ピンク映画、エロVシネ、ロマンポルノ、違いはわかる?城定秀夫監督が明かす「ピンク映画の舞台裏」

2021.10.12


“脱げる子”の選択肢が増えた

──濡れ場はどのように撮影していますか?

城定 AVは30分なら30分の本番行為を役者にやってもらって、それを撮影するわけですが、ピンク映画はワンカットごとにしっかり演出をつけていく必要があります。しかもフィルム代を節約するためには7、80分のフィルムのうち60分を撮れ高にしないといけません。もちろん今はフィルムではなくデジタル撮影が主流なので、いくらでもビデオを回せるわけですが、僕はフィルム時代の感覚が染みついています。なので、濡れ場においても「いかに無駄なく撮るか」を重視しています。

──AVと違って「結合部を映せない」という制約があるなかで、色っぽい映像に仕上げる秘訣はどこにあるのでしょうか?

城定 ピンク映画では、同じ作品であっても編集で変えて、専門劇場でかけるR18版と、レンタルや配信向けのR15版の2バージョンが作られます。R18版は、肝心のところさえ見せていなければ、お尻が動いている様子なんかは映してもいいんです。でもR15版は、お尻が動いていちゃダメ。

となると、“寄り”(被写体をアップで撮ること)でいかに攻めるかが大切です。ほかの監督にはほかのやり方があるのでしょうが、僕は、キスやら胸やら、足の指がくっと曲がる様子やらを寄りで映すことが多いですね。あと予算がなくて美術的な作り込みをしづらいなか、肉体を見せるぶんには予算関係ないので、そういう意味でも寄りのカットを選択しています。

──同じ作品でも『恋の豚』や『世界で一番美しいメス豚ちゃん』とタイトルが複数バージョン存在するのは、R18版とR15版の違いですか?

城定 そう。R15版のタイトルは、比較的こちらのアイデアが通りやすいけど、R18版のタイトルは気づいたら決まっているから、僕もあとから知って「そういうタイトルなんだ」と思う(笑)。

城定秀夫監督『欲しがり奈々ちゃん~ひとくち、ちょうだい~』『扉を閉めた女教師』予告編

──日活ロマンポルノ時代は「日活ロマンポルノによく出演している女優さん」、その後の時代も「ピンク映画によく出演している女優さん」というのが存在しました。しかし、今は多くのピンク映画でAV女優の方々が主演しています。この変化はどのように起きたのでしょうか?

城定 AV全盛で、“脱げる子”の選択肢が増えたんだと思います。ただ、ピンク映画というのはギャラが高くないわりには大変な現場なので、ある程度お芝居に興味がある子でないと厳しい。ピンク映画に出ているAV女優さんは、ただ脱げるだけでなく、お芝居に意欲を持ってくれてもいるということでしょうね。

──逆にピンク映画に出演している男優さんは、今も昔も限られている印象です。いろいろ作品を観ていると、「あの作品で団地で不倫していた人が、この作品でも団地で不倫している」というのがわかります。

城定 AVの世界だって、女の子はたくさんいても、男優さんは数少ないですからね。AVもピンクも女性を立てるジャンルなので、男が少ないのでしょう。

「少しでも濡れ場があればOK」作家至上主義のムード

──現在、ピンク映画はどのような観客たちに支えられているのでしょうか?

城定 日活ロマンポルノの時代から「映画好きなら成人向け映画も要チェックだ」みたいなことは言われていましたし、僕もミニシアターで上映イベントをさせてもらっていますが、単純な数字だけで見ると、映画好きによる収益というのはオマケみたいなものです。ピンク映画を収益的に支えているのは、やはり専門館での上映です。ただ、自分のまわりでさえ専門館でピンク映画を観ている人はあまりいませんし、AVがある時代にピンク映画を劇場で観るのがどういう人々なのか、僕にもよくわからないんですよね。

ただ、AVでも「ドラマものじゃないとダメ」という層が根強くいるんですよ。絡みと同じかそれ以上にドラマを求めていて、ドラマがないと、そもそもエロとしても楽しめないという人。そのような人々にピンク映画は支えられているのかもしれません。

──城定監督は、どういう経緯でピンク映画を撮るようになったんですか?

城定 そもそも僕はピンクをやりたくて業界入りしました。美大生だったころ、ちょうど「ピンク四天王」(1980年代後半にデビューした4人の監督、佐藤寿保、サトウトシキ、瀬々敬久、佐野和宏は映画ファンからも支持された)が盛り上がり、大学の先輩と「ピンクっておもしろいね」と言い合っていました。その先輩が先にピンク業界に飛び込み、あとを追うかたちで僕も助監督からキャリアをスタートさせました。当時はもう一般映画では「助監督をつづけていれば、いつか監督になれる」とは限らない時代になっていましたが、ピンク映画の世界はまだ助監督を数年がんばれば監督になれたんですよ。

城定秀夫監督の最新“エロVシネ”『欲しがり奈々ちゃん~ひとくち、ちょうだい~』『扉を閉めた女教師』が2021年10月2日より全国順次公開中(c)2021クロックワークス/レオーネ

──当時の城定監督は、ピンク映画のどんなところにおもしろさを感じていたのでしょうか?

城定 映画監督への憧れはあるけど、遠い世界だと感じていた当時の僕にとってピンク映画の手作りな感じは、「僕にも何か撮れるんじゃないか」という夢を見せてくれました。あと日活ロマンポルノも昔から好きで、小さい世界の中での男女のドラマというものに興味があったんです。特にピンク四天王の時代は、「少しでも濡れ場があれば好きなことをやっていい」という作家至上主義のムードがあって、そういうところにも魅力を感じました。

──確かに90年代ころのピンク映画を観ると、濡れ場よりもトガったストーリーやカットが印象に残る作品がいろいろありますね。

城定 そう。「普通の映画じゃやらないようなことをやっている」というカッコよさがあったんですよ。ただ、自分が撮るようになって、また少し考え方が変わったんですけどね。

ピンク映画の存在意義とは?


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原田イチボ@HEW

(はらだ・いちぼ)1990年生まれ。編集プロダクション「HEW」所属のライター。アイドル、プロレス、BL、銭湯サウナが好き。HEW