『神或アルゴリズム』制作チーム対談 オーイシマサヨシ×オカモト(TriFスタジオ) 音楽と映像が互いに響き合う

2021.9.8

文=真貝 聡 編集=渡部 遊


オーイシマサヨシが初めてプロデュースを手がけたアニメMVプロジェクト『神或アルゴリズム』。女性ボーカルとのユニット、映像と音楽の同時制作など、オーイシにとってもかなり大きな挑戦となり、初めてづくしとなった本企画。アニメーション制作を務めたオカモトとの対談で、その制作について語る。

※本記事は8月21日(土)発売『オーイシマサヨシ コーシキブック』(太田出版)の内容を一部抜粋したものです。

オーイシマサヨシコーシキブック
『オーイシマサヨシ コーシキブック』(太田出版)

物作りの喜びを再認識させてくれた恩人

オーイシ 『神或アルゴリズム』のプロジェクトは、「新曲をアニメMVにしたい」という思いから始まりました。それでディレクターさんに「アニメMVを作るんだったら、オカモト監督が良いですよ」とご紹介いただいたんです。せっかくアニメMVを作るなら、原案から設定も含めてみんなで考えたいと思って、1年前から打ち合わせを重ねて作品を完成させましたね。

オカモト まずは、オーイシさんの頭の中にある断片的なイメージを掴んでいきました。例えば「『千と千尋の神隠し』の世界観にしたい」とか、「『ソードアート・オンライン』の仮想現実が好き」などのお話を聞かせていただいて、そこから物語やキャラクターを考えましたね。オーイシさんは本当に楽しそうにアイデアをお話しされるので、私もすごく楽しかったです。

オーイシ 舞台をアジアンテイストにする大枠の設定はもちろんですけど、「偽造テレカって昔はありましたよね!」「電話BOXって今は見ないですよね!」と細かいフラッシュアイデアも全部拾ってくださって、ありがたかったです。

オカモト 偽造テレカとか、それをそのまま描いてしまったら若い子達に伝わらないから、ブラッシュアップしてMVの世界観に落とし込んでみたりして。

オーイシ 今の話を聞いた上でMVを観れば、僕がどれだけワガママを言って、いかにオカモト監督が忠実に再現してくださったのかが分かりますね。特に、ヒロインのイメージが上がってきたときには「コレコレ!」と言った覚えがあります。僕も生粋のアニオタなので、萌えるかどうかの敏感なアンテナがあるんですよ(笑)。これから、このヒロインにどんなことが起こるんだろうとワクワクしましたね。

オカモト 確かに、オーイシさんはヒロインに対するこだわりが半端なかった記憶があって(笑)。

オーイシ めっちゃ恥ずかしいですね!(笑)。どんなことを言ってましたっけ?

『神或アルゴリズム (feat.りりあ。)[Official Video]』より

オカモト ヒロインに関しては、ちょっと意地悪で思わせぶりな感じとか、素直じゃないところがキーワードでした。

オーイシ あとは赤い糸が出てくることにも繋がりますが、「運命を強く信じる子」というのも言ってましたよね。主人公よりも運命を強く信じているのはヒロインかなと思いますし、涙が溢れるシーンがあるんですけど、アンニュイな表情をしたりとかニコッとする際に憂いがあるのはそういうところにあるのかなって。2人が離れ離れになる運命だと分かっているからこそ、そういう表情を浮かべている。その感情の機微もMVで表現されています。

オカモト しかも、今回は楽曲がない状態からスタートしたんですよね。私としても音楽と映像がお互いにインスピレーションを受けながら、形にしていく作業がとても新鮮でした。

オーイシ オカモト監督にイメージボードを作っていただきつつ、僕も一節考えたメロディを聴いていただいて。そういう意味では、映像と音楽が密着した状態で同時進行に進めていきましたね。

オカモト 恐れ多いんですけど、オーイシさんが書かれた歌詞に対して、気になるところを提案させていただくこともありました。

オーイシ その意見がとても勉強になったし、普段ではやらない作曲スタイルで楽しかったです。実は、今回の対談でどうしてもお伝えしたいことがありまして……コロナ禍になって僕はスランプに陥っていたんです。そんなとき、オカモト監督と『神或アルゴリズム』を作らせていただいたことで、物作りの喜びを再確認させてもらいました。オカモト監督は僕の恩人でもあるんです。

オカモト とんでもないです(照)。オーイシさんは音楽を作られて、私は画を描いているのでお互いにやっていることは違うんですけど、クリエイティブという意味では一緒。私も物作りの精神を見つめ直す機会になりました。

『神或アルゴリズム (feat.りりあ。)[Official Video]』より

オカモト
アニメーション作家、イラストレーター。所属するクリエイティブチーム“TriFスタジオ”は過去にオーイシマサヨシオンラインワンマンライブ『世界が君を必要とする時が来たんだ』の映像演出を務めた。


この記事の画像(全2枚)



  • オーイシマサヨシコーシキブック

    『オーイシマサヨシ コーシキブック』

    発売日:2021年8月21日
    予価:本体2,420円(税込)
    仕様:B5判/ソフトカバー/112ページ
    発行:太田出版

    関連リンク

  • 『オーイシマサヨシ コーシキブック』<Amazon限定特別版>

    特典:アナザーカバー、大石昌良人生すごろく
    発売日:2021年8月21日
    予価:本体3,630円(税込)
    仕様:B5判/ソフトカバー/112ページ
    発行:太田出版

    関連リンク


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

渡部 遊

(わたなべ・ゆう)『クイック・ジャパン』編集部。猫アニメ自転車サウナ山が好き。

CONTRIBUTOR

QJWeb今月の執筆陣

酔いどれ燻し銀コラムが話題

お笑い芸人

薄幸(納言)

「金借り」哲学を説くピン芸人

お笑い芸人

岡野陽一

“ラジオ変態”の女子高生

タレント・女優

奥森皐月

ドイツ公共テレビプロデューサー

翻訳・通訳・よろず物書き業

マライ・メントライン

毎日更新「きのうのテレビ」

テレビっ子ライター

てれびのスキマ

7ORDER/FLATLAND

アーティスト・モデル

森⽥美勇⼈

ケモノバカ一代

ライター・書評家

豊崎由美

VTuber記事を連載中

道民ライター

たまごまご

ホフディランのボーカルであり、カレーマニア

ミュージシャン

小宮山雄飛

俳優の魅力に迫る「告白的男優論」

ライター、ノベライザー、映画批評家

相田冬二

お笑い・音楽・ドラマの「感想」連載

ブロガー

かんそう

若手コント職人

お笑い芸人

加賀 翔(かが屋)

『キングオブコント2021』ファイナリスト

お笑い芸人

林田洋平(ザ・マミィ)

2023年に解散予定

"楽器を持たないパンクバンド"

セントチヒロ・チッチ(BiSH)

ドラマやバラエティでも活躍する“げんじぶ”メンバー

ボーカルダンスグループ

長野凌大(原因は自分にある。)

「お笑いクイズランド」連載中

お笑い芸人

仲嶺 巧(三日月マンハッタン)

“永遠に中学生”エビ中メンバー

アイドル

中山莉子(私立恵比寿中学)
ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん(ランジャタイ国崎和也)
竹中夏海
でか美ちゃん
藤津亮太

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。