「自分らしさが見つからない」そう悩む人は多い。では、ステージやテレビやSNSで自身をアピールし、ファンを獲得するアイドルは「自分らしさ」をどのように見つけ、獲得しているのか。
AKB48で活躍する岡田奈々に、グループの今後や、自分らしさに悩む人に対してのヒントを聞いたロングインタビューの最終回(全3回)。
【連載「アイドルとシスターフッド」】
見る人の数だけ存在する「アイドル」のイメージに翻弄され、時にエイジズム、ルッキズムの呪縛にかかりながらも、その言葉の枠に留まらない女性たちの心の内を聞く。
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つらかった経験は、今すべて活かされているから
──自分をさらけ出すようになって仲よくなったメンバーはいますか?
そのあたりから仲よくなったのは、YouTubeも一緒にやっている村山彩希(むらやま・ゆいり)ちゃん。お互いにステージに対する考え方が似ていることもあるし、どんな話でも受け止めてくれたのが大きかったですね。
やっぱり、摂食障害などの話はどうしても理解できないって人もいるので。「食べられるなら元気じゃん」って言われてしまうとつらいし、過度に気を遣わせてしまうこともあるなかで、彩希ちゃんはよき理解者になってくれました。
──どんな経緯を経て、そういった踏み込んだ話をできるようになったのでしょうか。
彩希ちゃんの知り合いにも、精神的に落ち込みやすい性格の人がいるらしくて「似てるから目が離せない」って優しくしてくれたことがきっかけでした。私はたまたま面倒見のいい人に出会えて、支えてもらえて、人との出会いに恵まれてるなって思います。
──話を聞いて、受け入れてくれる人がいることで安定するんですね。
自分の悩みを打ち明けられるようになると、自分もどんどん元気になっていきました。理解してくれる人がいると、すごく精神的にラクですね。
──2017年からはSTU48との兼任、翌年からはキャプテンに就任。今年3月で兼任が終わりましたが、活動10周年を迎える今、後輩も増えて話を聞く側になることも増えたと思います。
STU48では、特にそうでしたね。自分が悩んできたことがたくさんあるからこそ、メンバーたちの話を聞いて、同じ痛みをわかってあげられたのはよかったです。
自分のつらかった経験は、今すべて活かされているので、少しでも後輩の助けになれるなら、よかったなって思います。
自分自身をオープンにして生きていく
──埋もれないためにポジションを見つけたい気持ちや、ほかのメンバーと自分を比べてしまうなどの悩みはグループアイドルにつきものだと思います。現在は選抜総選挙も行われておらず、競い合うことが減った上に、昨年リリースの「根も葉もRumor」は、グループの団結力が発揮された作品でした。この数年の変化に対して、どう感じていますか?
大きく変わりましたよね。とにかく競って順位をつけていて、そのことにも価値はあったと思うけど、今はまったく違います。
──たとえば歌番組でも、「カメラにどれだけ抜かれるか」「どれだけ目線を奪えるか」を強く意識していた人がほとんどだったと思います。現在は、グループ全体のパフォーマンスを高める方向にメンバーの意識が集まっていますね。
確かに、昔は個人戦でしたよね。どれだけ自分が注目されるか、カメラにかわいく映れるかに力を入れてたので。大きく変わったのは、曲を披露する前に円陣を組むようになったことです。今まで、歌番組で円陣はなかったですもん。
「根も葉もRumor」から、みんなで肩を組んで「やるぞ!」って気合いを入れるのが当たり前になりました。
──もちろん個人戦だった時代も、そうなってしまう理由はいくつもあったと思います。グループの人気は安定しているので、その中でどう登っていくかが重要だった。ほかにも、忙しいメンバーが多いので、リハーサルやレッスンの時間は取りづらいなど。とはいえ、その時代にも、短いリハーサルだけで本番は決めるという、とてつもない対応力をみんなが持っていたことなど、すごかった部分もたくさんありますよね。
確かに、みなさん対応力はすごかったですよね。先輩たちは振り入れもめちゃくちゃ早い人が多かったですし。
──その対極にあるのが、何週間もみっちり練習をして臨んだ「根も葉もRumor」でした。“会いに行けるアイドル”というトリッキーな存在から始まったAKB48が、全員のパフォーマンス力を愚直に高めるという王道に回帰している状況は非常に興味深いです。
「根も葉もRumor」が、たくさんの方に聞いてもらえた、見てもらえたことはすごくうれしかった。有名なダンサーさんたちからも反応があったことは特にうれしかったです。みんなが団結している、すごくいい流れを感じます。
──今年はAKB48のチームが再編成され、新たな公演も始まっています。それぞれのチームでもそのよい流れは活かされているのでしょうか。
正直、シングルの選抜メンバーと、そうじゃないメンバーにはまだ温度差があるので、そこは課題ですね。グループの全員が同じ熱量を持つのは難しいと思いますが、みんなとコミュニケーションを取りながら、なんとかしていきたいところです。
──もし、熱量を上げられない後輩にアドバイスするとしたら。西野未姫さんとの対談で過去を振り返った際には、「ふたりとも常に120%だった」と語っていましたが。
私たちはどんなレッスンでも120%でやり過ぎて、逆に「悪目立ちしてるから、やり過ぎなくていい」と言われてましたね(笑)。ただ、力を抑えるのはいつでもできるけど、出し過ぎるのは今しかできないから、元気なうちにやっておこうって思ってました。
──これから選抜を目指す後輩たちも、そのくらいの元気があるといいですよね。
いいですね! 悪目立ちしてもいいから、とにかく一生懸命やってみてほしいです。最近は引っ込み思案な子が多いみたいで、時代が変わったんだなって感じます。昔はもっと「私が私が!」って前のめりな人が多かったので(笑)。今はみんな静かで平和主義。もっとがっついて、バチバチしてもいいんじゃないかな。
──チームKの小林蘭さんは、「根も葉もRumor」で選抜に入れなかった際に、踊ってみた動画をSNSにアップして、「私のほうが踊れるんだ」と言わんばかりのアピールをして話題になりました。そのくらいの元気があるほうがいいですかね?
ああいうの、いいですよね。ガッツがあって好きです。いつもメラメラして、選抜に入りたい、テレビ番組で歌いたい、踊りたいって強い気持ちを感じます。すごく大事だと思います。
──岡田さんも今年で10周年を迎えて、後輩たちへの指導も期待される立場になってきたと思います。
ベテラン枠になりましたよね。ここ5年間はSTU48に力と愛情を注いできたので、これからはAKB48でそれをやっていきたいです。危なっかしい子は、やっぱり気になっちゃうので。
自分自身をさらけ出してオープンに生きていこうとしているからこそ、私になら話せることもあると思うので。メンバーたちを支えつつ、今のAKB48がもっと世の中に知れ渡るようにがんばっていきます。
自分の“好き”という感覚を信じてあげてほしい
──最後に、アイドルに関わらず「自分らしさ」に迷い悩む人は世の中に多いと思います。岡田さんからそういった人たちに向けて、何かヒントを教えてもらえますか?
自分らしさって、難しいですよね……。まず言いたいのは、自分らしさを隠さなきゃいけないと思ってる人は、その考えを変えることで、新しい仲間や理解者と出会う可能性があるということです。できるなら、恐れず、偽らずに生きてほしいと思います。
──岡田さんの話でいうと、髪を切ったことで離れた人がいた一方で、その姿を好意的に感じてくれる人との出会いもあったということでしょうか。
そう思います。もちろん失うこともあるかもしれないけど、得るものもあるはずだし、何より自分がラクになるから。まずは自分を大事にしてあげてほしいです。
ただ難しいのは、自分らしさって何かがわからない人もいると思うんですよ。“他人からわかりやすい個性”がないといけないわけじゃないので、そこはあまり考え過ぎないでほしいですね。
自分の好きなもの、嫌いなもの、やりたいこと、やりたくないこと……。そのあたりを考えてみて、その感覚に正直になってみるといいのかもしれません。
──まわりに合わせ過ぎず、自分の好きなこと、やりたいことに正直になってみると、自分らしさにつながると。
そうだと思います。好きなものを発信すればするほど、仲間が増えていくと思うし、何より自分のことをどんどん知れるというか。意外と、自分自身のことってわからないじゃないですか。自分の好きを発信することで、自分のことがわかっていくはず。自分の“好き”っていう感覚を信じてあげてほしいなって思います。
岡田奈々 INFORMATION
■AKB48 59th Single『元カレです』
価格:1,700円(税込)
発売日:2022年5月18日(水)
■『ミュージカル「マギ」-迷走組曲-』(岡田奈々がモルジアナ役として出演)
日程:2022年6月18日(土)~6月19日(日)
会場:森ノ宮ピロティホール(大阪公演)
■『岡田奈々 10th Anniversary Concert ~Starting Over~』
岡田奈々、デビュー10周年記念のソロコンサートを開催。
日程・会場(東京):2022年7月3日(日)東京・昭和女子大学 人見記念講堂
日程・会場(神奈川):2022年7月10日(日)神奈川県民ホール 大ホール
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『元カレです』AKB48
【選抜メンバー】
浅井七海、大西桃香、大盛真歩、岡田奈々、岡部麟、小栗有以、小田えりな、柏木由紀、倉野尾成美、坂口渚沙、下尾みう、田口愛佳、谷口めぐ、千葉恵里、福岡聖菜、本田仁美、向井地美音、武藤十夢、村山彩希、山内瑞葵※画像はType A【初回限定盤】(C)You, Be Cool!/KING RECORDS
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