伊藤万理華が語る“演じる”ということ「死ぬまでたぶん忘れない、15歳の一番鮮明な記憶」

2021.8.5

文=相田冬二 撮影=西村 満 編集=森田真規


推しは勝新太郎、時代劇をこよなく愛す女子高校生が、最後の夏休みに個性的な仲間たちと映画作りに挑む様子を映し出した青春映画『サマーフィルムにのって』が8月6日に封切られる。

本作で主演を務めているのが、元・乃木坂46の伊藤万理華だ。猫背でガニマタ、一見すると変わり者だけど、あふれ出す時代劇愛で周囲を惹きつけるハダシ役を見事に演じ切った。

放送中の主演ドラマ『お耳に合いましたら。』も好評な伊藤万理華に、“演じる”をテーマに話を聞いた。


「とにかく撮り切らなきゃ。そんな想いだけでやっていました」

元・乃木坂46の伊藤万理華主演の映画『サマーフィルムにのって』が素晴らしい。

『サマーフィルムにのって』本予告

高校映画部のアウトサイダー、ハダシが、部員ではない面々と非公式の映画『武士の青春』を作り、文化祭で上映するまでを、なんと未来人の来訪(未来からやってきた凛太郎が『武士の青春』の主演を務める!)も交えながら描いた、まったく新しい青春劇。これまでの部活映画や、映画制作物語にありがちな展開やテイストが皆無で、絆を叫んだり、マニアックになったりすることも一切ない。ソーダ水のように粋な爽快感の理由は、主人公ハダシの人物造形にある。

時代劇、それも勝新太郎好きという極端な女子高生でありながら、ただの堅物でも、映画おたくでもない、独特の個性を有した女の子として、伊藤万理華はハダシを体現。モヤモヤした鬱屈を抱えているが、マイペースな惑いがうしろ向きに逆走する瞬間、彼女だけのエナジーが放射される。その様がなんとも気持ちよく、この潔さに導かれながら体験する97分はあっという間。設定も含め、ちょっとしたタイムマシンに乗った気分にもなる。

別人ですね。
開口一番、伊藤万理華本人に伝えると、「えー、褒められてる、褒められてる! えー、そんな、そんな、うれしい」と素直な笑みがこぼれた。

彼女は、ハダシという人格を完全に創り上げていると思った。たとえば、動き。ハダシが何かしゃべるより先に、彼女が何者なのかがわかる、感じる。私たちは、そのとき、世界でたったひとりのハダシという存在を知るのだ。

「あの挙動、猫背でガニマタで、っていうのは、監督から指定があったわけではなく、最初に脚本を読んだときに、なんとなく思ったことで。ハダシっていう名前からして、ちょっと現実味がないじゃないですか。得体の知れないところがあって。17、18歳にしても子供っぽい言動。走る、裸足で駆け抜ける。たぶん、女の子だから、男の子だから、そういうのもない。
私も、高校のときはもう乃木坂に入ってたんですけど、もし普通に学生生活を送っていたら、恋愛じゃなくて、ものづくりに走ったりしてる、と思うし。身だしなみとか絶対気にしてないんですよ。その感じがわかるから。きっとハダシはこうだろうと思ってやったら、ああなっちゃった(笑)。意識的に、ああしなきゃ、こうしなきゃ、というのもありませんでした。しゃべってたら、自然とああなりました」

女の子でも男の子でもない感じはありますね。

「まあ、女の子だけど、何かやるときは、女の子らしさとか、男の子らしさとか、そういうこともなく。ただ好きなことを熱心にやってる子。キャラクターづけしちゃうのも違うけど、でも、どうしたら自然と、このハダシという女の子を観てる側が、より受け入れられるんだろう?と。自分が観てる側だったら、どうしたら受け入れられるかな? そういうところは客観視しながらやってはいました。
ただ、それどころじゃなかった。主役としての役割というより、ずっと出ずっぱりで。何よりも映画作りに専念しなきゃ、という気持ち。(劇中の映画)『武士の青春』も、『サマーフィルムにのって』も、とにかく撮り切らなきゃ。そんな想いだけでやっていました」

その一念が、あの迫力を生んでいたのかも。

「それだけしかアタマには入っていなかった。そのこと以外は何も考えてなかった」

「私は私でしかない唯一無二の何かである」


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相田冬二

(あいだ・とうじ)ライター、ノベライザー、映画批評家。2020年4月30日、Zoomトークイベント『相田冬二、映画×俳優を語る。』をスタート。国内の稀有な演じ手を毎回ひとりずつ取り上げ、縦横無尽に語っている。ジャズ的な即興による言葉のセッションは6時間以上に及ぶことも。2020年10月、著作『舞台上..

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