明賀 僕らは毎年、ある程度このネタでいこうというのが決まったら舞台で叩くんですけど、やるうちにどんどん飽きちゃって、予選の前日とか当日に内容をめっちゃ変えるとかもよくあるんで(笑)。
カンノ “魔改造”って呼んでます(笑)。
宮崎 ネタ自体は何回もやったことあるけど、途中のくだりとかはぶっつけ本番とか多いです。
──でも、よくあるってことはいい方向に転ぶことが多いんですよね?
カンノ まあ、いい方向に転んでることのほうが多いと思います。
宮崎 去年の『M-1』とかもそんな感じだったんですけど、結果的に初めて準々決勝まで行けました。
──前日に変えてわからなくなることはないんですか?
宮崎 ネタ中にとかはないんですけど、話し合ってる段階で明賀がついてこれてないときとかはありました。ピザのネタのときとか。
明賀 そうだったわ。途中で設定が飛ぶネタだったんですけど、「これ受け入れられるか?」って思ってる間に、どんどん話が進んでて。そのときはまあ、やるしかないかと思って言われるがままやりました。
宮崎 しかも、そのときはめっちゃ小道具を使うネタに変わったんで、一番乗り気じゃないのに、明賀が小道具担当なんで大半を作るっていう。
明賀 それも引っかかった理由でした(笑)。小道具を作るのがだるくて。
宮崎 あと、たまにふたりがネタについて相談してることもあるんですけど、そのときはなんにも変わってないんですよね。
カンノ いや~演技って細かいんで。変化は小さいかもしれないけど、ウケ量は変わってます。
──ふたりの中ではしっかり改善されてたんですね。
明賀 めっちゃ変わってます。
宮崎 僕も気づかないレベルで?
明賀 確実にウケ量は変わってました。
宮崎 まあ、とにかく今年こそは決勝に行かないとなって感じです。若手って言ってますけど、僕らも8年目なんで。普通に決勝に行っておかしくない芸歴なので、確実に決勝には行きたいです。
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