「肉体訓練を徹底し、世界を獲る」アイドル志望者はすべて落選、“和”を体現する<少女歌劇団ミモザーヌ>

2020.12.29

文=森野広明 インタビュー写真=倉科直弘
編集=田島太陽


「卓球もフィギュアスケートも小学生から始めて、中学生で世界を獲りに行く。なぜエンタメだけそれがダメなのか」

2020年11月にスタートした、少女たちによる新たな“歌劇団”にはそんな思いが根底にある。グループ名は「少女歌劇団ミモザーヌ」。お披露目ショーケースのレポートと共に、「『和』の文化」を表現するメンバーへのインタビューをお届けする。


コロナに翻弄されながら、待望の初舞台へ

令和2年11月15日、『和』の文化を背負う少女たちによる“歌劇団”が産声を上げた。その名も「少女歌劇団ミモザーヌ」。メンバーは、12歳から19歳までの23人の少女たちで構成されている。

デビューまでの道のりは困難つづきだった。プロジェクトの発足は約2年前で、応募総数736名の中から第1期メンバー14名が決定するも、事情によりお披露目は延期に。ステージに立てぬまま地道なレッスンの日々をつづけ、2020年4月に9名の第2期メンバーを迎え、コロナ禍の影響を受けながらもついに初舞台を踏むことになったのである。

11月15日に行われたお披露目ショーケースは、スウィングジャズの名曲「Sing Sing Sing」をもとにした「Welcome! Sing Sing Sing」でスタート。息の合った巧みなジャズダンスで華々しく、ザ・レビューな景色を繰り広げた。

少女歌劇団ミモザーヌ
少女歌劇団ミモザーヌ、11月15日に行われたお披露目ショーケース

オリジナル楽曲「扉の向こうへ」は、2000代初頭のガールズポップを彷彿とさせるクールなナンバーで、ストリート風のファッションを身にまといパワフルなヒップホップダンスで歌い踊る。彼女たちの特徴でもあるアクロバティックなパフォーマンスも圧巻で、特に、幼いころからレッスンを積み重ねてきた、みやはらにこ(12)による6連バック転が新しいレビューの姿を予感させた。

「愛の速度」は叙情的ロックナンバー。和楽器のテイストが取り入れられているのもおもしろい。つづく4曲目はゴスペル曲の「オー・ハッピー・デイ」をサンプリングした「ありがとうございます」。

そして、この日最後に歌われたのが、少女歌劇団ミモザーヌのアンセムとして歌い継がれていくであろう合唱曲「ミモザのように」。ミモザは、初夏に咲く黄色く小さな花で、花言葉は「優雅」「友情」、そして「感謝」。ヨーロッパでは「春の訪れを告げる花」としても愛されている。

♪いつか きっと いつか きっと 歌いつづけて 
素敵な時代 引き寄せて 明るい明日になるはずだから

2020年はエンタテイメントに生きる人間にとって、特に困難な一年だった。この時代にステージに上がり、人に何かを伝え、届けること。普遍的ではあるが、奇しくも現在の状況とリンクするような歌詞に引き込まれる。

少女歌劇団ミモザーヌ、11月15日に行われたお披露目ショーケース

さまざまな思いが胸に込み上げてくるのだろう。ステージ上の少女たちの中には涙を流す子もいた。

“なぜ少女なのか”と考えつづけた」

お披露目のステージが終わると、カンパニーの総合演出を務める広井王子氏が登壇した。2.5次元ミュージカルの源流のひとつともいえる『サクラ大戦』シリーズを手がけた舞台芸術のプロフェッショナルで、ミモザーヌでは楽曲の作詞も手がけている。

プロジェクトが発足したばかりのころは、コンセプトもまだ定まっていなかったと広井氏は振り返る。

「2019年の春、メンバー全員を集めたときに『こりゃだめだ』と思いました。本当にレビューなんか作れるのか、不安になってやめようかとさえ思った。そんな中でみつけたのが(いわなみ)ゆうかでした。でたらめだけど、踊らせるとこんなにも楽しいのかという表情をしていて、キラキラしたオーラが見えた。

“これだ”と思いました。一人ひとりの個性を引っ張り出そうと、そう考えた。一人ひとりにとことん向き合って、できなかった子が1年後にできても素晴らしいし、できる子が明日できても素晴らしい。それらをすべて評価してイチから作っていこうと方針を変えたんです」

メンバーと向き合うためにやったことが、ノート交換だ。

「日々のレッスンを記録して、自分たちの課題、反省点、感想、食べてるもの……それを毎日ノートにつけてもらいました。月に1度回収して、全員ぶんを見て返事を書きました。“なんで学校に行くんですか?”など、大人が答えられない質問ばかり。でも、それも一緒に話し合いました。

舞台に活かせるものは、すべて活かしています。私も、みんなと顔をつき合わせながら、改めて“レビューとは何か”“少女歌劇団とは何か”“なぜ少女なのか”と考えつづけ、ようやく整ってきました」

少女歌劇団ミモザーヌ
少女歌劇団ミモザーヌ、11月15日に行われたお披露目ショーケース

会場で配られたパンフレットによると、広井氏はオーディションの段階で、アイドルになりたいという子はすべて落としたそうだ。『“アイドル・グループ”ではなく、“少女歌劇団”を作るのです』と決意を語っている。

「卓球もフィギュアスケートも小学生から始めて、中学生で世界を獲りに行く。なぜエンタメだけそれがダメなのか、そう思ってしまった。そのために、肉体訓練を徹底してやろうと考えました。

レッスンは基礎の基礎で本当につらかったと思います。先生に体幹トレーニングとストレッチを組み合わせたメニューを考えてもらい、月曜から金曜のレッスンのあと、毎日必ずやってもらいました。

最初は言われていることの意味がわからなくても、体ができていくと、いろんなことができるようになってくる。そうして得たものは自分たちで発見したものです。笑顔になれといっても、笑顔は教えらません。厳しいレッスンの中で達成感を得て、舞台の上で楽しさを自分たちで作っていく。舞台が楽しくなければ、笑顔にはなれないんです」

少女歌劇団ミモザーヌ
少女歌劇団ミモザーヌ

ミモザーヌはスタートを切ったばかりの少女歌劇団だ。ミモザの花はつぼみの状態から半年近くもかけて小さく丸い花を咲かせる。そんな芽吹きの瞬間に立ち会えたことはこの上ない喜びである。

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森野広明

(もりの・ひろあき)1980年生まれ。ライター、編集者、動画編集者。主に、『週刊SPA!』『TV Bros.』『サイゾー』などに執筆。ものまねウォッチャー。

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