自分とは違うところに出口を見つける人。そういう友達を求めています
シャムキャッツのアルバム『AFTER HOURS』に収録されている表題曲「AFTER HOURS」。友人や恋人と何気なくも素晴らしい日々を生きていく実感――。それは過ぎ去っていく一瞬でもあり、永遠でもある。柔らかに鳴るバンド・アンサンブル、ゆっくりと言葉をつむぐ夏目の声はどこまでも優しく残酷だ。そんな胸をかきむしられるような「切なさ」をシャムキャッツは知っている。そして、その切実な「切なさ」を共有した相手とはずっと友達でいられるということも。たとえ、その「友達」がいなくなってしまったとしても。
―――話が変わりますけど、人間以外と友達になったことってあります?
菅原 ありますね。この前、スーパーで豆苗を買って。食べて水を足して育ててたんですよ。生えてきたらまた食べようと思って。そしたら愛着がわいて食べられなくなっちゃって。結果からして終わらせてしまうっていう。悲しかったな……。
藤村 子どもの頃、ぬいぐるみは友達でした。うさぎとテディベアを持ってたな。
夏目 俺も、去年20年飼ってたカメが死んで。それはさすがに友達を失った感じがしたな。今思い返せばけっこう話しかけてたんですよ。だから死んだときは「え、まじで? え~亀幸!」つってうろたえて。あれは友達でしたね。
―――友達を亡くす経験って実感がわきにくいですよね。
夏目 去年、友達がひとりいなくなりましたね。同世代の友達が棺にいて、そのあと灰になるってのはやっぱりショッキングだった。でも、死んでも意外と「いる」んですよね。生きていた時よりも「いる」というか。疎遠に会わなくなった友達より、死んだ友達の方が「いる」気がするんです。
―――シャムキャッツは、新作の制作やライブツアーなど「新しい季節」を迎えつつあるわけですが、これからまた出会うであろう、新しい友達に思うことってありますか?
夏目 僕じゃ思いつかないことを教えてくれたりとか、一緒にいて楽しいとかそういう経験を「友達」とは共有したくて。おもしろいなと思うことは一緒だけど、自分とは違うところに出口を見つける人とか。そういう関係がもっと増えていく人生だったらおもしろいですよね。人それぞれの思考のアーカイブって独特じゃないですか? おもしろい友達と一緒にいると自分もイケてる人間になっているような気がする。それを求めてますね。「俺、こいつと一緒にいるとイケてんな!」ってくだらないようで意外と大事だったりすると思うな。
シャムキャッツ
メンバー全員が高校3年生時に浦安にて結成。2009年のデビュー以降、常に挑戦的に音楽性を変えながらも、あくまで日本語によるオルタナティブロックの探求とインディペンデントなバンド運営を主軸において活動しているギターポップバンド。サウンドはリアルでグルーヴィー。ブルーなメロディと日常を切り取った詞世界が特徴。
代表作にアルバム『AFTER HOURS』『Friends Again』、EP『TAKE CARE』『君の町にも雨はふるのかい?』など。2018年11月には5thアルバム『Virgin Graffiti』発売。2016年からは3年在籍したP-VINEを離れて自主レーベルTETRA RECORDSを設立。2018年、「FUJI ROCK FESTIVAL ’18」に出演。積極的なリリースとアジア圏に及ぶツアーを敢行、活動の場を広げている。