「どんなピンチも諦めない」ぼる塾が「乙女のポリシー」を出囃子に選んだ理由【大舞台で響かせたい】

ぼる塾

文・編集=梅山織愛


神保町よしもと漫才劇場に所属するお笑い芸人に自身の“出囃子”について聞く連載「大舞台で響かせたい」。今回はぼる塾が登場。

まわりからも「ぼる塾にぴったり」と言われるという出囃子。その選曲理由を聞くと、4人がグループとして活動する上でそれぞれが大切にしている“ポリシー”が明らかになった。

ぼる塾
酒寄希望(さかより・のぞみ)と田辺智加(たなべ・ちか)による「猫塾」ときりやはるかとあんりによる「しんぼる」が2019年12月より合流として活動を開始。酒寄の育休中は主に3人で劇場やメディアへ出演していたが、2022年11月より酒寄が神保町よしもと漫才劇場の出番に復帰。

ぼる塾
ぼる塾(左・きりやはるか、中・あんり、右・田辺智加)

ぼる塾の出囃子 石田よう子「乙女のポリシー」

──ぼる塾になる前は、それぞれ何を出囃子にされていたんですか。

田辺智加(以下、田辺) 猫塾(田辺と酒寄によるコンビ)は相対性理論さんの「(恋は)百年戦争」です。酒寄(希望)さんが好きな曲なんですけど、「猫塾っぽいね」っていう雰囲気で決めました。

あんり しんぼる(あんりとはるかのコンビ)は幼なじみ同士のコンビだったので地元感を出したくて、『こち亀』(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)の「中川に浮かぶ~」(堂島孝平「」葛飾ラプソディー)ってやつにしてました。『こち亀』でも早いやつじゃなくて、ゆっくりなほうです。

──今の出囃子はどちらかが使っていたものではないんですね。なぜ、この曲にされたんですか。

あんり 田辺さんが決めたんじゃないっけ?

きりやはるか(以下、はるか) いや、先輩に相談したんだよ。オズワルドの伊藤(俊介)さんと空気階段の(水川)かたまりさんと『ネタパレ』(フジテレビ)の収録終わりに一緒に帰ってて、「私たち、まだ出囃子がないんですけど何がいいですかね」って相談したら、伊藤さんが「『(美少女戦士)セーラームーン』のエンディングの『乙女のポリシー』がいいんじゃない」って。それで決めたんだよ。私たちにぴったりだよね。

田辺あんり そうだ! 思い出した!

──『セーラームーン』は皆さん、好きだったんですか。

田辺 私がすごく好きです。

あんり 私とはるちゃんは年代がちょっと下なので、ド世代だったのは『おジャ魔女どれみ』になるんです。『セーラームーン』はちょっとお姉さんたちが好きだったって感じなので、「ムーンライト伝説」は知ってたんですけど、この曲は知らなくて。でも聴いたときに、私はこの曲をバックに登場する田辺さんの画がすぐに浮かびました。劇場にもよるんですけど、ぼる塾の場合は田辺さんから出ていくことが多いんです。だから田辺さんにぴったりの曲に合わせて登場するのってすごい素敵だなと。

はるか 歌詞とか気にしてなかったんですけど、この曲で初めて入場したときに「どんなピンチのときも絶対あきらめない~」って流れ始めて。そこで初めて「いい歌詞だな」と思いました。

田辺 友達からも「出囃子すごくいいね。ぼる塾に合ってる」って褒めてもらいますし、エゴサしてもいい意見ばかりなのでうれしいですね。

はるちゃん泣かせたこともありました

──出囃子もですが、みなさんで何かを決めるときはスムーズに決まるんですか。

あんり みんなで譲り合ってますね。ネタを決めるときは、はるちゃんが「今日、何やる?」って言ってくれたのに対して、私が「何やろうか。田辺さんに聞いてみようか」って言って。それで田辺さんに聞いても「何やろうか」ってなるんですけど、一応全員に意見は聞きます。結局、最後は私が決めることが多いのかな。

──ぶつかることはあまりないですか?

あんり いや、ありますね。寄席の前に、はるちゃん泣かせたこともありましたし……。

はるか 泣いたことあったっけ?

あんり ぼる塾を結成してすぐのころだったんですけど、私とはるちゃんがその日、何のネタをやるかでケンカになったんです。お互いちゃんと言い分があったのでどっちも譲らずにもめちゃって、最終的に私が「話のわかんねえやつだな」みたいなことを言ったら、はるちゃんが泣いちゃったんです。田辺さんはただ突っ立って見てました。

田辺 関係ないやつが「まあまあ」って言ってもね~。そういうときは何も口を出さないです。

あんり 関係なくはないけどね(笑)。でも、そういうときって私もはるちゃんも田辺さんは私の味方だろうって心の中でお互い思ってるから、田辺さんが何も言わずにいてくれることで関係性が保たれてるのかもしれないです。

田辺 どっちも言いたいことは間違ってないし、それぞれの思いがあってぶつかってるので、そういうときは私は何も言わずふたりで解決してもらえたらと思ってます。

──おふたりは、どう仲直りするんですか。

あんり はるちゃんが忘れてくれますね。

はるか 基本、寝たら忘れちゃうので。寝る前までモヤモヤしてても、次の日会えば普通に「おはよう」って挨拶します。

あんり 私はしばらく根に持つタイプなので、カラオケとかで発散します。上司へのイライラを歌った阿部真央さんの「サラリーマンの唄」って曲があるんですけど、歌詞の上司の部分を「きりやはるか」に替えて大声で歌ってます。

はるか 私のこと大好きじゃん!

あんり ……。


4人いてこそのぼる塾

──酒寄さんも今後は神保町劇場の出番に出演していくそうですが、ぼる塾の関係性に変化はありましたか。

あんり 実は最近、3人でいる時間が長くなるにつれて、一緒にいることに少し疲れてきていた部分があったんです。仕事中もずっと一緒なんだから、楽屋まで一緒じゃなくていいじゃんという感じで。でも、酒寄さんが劇場に復帰した日は、自然とみんなで集まってしゃべってたんです。その感じが心地よくて、ぼる塾ってこうだったよなっていうのを思い出しました。

田辺 私も同じように感じて、酒寄さんに伝えました。「やっぱり酒寄さんがいるとみんなの雰囲気が柔らかくなる」って。

あんり 酒寄さんがいるとまとまるんですよね。

──ネタをするときの心境も違いましたか。

はるか やっぱり4人だと楽しいですね、私はその日、楽しかったが勝っちゃって、どこがウケたとかあんまり覚えてないです。4人でネタやってるって状況が幸せでした。自分の隣が酒寄さんになるんですけど、酒寄さんがいるってことの安心感も大きかったです。

田辺 酒寄さんは猫塾のときからずっと自分よりも「田辺さんのおもしろさを伝えたい」って言ってくれるんですけど、私は酒寄さんも絶対的におもしろいって思ってるから、これからはもっと酒寄さんのおもしろさを引き出せていけたらいいなって思ってます。

──一緒に寄席に出た芸人仲間からの反応はいかがでしたか。

あんり みんな袖で観てくれたんですけど、褒めてくれました。その日、かなり緊張していたので「え、みんな観るの?」みたいに思ってたんですけど、何事もなく無事にネタをできたのは袖からみんなが見守ってくれたおかげでもあるのかなと思いました。

田辺 酒寄さんが復帰した日は、猫塾のときからずっと見てくれてた先輩も来てくれたんです。出番が久しぶりなのもそうだけど、先輩にネタを褒めてもらうのはもっと久々だったから酒寄さんは「この感じ、シアターDの劇場思い出す~」って言ってて。いろんな人に支えられて私たちは、というか、人は成り立ってるんだなって改めて思いました。

はるか 深いね~。

あんり (笑)。でも、私たちは特にそうだと思います。それぞれのコンビのときからいろんな先輩にアドバイスをもらってきたので。神保町ではけっこう先輩になってきちゃったから、昔ほどそういうのを言ってもらえなくなってたんですけど、酒寄さんが戻ってきて再スタートを切るということで、またみんながいろいろ言ってくれるようになりました。

──普段、みなさんから神保町の後輩にアドバイスすることもあるんですか?

あんり しなきゃとは思うけど、後輩たちは優秀過ぎて。みんな自分がどうしたらいいかちゃんとわかってるんですよ。

はるか 考えてることのレベルが高いよね。

あんり 私が1、2年目のときなんて、ネタ作りをひとりでしたことなかったんですよ。ネタを書くときは必ず先輩の楽屋行って、ネタを書いてるフリをしながらアドバイスもらって、最終的にはほとんど先輩に書いてもらうみたいなことをやってました(笑)。今はそんな後輩いないです。みんなただ「売れたい!」っていうだけじゃなくて、「売れるためには、こうしてああして。SNSはこんなふうにやって~」みたいに自分たちがやるべきことがわかってるから、私たちが何か言う隙がないです。

はるか 行動力がちゃんとあるよね。

「強くなれるのは30歳を超えてからよ」と言われて

──猫塾さんにとってしんぼるさんは後輩にあたりますが、どんな存在でしたか。

田辺 後輩だけど、私は勝手に友達だと思ってました。

──しんぼるさんから見た猫塾さんは?

あんり 私は猫塾のネタを始めて観たときに、今でも忘れられないくらいの衝撃を受けたので、そこからずっと猫塾信者でした。だから、まさかこんなふうに一緒に活動できる日がくるとは、という感じです。ぼる塾になってからはよりふたりの内面を知る機会も増えたので、人間力の面でも尊敬してます。

はるか 昔、すごい考え込んじゃうときがあったんですけど、私はそのとき田辺さんに救ってもらったんです。「田辺さんみたいな強い女性になりたいです」って言ったら、「あんた、まだ若いから無理よ。強くなれるのは30超えてからよ」って言われて。「じゃあ私が30超えるまで一緒にいてくれますか」って言ったら「30超えなくてもずっと一緒よ」って言ってくれたのが本当にうれしかったです。

酒寄さんとは結成前、あまり話す機会がなかったので、おもしろい人としかしゃべらないんじゃないかみたいなちょっと怖いイメージがあったんですけど、実はすごい優しくて、でもお笑いにはストイックで。尊敬するところがたくさんありました。

あんり あと、田辺さんと酒寄さんの間には絶対的信頼感があるんですよ。酒寄さんに伝えたいことがあるときは直接伝えるより、田辺さんに伝えてもらったほうがうまくいくんです。逆のときも。だから、ぼる塾にとって猫塾の部分はこの先も絶対なくちゃいけないんです。

──ぼる塾になってからもおふたりにとっては尊敬する先輩なんですね。

はるか でもこの前あんり、酒寄さんに「てめぇが(田辺さん)連れてきたんだからどうにかしろよ」みたいに怒ってなかったけ(笑)?

あんり あった(笑)。田辺さんがどうしようもないことしてるのに、横で酒寄さんは気まずそうな顔してるだけだったから「お前のせいだからな」って。

田辺 私はぼる塾結成前からあんりに怒られるの好きだったから、あんりのこと探してまわりをちょろちょろして、変なことしてたよね。

あんり 確かに田辺さんにはぼる塾になる前からキレてたな~。でも、酒寄さんにも怒るようになったのはグループになってからかも。

田辺 酒寄さんもあんりに怒られてるとき、うれしそう。

はるか 見てるほうもめちゃくちゃおもしろかったよ。今後は酒寄さんがあんりに怒られてるっていうのもやっていきたいよね。

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    2022年12月11日(日)17:45開場/18:00開演
    会場:神保町よしもと漫才劇場

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梅山織愛

(うめやま・おりちか)1997年生まれ。珍しい名前ってよく言われます。編集者・ライター。自他共に認めるミーハーなので、いろいろハマりますが、アイドル、お笑いが特に好きです。あと、チョコレートも詳しいです。

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