ハライチ岩井勇気「笑いの真髄は音楽にある」漫才への憧れとネタ作りでの“新しい価値観”

2021.4.24


前半は4文字か3文字、接続詞が1個、うしろは絶対に2文字

ハライチ岩井勇気(左)、澤部佑(右)
ハライチ岩井勇気(左)、澤部佑(右)

──『ドリームマッチ』(『史上空前!!笑いの祭典 ザ・ドリームマッチ』/TBS)の「塩の魔人」もそういうところから生まれたんでしょうか。

岩井 あれはまず、あのメンバーでリズムネタやりそうな人がいなかったっていうのがひとつあって。あの中で、俺は『キングオブコント』でいうにゃんこスターとかコロチキになろうと思ったんですよね。みんな真面目に考えてきてるあの場で、ああいうことやるのがまずおもしろいな、って。

それと、ゴシックの世界観をお笑いに落とし込む人っていないんですよ。多分そういうものを見てきてないから知識がない。俺は二次元にどっぷりだからそこを再現する情報量があるし、ティム・バートンみたいな世界観を急にお笑いのネタでやりだしたらそれだけでおもしろいと思って取り入れました。

それと、これはずっと言ってるんですけど、お笑いの真髄って音楽だと思ってるんです。曲でAメロBメロあってサビあって、Aメロあって2番のサビあって、間奏あってCメロあってBメロからサビ、みたいにめちゃくちゃ綺麗に構成が決まると「すげー!」って笑っちゃうじゃないですか。

その興奮度合いをお笑いに入れると、絶対笑っちゃうんですよね。ハライチのノリボケ漫才も、ずっと僕はリズムでやってたんですよ。語呂も合わせて。

──韻踏んでるところもあるし。

岩井 そう、やっぱ音にハメられると本能的に笑っちゃうから。誰かが澤部にネタ振って「味のないチョコレート」とか言うとするじゃないですか。「めっちゃ語呂悪いな」って思うんですよね。俺は絶対うしろを2文字にしてるんです。もしくは2文字の間に伸ばし棒入れるか「っ」入れるか。それで前半は4文字か3文字で、接続詞が1個。これが一番やってて気持ちいい。リズムとか音楽とか、それが一番大事な気がします。

──そういう気持ちよさを笑いの中に入れたいと思うようになったのはなにかきっかけが?

岩井 あ、あれかもな。高校のころに澤部の家で、夜中に陣内(智則)さんのネタを見てたんですよ。羊を数えるネタで、「ひつじが一匹、ひつじが二匹、ひつじの背筋が伸びました」みたいな感じで、めっちゃリズミカルで。これかもしれないですね。めちゃくちゃ印象に残ってます。

──近年のネタはノリボケではなくなってきてますが、そこでも変わらずリズムは重視していますか?

岩井 滞るリズムがないようにはしてます。最近の漫才も、一応発見みたいなものは入れてるんですよ。政治家のやってることって全部アイドルに置き換えられるな、と思ってそれを漫才にしたり。そういう「おっ」っていう部分を入れたいんですよね、やっぱり。

「コツコツやるの向いてねぇ」「感動のためにがんばりたくない」

ハライチ『クイック・ジャパン』vol.155より
『クイック・ジャパン』vol.155より

──今はエッセイや乙女ゲームの原作など仕事の幅が広がっていますが、そうした仕事も同じような感覚で取り組んでいるんでしょうか。

岩井 一番最初はノウハウを知りたいんです。だから乙女ゲームなら乙女ゲーム好きな人に認めてもらえるものを全力で作って、そのノウハウを知ってからズレたものをやりたいなと思ってます。「だいたいわかりました」ってなったら、どうすれば誰もやっていないことができるのか、次をすぐ考えますね。

──「だいたいわかりました」とならなかったことって、過去にありました?

岩井 ……あるっちゃあります。ピアノとか。ずっとピアノをやってたんですけど、クラシックって絶対めちゃくちゃ努力が必要なんですよね。それはつらかったです。弾くことは楽しいけど、「なんて向いてない世界に入っちゃったんだろう」って思ったときはありました。

とにかく一定まで努力しないと、自分のエッセンスを入れるところに達しないんですよ。そこまでの努力がめちゃくちゃ深いところにあって、頭で理解して「はいはい」って感じじゃないから。

──王道は売れるまでに時間がかかるという話と通底する部分がありそうですね。

岩井 そうですね。「コツコツやるの向いてねぇな」って、ピアノで学んだかもわかんないです。

──今は、理解できることとうまくできることの違いを感じながら、自分ができることをやれている、という状態なんですかね。

岩井 そうですね。必要な努力の量に対する見返りが、満足できるものじゃなかったらやらないかもしれないです。見返りっていうのはお金じゃなくて、達成感とか。だから「芸人がダンスをがんばって感動させる」みたいなの、マジで嫌なんですよ。俺、感動が一番嫌いなんですよね。がんばった上で感動するんだったらわかるけど、感動のためにがんばりたくない。その見返りは欲してないんで。

──だから『ゴッドタン』での「マジ歌選手権」で踊るのはアリだと。

岩井 あれは、やればやるほど笑いになるんでいいです。あれの見返りは僕が欲してるものなので。ダンス自体は好きじゃないですけど、やったほうが笑いが取れるんだったら、それは好きなんで。



『クイック・ジャパン』vol.155は70ページ以上のハライチ特集!

4月24日より順次発売される『クイック・ジャパン』vol.155のメインコンテンツは、岩井と澤部それぞれの「真逆な」活動を掘り下げる個人特集。岩井ソロインタビューではここに掲載した以外にも、相方・澤部との関係性や、お笑い芸人としてのゴールや「天下を取る」ことについて深く語っている。

さらに、「おもしろい」を求めて活動の幅を広げる岩井の個人特集には、豪華なゲストが集結。俳優・満島ひかりとは、写真家・嶌村吉祥丸を招きスペシャルグラビアを制作。声優・花江夏樹、芸人・パンサー向井慧も登場し、各々の活動の中で考える「おもしろい」とはどんなことかを語り合った。

『クイック・ジャパン』vol.155より
『クイック・ジャパン』vol.155より

ハライチふたりのスペシャルコーナーとして、トーク企画『15年目の秘密』も実施。

個人での活動が多いふたりが、「結成してから今まで秘密にしていたこと」をテーマに、コンビだけしかいないラジオブースで楽しく語り合う様子を収録。トークの内容は文字化して誌面に可能な限り収録するほか、数量限定の「ハライチ15周年特別版」では、当日のトークすべてを音声でお届けする。

クイック・ジャパン vol.155
『クイック・ジャパン』vol.155より

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斎藤 岬

(さいとう・みさき)編集者・ライター。1986年神奈川県生まれ。編集担当書籍に「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」(サイゾー)など。「芸人芸人芸人」「月刊芸..

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