『M-1グランプリ2021』優勝で、日本中に感動を与えた錦鯉の長谷川雅紀と渡辺隆。優勝直前の2021年11月に自叙伝『くすぶり中年の逆襲』(新潮社)を上梓した彼らに、インタビューを実施した。その内容を前後編でお届けする。
前編では、トガっていたそれぞれの若かりしころを振り返りながら、おじさんとなった現状の自分たちを分析。日頃大事にしているスタンスや、今後のビジョンについて詳しく聞いていくうちに、雅紀自らも「新しい自分が知れた」と新たな発見があったようだ。
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長く話す雅紀さんを、通訳する渡辺さん
──『くすぶり中年の逆襲』、とても素晴らしい本でした。おふたりの会話が活字になることで、渡辺さんが普段ボソッと言うツッコミがよりダイレクトに入ってきて、この本が伝えたかった裏テーマって、もしかしたらそこなのかもと深読みしたのですが……。
渡辺 それは深読みし過ぎですね。そんなことは一切ないです。
雅紀 本当に深読みし過ぎですよ(笑)。
──(笑)。読んでいて何回か泣きました。
雅紀 いやぁ、うれしいですね。笑うとか泣くとか言ってくださるんで、自分ではそんなつもりでしゃべってないですけど、結局、感情が動くってことは心というか魂を揺さぶられるわけじゃないですか。だからうれしいなぁって思いますね。
渡辺 ええ。「うれしい」って言えばいいだけの話ですね。
雅紀 長いことしゃべりましたけど、結局ね(笑)。
──今のように、雅紀さんが伝えたいことは結局ひとつだな、と思う部分が本にもたくさんありました。
渡辺 ありますね、確かに。
──それに対して、渡辺さんのツッコミがあるからまとまりますよね。
渡辺 ありがとうございます。
──通訳みたいな感じというか。
雅紀 僕がなに人なんだって話ですよ、通訳なんて(笑)。
渡辺 たまに、しゃべってる途中で何を言うか忘れることあるもんね、話が長過ぎて。
雅紀 怖い話ですよね。
──文中にも、雅紀さんが「(隆は)ボソッとひとこと言って笑いを取る。それがカッコいいんだ」とおっしゃっている一文がありましたね。
雅紀 「カッコいい」とか「すごいね」って隆に言うのが、別に恥ずかしくないんですよね。「あのひと言おもしろかった」とかも言っちゃいますし。
「自分が一番おもしろい」と思っていたが……
──それぞれ、トガっていた時期はありますか?
雅紀 そりゃありますよ。若いころ、芸人みんな通る道ですよ。
──どういうトガり方を?
雅紀 自分が一番おもしろいと思ってたから、ほかの人を見て笑わなかったんですよ。
──その気持ちは、だんだんとなくなるものなんですか?
雅紀 なくなります。僕はその気持ちがなくなるのが、人一倍早かったと思います。そのまま3、40代になる人もいるとは思うし、それが悪いとは思わないですけど、僕は「自分にはそんなに才能がないな」って気付いたから、すぐ変わりました。
──いざ変わってみて、いい方向に向かいましたか?
雅紀 僕はよかったです。本当は「あいつらおもしろくねえ」とか「俺が一番だ」って性格じゃなくて、それを変に思ってたから、早く気付けてよかったかなって思いますね。
──トガった時期を経て、素の自分に戻れたというか。
雅紀 そうです、そうです。今なんて、考え方180度違います。おじいさんおばあさんからお子さんまで笑ってほしいって思いだから。
──エゴサーチされるんですか?
雅紀 隆はしないけど、僕はします。僕は全然怒らない人間ですけど、やっぱりマイナスの意見を見て悲しくなるときがあるんですよ。でも、一日寝たらすぐ忘れるから便利だなあって思うんですけど。
──渡辺さんはエゴサーチされないと。
渡辺 そうですね、僕はどうでもいいと思ってるんで。
──世間の声にあまり興味がないんですか?
渡辺 どう見られててもこっちでコントロールできることじゃないですし、あんまり自分にも興味ないですし。
──自分に興味がないっていうのは、どういうことでしょう?
渡辺 どう思われてもいいって思ってます。芸人って名乗ってる以上は「笑わせないと詐欺」とは思ってますけど、それができてりゃ、どう思われてもいいかなって思ってます。
──そんな渡辺さんも、トガっていた時期はあるんですか?
渡辺 どうなんですかね。最初は自分が一番おもしろいと思って入ってますし、なんで俺のおもしろさに気付かないんだとかずっと思ってましたけど、だんだん「あぁ、自分がやってねえからか」ってわかってきた感じですね。トガってたっていうより、無知だった。
──いろいろ経験していく中で、たくさんの気付きを得て。
渡辺 そうですね、はい。
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