野田クリスタル「店長はお笑い好き過ぎる」オートバックス大宮バイパスS店長は、なぜ劇場を手作りしたのか<シリーズ大宮セブン#5>


チラシやDMをやめ、広告費を全て使って芸人を呼ぶ

──最初は言わばお客さんの満足度を上げるためのちょっとしたイベントですよね。そこになぜこんなに注力を?

S店長 やっぱりね、一番最初のイベント時のお客様の笑顔が忘れられなくて。我々小売業って、あそこまで笑ってありがとうと言ってもらったり、喜んでもらったりすることってそんなにないんですよ。人を笑わすってすごい仕事だなって感じたので、もう「これだ!」と思ったんです。こんなにお客様に喜んでもらえるんだったら、今までチラシとかDMとかにかけていた経費を全部芸人さんに使うべきだと。大げさですが、今来てくれているお客様をさらに満足させたくて、結果口コミでお店の人気が広まり、売り上げや収益につながるということで、やりつづけてるのが今なんですよね。

──ということは、店舗の広告費を全部このライブに使っているわけですね。予算のかけ方について、会社に何か言われたりは……?

S店長 経費の予算内の使用については、店長にある程度の権限があるんですよ。ただ、それだけでは賄えない面もあるので、いろんな取引先に企画の趣旨とビジョンの説明とお願いをして、賛同していただいて。要はスポンサーを集めているんです。今では相談に行くと「お笑いバックスを盛り上げたい」と言ってくださる取引先もあるので、なんとかやってこられているんですよね。

──先ほどスタッフの皆さんには一切手伝わせないというお話でしたが、この活動自体については、スタッフの方は理解を?

S店長 スタッフも、ここまでつづくとは思っていなかったと思います。スタッフに手伝わせない理由は、通常の業務以外に負担をかけさせたくないからです。休みの日や有休を使って、スタッフもお客さまと一緒にライブを楽しんでもらったり、時に芸人さんと写真を撮ったりすることで、少しは福利厚生にもなって、だんだん理解してくれるようになったとは思います。

現在の劇場には舞台袖に待機場所があるほか、楽屋もしっかり用意されている
現在の劇場には舞台袖に待機場所があるほか、楽屋もしっかり用意されている

つづけてきたからこそ名前を出してもらえる

──昨年のコロナ禍以降、ライブを配信イベントに切り替えられましたよね。

S店長 そうですね。吉本さんの劇場の状況を聞いて、お客様を入れるライブはストップしたんです。それで3月に、試しに『お笑いバックスちゃんねる』を立ち上げてYouTube配信をやってみたんですよ。それこそ吉本さんの劇場がお休みして、配信もしていなかったときでした。世の中のお笑いすべてがストップしたときだったので、すごい数の人が『お笑いバックスちゃんねる』を観てくれたんです。チャットに「店長ありがとう!」という声もたくさんいただいて、うれしくなってつづけてみようと。

初の配信はまだ『M-1』優勝も出版も決まる遥か前の2020年3月に行われた『野田の日記朗読会2020』。朗読会とは名ばかりのライブに発展したためアーカイブはしばらく公開されず、先日ようやく再配信された

──昨年、大宮セブンの認知度が次第に高まってきたちょうどそのタイミングで、無料で大宮セブンを観られる配信になったわけですよね。

S店長 大宮セブンライブは僕も昔から観ていましたけど、本当にああいう感じなんですよ、おもしろいんですよ! そのおもしろさを少しでも観ていただけるようになったことを思うと、配信をやってよかったなと思いますね。最初は「やっぱりお客様がいないと……」と思っていたんですが、うちの配信を観て大宮の劇場に行くようになったとか、芸人さんのファンになったとかいう声をいただくと、やっぱり配信もやりつづけなきゃとますます思うようになりました。

──配信はトークが中心ですね。劇場ではなかなか観られない組み合わせもあったりして、よりこの場所の特異性が深まっている気がします。

S店長 そうですね。やっぱりネタという商品はタダで配信するわけにはいかないので、配信はトーク中心で。吉本さんの劇場のように集客・収益を気にしなくていいから本当にいろんな芸人さんが来てくれて、プロデューサーX氏は「実験場」と言ってくれたりしますけど(笑)。それでいいと思うんですよ、うちもこれで儲けようとしているわけじゃないので。芸人さんのファンの皆さんがうちの店の名前を覚えてくれるだけですごい財産だと思う。今後の車業界は、けっして前途洋々のジャンルではない。それでも最後まで生き残れる店舗になりたいというのが自分の今の目標なんです。車で何か困ったときに、「大宮のあのスーパーオートバックスおもしろいんだよな」というので、ちょっと遠くても行ってみようかという場所でありたいなというのもあって。今、芸人さんがよく「スーパーオートバックス大宮バイパス」って名前を出してくれるようになったのは、お金に代えられないすごい財産ですし、宣伝効果ですよ。それも全部、1回や2回イベントを打っただけで叶うことではなくて、これまでつづけてきたからこそなんですよね。

──では、今後もこの場所でのライブをつづけて行かれるつもりですか?

S店長 始めたとき、100回まではやろうと目標を立てました。1日複数公演をやって、それをまとめて1章(1笑)として数えているんです。去年の12月にとうとう第100笑を超えて、イベント自体は182日、公演数でいうと311公演。でもその第100笑目がお客様を入れてできなかったので、次は200笑まではやりたいと思っています。もちろん、会社から「何をやってるんだ」って言われることもゼロではないですよ。「意味ない」とか「やめたほうがいいんじゃないか」って正直何度も言われました。それでもやめなかったのは、お客様の笑顔や、芸人さんの一生懸命な姿を見ているからです。バイトしながらがんばっている人たちが育っていく、売れていく。けれどときには解散する人もいる。人の人生を目の前で見てるわけですよね。そしたらやっぱり、応援したいっていう気持ちの方が大事になって。芸人さん、お客様、すべての人が笑顔になるために!と、今もこうしてつづけているんです。

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