サンドウィッチマンを観て感じたこと
──おふたりの漫才には、ラジオ『情熱スリーポイント』(GERA)で繰り広げられるトークの延長線上のような、ふたりの会話のおもしろさがあると思うのですが……。
文田 そうですね。特に昔はそれが色濃かったんですけど、「神奈川県住みます芸人」を経たことで、ちょっとお客さんに寄せた部分があるのかなと思います。
──「神奈川県住みます芸人」の経験が囲碁将棋の漫才にとって大きなターニングポイント?
文田 だと思いますね。それまで、営業でウケたことなかったもんな。
根建 なかったなー!
文田 僕ら、それまでは「笑わない人は別に笑わなくていいだろう」のスタンスで生きてたんです。でも住みます芸人になったら、僕ら個人のじゃなくて、住みます芸人のマネージャーと一緒に区役所に挨拶回りに行ったり、彼から「こういう営業取れそうです」とか聞いたりするようになったんですよね。そういう経緯を全部知っている現場でスベるのって、けっこうしんどくて。だんだんネタでご機嫌を伺うようになり始めたんです。それまで自己紹介なんか……。
根建 したことなかった。
──2013年には「神奈川県58市町村制覇ツアー」もされていましたよね。
文田 あれ、めちゃくちゃキツくて。行く先々でお客さんが変わると思ったらそんなことなくて、東京に観に来てくれている方数十人を58カ所引き連れる感じで。
根建 そうだった!
文田 ツアーって普通はそれ用に何本かネタを作って、全部同じネタで回ることが多いんですよ。でもこのときは同じ方がいらっしゃるからそうもいかなくて、結局1年で200本以上ネタ作りました。
──すごい。
文田 同じネタではよく来てくれる人たちが飽きる。かといって作ったばかりの新ネタをかけると、いつもの人は笑うけど、新規の方は「なんでこんなユルイので笑ってるんだろう」となる。だからこの1年はつらかったです。
──まさに千本ノックのような。
文田 ここでだいぶフォームが崩れたと思う。それが良かったのか悪かったのかわからないですけど、間口が広がったのは確かです。マヂラブとかもそうだよね?
根建 うん。マヂラブは大宮で変わった感はある。
文田 マヂラブもめちゃくちゃトガってて、営業でウケるヤツじゃなかった。でも大宮セブンに加入して、大宮の劇場に月の半分くらいいるようになってから、つかみみたいなことをやるようになって。初めて彼らがつかみやってるの観たとき、めちゃくちゃびっくりしたのを覚えてます。あんなの観たことなかったもん。あと明るくなったよね。野田くんが楽屋ですげえしゃべるようになった。
──おふたりは野田さんを古くからご存知なんですよね。
根建 そうなんですよ。マヂラブ結成の全然前、野田くんが高校生のころから知ってて。
文田 2009年ごろだったかな。マヂラブ、5GAPさん、サンドウィッチマンさんとホテルの営業に行ったことがあるんですよ。僕ら事務所違うし、サンドさんと営業回ることなんてないじゃないですか。
根建 ああ、行ったな!
文田 もちろん当時は僕らもマヂラブもひと笑いもなく、むちゃスベリの5分間。5GAPさんもちょっと苦戦して。いざサンドさんの番になったら、漫才してないんですよ。ショートコントやってお客さんとしゃべって、めちゃくちゃウケてたんです。そこで「チャンピオンが、こんなに知名度のある人が、営業先ではネタをやらずにこんなふうにやってるんだ。そりゃ俺らが5分ネタそのまんまやってもダメだよな」と思ったんですよ。
──そんなことが。
文田 そのときに野田くんと、「サンドさんはチャンピオンだし、15分漫才して帰ればいいのに、舞台降りてお客さんとしゃべって、ああやって盛り上げて帰るんだな」って話して。ただそのときは「でも、俺らはそうじゃなくていいよな」と言い合ったんですけど。
根建 そういう結論になったんだ(笑)。
文田 でも数年したらふた組共、多少はお客さんを見る芸人になってました。たまに営業に行ってスベるくらいはなんともなかったですけど、神奈川なり大宮なりで毎日スベってたら、自ずと変わるんですよね。
カナダからの手紙で始めたYouTube
──おふたりは2021年に入ってからYouTubeとインスタグラムを始められましたよね。
文田 はい、1月1日から。もともとは、お笑いが好きなクリエイターのKanaoさんという方から手紙をもらって。「カナダに住んでいるのでYouTubeでしかお笑いが観られない。囲碁将棋さんはYouTubeをやる予定はないですか?」と。そこにインスタのアカウントが書かれていたので、トークの話題にでもなればと思ってフォローしたんです。しばらくして「日本に帰国することになったのでお話ししませんか」と連絡をもらって、神保町まで会いに行ったんですよ。
──わざわざ。
文田 そしたらKanaoさん、女性だったんですよね。名前からも、インスタの写真からも男性だと思い込んでて。僕、結婚してるんで、最初から女性とわかってたらDMのやりとりも会うこともなかった。だから勘違いからの出会いなんです。いざ会ったら「自分ならこうする」とA4の紙10枚くらいにYouTubeとインスタグラムの企画とかサンプルとか、クオリティの高い資料をまとめてきてくれて。
──それがきっかけ。
文田 はい。それで、「じゃあ儲からなくていいから、10年後も恥ずかしくない、いいものだったらやります」と言って始まったものです。
──だから囲碁将棋のYouTubeは内容も映像も他の芸人さんのYouTubeと一線を画したものになっているわけですね。
文田 Kanaoさんとは最初「僕らのネタを人形劇でやろう」と話してたんですよ。でも普段僕らの動画を作ってくれている作家の子にKanaoさんを会わせたら、クリエイター同士ってすごいツンケンするんですよね。
根建 はははは!
文田 その作家の子が「ふたりが顔出さないのは意味わかんないです」と言い始めて。ほかにやりたいことを聞かれて僕が「絶景で漫才撮ってみたいんだよね」と言って、今に至る感じです。もうひとり説得しなきゃいけないヤツがいて、こいつ(根建を指す)なんですけど。
根建 はい。
文田 「YouTubeやってるやつは世界一ダサい」っていう10年前の感覚で生きてたんで。
根建 すいません。
文田 だからこいつも説得して、なんとか。
根建 説得されました。
文田 Insatgramも、Kanaoさんが劇場に来て撮ってくれているんですよ。来なくてもいいんだよとは言ってるんですけど、毎回来てくれる。本当にKanaoさんのバイタリティに引っ張られるかたちで。ただちょうど去年、ちょっといろいろあって仕事がぐっと減った時期があったんですよ。そこでYouTubeの話が出て、文句を言うよりもう自分たちでなんかやろうと動き始めた。これがもし忙しい時期だったら、やってなかったかもしれない。タイミングがよかったなとは思います。
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