『バイオハザード』シリーズが25年つづいた理由とは?カプコン小林裕幸P「日本を描こうとは思わなかった」

2021.7.7

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文=森 樹 編集=森田真規


ゲーム発の人気コンテンツ(IP)である『バイオハザード』シリーズのCGアニメーション作品『バイオハザード:インフィニット ダークネス』が、Netflixにて2021年7月8日から全世界での配信がスタート。

CGアニメーション作品としては4作目、初の連続ドラマとなった本作は、ホラーアクション要素に加え、政治ドラマも盛り込んだ重厚な内容となっている。海外にも数多くのファンを抱える『バイオ』シリーズにおいて、CGアニメーションが果たす役割とは。

1996年にゲーム第1作となる『バイオハザード』が発売されてから25年。本作にエグゼクティブプロデューサーとして参加しているカプコンの小林裕幸氏に、『インフィニット ダークネス』と歴代『バイオ』シリーズの魅力について話してもらった。


世界観とキャラの掘り下げを担うCGアニメーション作品

──まず、『バイオハザード』(以下『バイオ』)シリーズにおけるCGアニメーション作品の役割をどのように捉えていますか?

小林 過去にCGアニメーション映画を3本製作していて、連続ドラマは今回が初挑戦なのですが、ゲームではできないことを補っていく役割があると思っています。たとえば、『バイオ』シリーズには人気キャラクターが多数存在するのですが、シリーズのシナリオ上、毎回全員をゲームに出すことは難しい。ゲーム最新作『バイオハザード ヴィレッジ』には、クリス(・レッドフィールド)だけが登場しています。

もうひとつは、あくまでもゲームはユーザーがプレイするものなので、ユーザーと一緒に物語を作っていくことを前提にしています。一方で映像作品は、こちら側がその物語の中で伝えたいこと──世界観やキャラクターを掘り下げることが可能です。『インフィニット ダークネス』であれば、ゲーム『6』以降登場していないレオンの考えなど、キャラクターの内面を描いているのもポイントですね。

レオン『バイオハザード:インフィニット ダークネス』スペシャルキャラクターアート

──本作は、レオン・S・ケネディとクレア・レッドフィールドをメインキャラクターとしつつ、舞台は2006年になっています。

小林 企画当初からそのふたりは登場させたいと思っていました。レオンは『2』(1998年が舞台)のラクーンシティ事件から登場するわけですが、彼がエージェントをやっている『4』(2004年が舞台)以降の時代がいろいろ描けるだろうと。

──キャラクターが動かしやすいですよね。

小林 そうなんです。どこの国にも行けますし、単独行動もできるので。それから脚本会議を進めていくなかで、羽住(英一郎)監督が、新米警官である『2』でのレオンと、エージェントとしてさまざまな経験をして、少し疲れている『バイオハザード:ヴェンデッタ』(CGアニメーション映画。2014年が舞台)でのレオンの間を描きたいと。それで、2006年を舞台にすることが決まりました。

クレア『バイオハザード:インフィニット ダークネス』スペシャルキャラクターアート

──エージェントになって間もない彼を中心に描くかたちになっていったと。

小林 そうですね。2006年であれば大統領も出せるわけです。そこから全体の内容もちょっとずつ固まっていきました。

『バイオハザード: インフィニット ダークネス』予告編 - Netflix

羽住英一郎監督による「新しいバイオハザード」

──『インフィニット ダークネス』の監督に、『海猿』や『MOZU』など実写ドラマを得意とする羽住英一郎氏が起用されています。どのような狙いがあったのでしょうか?

小林 『ヴェンデッタ』が、『バイオ』シリーズの原点であるホラーとアクションを充実させた作品だったので、今回は少し違うテイストにしたいと考えていました。だったら、ドラマやサスペンスの要素をもう少し含めた「新しいバイオハザード」を描きたいと。(制作プロデュースの)トムス・エンタテインメントの篠原(宏康)プロデューサーともそうした話をするなかで、羽住さんの名前が上がりました。仕事上のつながりがなかったので1から交渉を行ったのですが、快く引き受けていただきました。

小林裕幸氏

──Netflixで全世界に配信する連続ドラマ、という座組が物語の構築に影響を与えた部分はありますか?

小林 今回はもともと連続ドラマにしたいという思いもありましたし、『バイオ』シリーズは世界中にファンがいるので、できれば全世界配信したいと。そのコンセプトがNetflixさんのフォーマットとちょうどマッチングしたというかたちですね。

──国を越えた、政治ドラマも強調されていますね。

小林 羽住監督の得意とするところですからね。ホワイトハウスを舞台に、アメリカの大統領を出すことが決まったのも、羽住さんが参加してからです。『バイオ』シリーズでホワイトハウスを描くのは初めての試みでしたし、そこにゾンビも出せたのはよかったかな(笑)。

『バイオハザード:インフィニット ダークネス』より

──CGの技術として、本作で新たに取り入れたものはありますか?

小林 『バイオ』シリーズは当初から実写テイストを大切にしてきたのですが、フォトリアルはいつも大変ですね(笑)。今回は『ヴェンデッタ』を製作していたメンバーがコアに入っていたので比較的スムーズに製作できましたし、クオリティも上がっていると思います。

──その中で、特に力を入れた部分はありますか?

小林 僕としては、とにかくレオンとクレアですね。あのふたりは会社(カプコン)の大スターでもあるので(笑)、特に目の部分はこだわって細かく修正してもらいました。

あえて日本を描かないことが世界を狙うカギ


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