蛙亭・中野「僕がなにをすればネタをもっと面白く見せられるか」

2021.10.12
蛙亭中野

文=安里和哲 撮影=信岡麻美 編集=福田 駿


抜群の演技力で、アドリブもお手の物。相方に「天才」と称され頼られる男、蛙亭・中野。圧倒的な自己肯定力。何事にも動じない無敵ぶり。強靭なメンタル。令和のコント界を牛耳るのは、この男かもしれない。

『芸人雑誌 volume4』(9月25日発売)は、蛙亭のイワクラ、中野周平それぞれのソロインタビューを収録。さらに丸善ジュンク堂書店全店、honto限定で蛙亭バージョンの表紙を発売。今回は特別に、中野周平のソロインタビューを全文公開!

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キャラクターがコントっぽくしゃべってる風には絶対したくない

芸人雑誌volume4
蛙亭表紙ver『芸人雑誌 volume4』(丸善ジュンク堂書店全店、honto限定で発売)

——『ABCお笑いグランプリ』の審査員だった、かまいたち・山内さんを筆頭に、中野さんの演技を絶賛する声は多いです。評価の理由を、どのように自己分析されてますか?

中野 いやぁ、自分では上手いとかわからないですし、別になんも特別なことしてないんですよ。ただみなさんがそうおっしゃるなら、得意なんでしょうね。ずっとコントを続けるうちに自然と身についたと言いますか。演技をめっちゃ磨こうというより、コントの設定のリアリティを追求してたら、リアルっぽく見えるようになったのかなと。

——演じる上での方法論はありますか?

中野 方法論かはわからないですけど、自分なりのキャラの作り方はありますよ。たとえば、どんなネタでもキャラクターのバックボーンは考えて、その上から肉付けしてます。イワクラは重要なポイント以外のセリフは基本お任せしてくるので、展開とキャラクターに合わせたセリフは自分で考えてますね。キャラクターがコントっぽくしゃべってる風には絶対したくないんで、リアリティを意識します。動作も少しずつ変えて試行錯誤してるんですよ。「コイツならここで立ち上がる。けど、なんもしゃべらん」とか。

——そういう中野さんのコントでの言動を受けて、思わず笑ってしまうイワクラさんの姿が印象的です。

中野 イワクラのツボは知ってるんで、こうすれば笑うだろうなっていうのはわかるんですよ。でもやりすぎると飽きられちゃうんで、そこをちょっとずつ変えたりしてます。「マッチングアプリ」や「絵描きのしゅうちゃん」、「電車」、「レンタル彼氏」なんかは、設定とキャラだけあって、僕が大喜利的にアドリブを足していく。そのアドリブで、イワクラをどれだけ笑わせられるか。そこが勝負だったりしますね。何度も演じるうちに「コイツはレンタル彼氏として初出勤なんだろうな」とか「手もつないだことないヤツ」とかキャラが固まってくるのも、やってて面白いです。

蛙亭・中野周平

——イワクラさんを笑わせる大喜利的なコントがある一方で、しっかり台本をなぞるネタもあります。

中野 賞レース用のネタはそうでしょうね。『ABCお笑いグランプリ』でやった「自転車撤去」は、ボケらしいボケはあんまなくて、しっかり展開を見せるコントでした。

——展開と裏切りで笑わせていくというか。

中野 はい。そのために、わりとしっかり目に演技してますね。あのコントの面白さって、設定と役の温度差じゃないですか。だから、笑ってほしいところ以外は違和感なく見てもらえるような演技が必要なんですよ。

——設定と役の温度差?

中野 言ってしまえばそこまで重要じゃない自転車撤去に、女の人とおっさんが熱くなってる。“コト”のショボさと、キャラクターの一心不乱さの温度差が面白いんで、演技の精度が上がれば上がるほど、面白くなると言いますか……。

——なるほど。賞レースではアドリブ的な大喜利よりも、やはり演技的なアプローチがいいですか?

中野 僕自身は、凝った設定ってそこまで好きじゃなくて、基本ラクに見てもらいたいタイプなんですよ。僕としては面白かったらどっちでもいいんですけど……。賞レースは特別ですね。お客さんも凝ったものが見たいでしょうし、ただ笑ってもらおうと思ってやると、ちょっと厳しい。だから設定もある程度作り込む必要があったりして。

『SLAM DUNK』の流川楓になりたいんですよ


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安里和哲

(あさと・かずあき)ライター。1990年、沖縄県生まれ。ブログ『ひとつ恋でもしてみようか』(https://massarassa.hatenablog.com/)に日記や感想文を書く。趣味範囲は、映画、音楽、寄席演芸、お笑い、ラジオなど。執筆経験『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』『Maybe!』..

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