西野七瀬「楽しめなくなったらそれまで」“仕事人間”としての悩みと成長

2022.6.14
西野七瀬

文=安里和哲 撮影=洞澤佐智子 編集=高橋千里


6月17日公開の映画『恋は光』でヒロイン・北代を演じるのが、西野七瀬だ。2018年に乃木坂46を卒業後、女優として確固たる地位を築きつつある彼女。

まだまだ悩むことも多いというが、それでも「撮影の現場はすごく楽しい」と語る。

西野七瀬
西野七瀬(にしの・ななせ) 1994年5月25日、大阪府出身。2018年乃木坂46卒業後、女優として活動。ドラマ『あなたの番です』(日本テレビ)で注目を浴び、2021年には『孤狼の血 LEVEL2』の出演で、日本アカデミー賞の新人俳優賞と優秀助演女優賞をダブル受賞

女優として「素の部分を一切出さずに演じたい」という西野に、野暮なようだけれど、少しでも素顔に迫りたく、話を聞いた。


アイドル卒業後、“女優一本”で勝負していくことへの不安

──「日本アカデミー賞」新人俳優賞と優秀助演女優賞のダブル受賞おめでとうございます。女優として成長を実感することはありますか?

西野七瀬(以下:西野) ありがとうございます。成長という意味では、まだまだ悩むことも多くて、自分ではピンとこないんですけど……。でも、いろんなことが少しずつできるようになってきたのかなとは思います。

──今までさまざまな役を幅広く演じられた印象ですが、これからやってみたい役はありますか?

西野 だらしない人かなぁ。部屋とか片づけられないみたいなダメダメな人。今までそういう感じの役はなかったから、何をやってもダメな人をやってみたいです。ドジでポンコツな感じ(笑)。そういう人って見ててほっこりするし、ほっとけないじゃないですか。

──個人的に西野さんはコメディエンヌ的な活躍もできそうだなって感じてたので、観てみたいです。お笑いもかなり好きなんですよね。

西野 そうですね。確かにコント番組にもっと出演してみたいですけど、コメディのお芝居となると難しいんだろうなって思います。

西野七瀬

──今までの女優業で大変だったことは覚えてますか?

西野 昔、長時間の撮影をしたこともあって大変でした。体力的にはまだ大丈夫だったんですけど、深夜のテンションになっちゃって、演技中にそれを抑えるのが大変だなって。今はそんなに遅くまでやることもないので助かってます。

──乃木坂46卒業後、女優一本でやっていくのも覚悟が必要だったのかなと想像します。

西野 特に覚悟したわけではなくって。まだまだ不安も尽きないです。でもやっぱり撮影はすごく楽しいなって思えるので、もしも自分が楽しめなくなっちゃったら、それまでなんだろうなって思うような感覚です。

演技で悩むことも多いんですけど、そういうときにそのまま本番に入るとよくないことが多いので、監督と意見交換するようにしています。話してみて納得できる点が何かひとつでも見つかったら、グッと進みやすくなるんですよね。

西野七瀬

──西野さんはご自身を「仕事人間」だと自己分析されてますよね。この仕事のやりがいはどのあたりに感じますか。

西野 人との出会いだと思います。その作品で出会ったキャストやスタッフの方たちと一緒に同じ方向を向いて、みんなで作るって過程が好きなんです。

だから、作品がどう評価されたかってあまり気にならないんですよね。その撮影現場が楽しいってことに尽きるかもしれません。観てくださった方や、そこでの出会いが次につながっていくのもありがたいです。

でも最近は自分の時間も充実させていきたいなと思えてて、休みの日まで仕事で頭がいっぱいとかではないかな。休みの日は息抜きの時間として、切り替えて遊んでます。

──理想の女優像はありますか。

西野 いろんな幅広い役柄を、自分の素の部分が見えないくらい演じられるようになるのが理想です。どんな役でもその人になりきれるように。“西野七瀬”を一切出さずに演じられるようになれたらいいですね。

お客さんには“塩対応”してみました

西野七瀬

──西野さんは、6月公開の『恋は光』という映画でヒロイン・北代を演じます。「恋する女性が光って視える」という特異体質を持った西条(神尾楓珠)という男性をめぐって、3人の女性が交流を深めるストーリーです。西野さんは北代という女性をどのように捉えましたか?

西野 女性3人の中だと、北代が一番ちょけるんだけど、実は誰よりも人のことを見ていて、バランサーになっているんですよね。大学生でそんなに人を気遣える性格がすごいなと思って演じていました。

──キャストの中では、西野さんが最年長でしたが、共演者のバランサーになる場面もありましたか?

西野 いや、全然年齢は気にせずにやってました。みんな話しやすくて、特に主演の神尾くんと一緒のシーンが多かったんですけど、すごい気さくに話しかけてくれたんですよ。だから、全然壁を感じずにリラックスしていられました。

西野七瀬

──北代と西野さんに共通点はありましたか。

西野 ほぼないんですよね……。あえて言うなら、フットワークが軽そうな感じかな。北代ってすぐに「飲も飲も!」ってノリでみんなを誘ったりするんですけど、私もちょっと話し足りないなぁってときに、「ご飯食べながらつづき話そう!」って誘うのがすごい好きなんですよね。

──撮影で印象に残ったことや、苦労したことがあれば教えてください。

西野 岡山県での夏のロケだったので、日焼けと虫よけ対策はけっこう大変でしたね。でもどのシーンの撮影でも、景色がほんとにきれい過ぎました。実際に映像で観ても、夏を感じられる映画だと思います。

あと、北代のアルバイト先が釣具屋さんなんですけど、釣具屋さんって初めて行ったんですよ。ルアーがすっごいたくさんあって、いろいろ眺めてるのが楽しかったです。

釣具屋さんでは、撮影でも印象的なことがあって。北代って友達には気さくだけれど、きっとお客さんには塩対応なんじゃないかと考えて、ぶっきらぼうに演じてみたんです。それを見た監督にも「北代っぽいね」と採用していただいたので、個人的にもお気に入りのシーンになりました。


個人的には「好きと思ったらそれが恋」タイプ

西野七瀬

──縁側でお酒を飲むシーンや、釣った魚を焼いて食べるシーンなど、西野さんの飲食シーンがすごく多かったですね。

西野 そうですね、北代めっちゃ食べてました(笑)。

──北代が学食で大食いするシーンも印象的でした。

西野 あれ、大変だったんです。想像より飲み込むのが難しいし、でも、お腹いっぱいになっちゃうから撮り直しもたくさんはできなくて。でも、撮影全体を通しておいしいものがたくさん食べられたので楽しかったですね。

──ちなみに何が一番おいしかったですか?

西野 東雲さんの家で出てくる料理で、切ったトマトに、大葉としらすを乗せたのがめっちゃ好きでした。スタッフの方に「予備で作った分が余ってるのでよかったら」と言っていただいたので、お持ち帰りしてずっと食べちゃいました。

西野七瀬

──『恋は光』は恋の定義をめぐって大論争する映画ですが、本作への出演を通して、「恋」について改めてどんな印象を抱きましたか。

西野 恋には正解も教科書もなくって、みんな自己流なんだなっていうことですね。だからこそ恋愛トークってめっちゃ楽しいんですよね。本作でも、全然性格の違う3人の女性が恋愛トークをきっかけに交流を深めるじゃないですか。

個人的には、宿木さん(馬場ふみか)みたいな「好きと思ったら、それが恋でしょ」ってシンプルな考え方が自分に近いなと思いました。北代みたいに、自分の恋を優先しないで友達の恋を応援するのはできないかなぁ……。

こんなふうに「恋ってなんだろう」って考えながら、観ていただきたい作品です。一緒に観た友達と、この映画をきっかけに「恋」について話すのも楽しそうだなと思います。

プライベートでは「悲しくて泣くことはないです」

西野七瀬

──本作への出演を通して、女優として新たな挑戦はありましたか。

西野 地声のお芝居かもしれないです。最初、監督がイメージする北代を表現できなくて困っていたんです。でも、神尾くんと雑談してたのを聞いた監督が「今話してる声色でやってほしい」って言ってくださって。

普段の素の声だから「それでいいのかな?」と少し不安だったんですけど、結果的にそれが北代という役に合っていた気がします。北代って語尾が「〜だな」だったりして、少年チックなしゃべり方をするじゃないですか。だから地声がぴったりだったのかもしれません。

今まではカメラが回ると無意識にスイッチが入るというか、ちょっと違う声色を作っちゃってたと思うんです。でもそうじゃなくて、普段の話し方そのままのほうがいいこともあるんだなって気づかされました。

西野七瀬

──反対に、声を発さないシーンも素敵でした。西条の気持ちを知った北代が落ち込むシーンがすごく繊細で。息を飲んだ西野さんが肩を落とし、視線を落とす仕草が切なくて、感情が伝わりました。

西野 ありがとうございます。あそこは確かに監督と話しながら細かく調整したシーンでした。西条の気持ちはわかってたけど、初めて直接言葉にされて「やっぱそうか……」と落ち込んで。

でも、悲しんでることは悟られたくない、という感情のせめぎ合いが見えたらいいなと思っていたので、そういうふうに観ていただけてよかったです。

──北代って絶対に涙を見せないですよね。

西野 そうですね。ほんと強いなって思いますね。

──西野さん自身は、普段涙を流すほうですか。

西野 私も、悲しくなって泣くことはあまりないですね。でも不意に観たCMに感動することはよくあって、数十秒の映像に観入っちゃって泣いてます。ほっこりしたCMに弱くて、すぐ感動しちゃうんです。

西野七瀬

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    “恋する女性が光って視える”という特異な体質を持つ大学生・西条。恋愛とは無縁の学生生活を送っていたある日、「恋というものを知りたい」と言う文学少女・東雲にひと目惚れ、“恋の定義”を語り合う交換日記を始めることに。そんなふたりの様子は、西条にずっと片想いをしている幼なじみの北代の心をざわつかせる。さらに、他人の恋人を略奪してばかりの宿木は、西条を北代の彼氏と勘違いし、猛アプローチを開始。いつの間にか4人で“恋とはなんぞや?”を考え始め、やがて不思議な四角関係に……。

    2022年6月17日(金)に全国ロードショー。

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安里和哲

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安里和哲

(あさと・かずあき)ライター。1990年、沖縄県生まれ。ブログ『ひとつ恋でもしてみようか』(https://massarassa.hatenablog.com/)に日記や感想文を書く。趣味範囲は、映画、音楽、寄席演芸、お笑い、ラジオなど。執筆経験『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』『Maybe!』..