和田彩花×ミキティー本物、アイドルの“多様性”って何?
「自分のために生きていい」「ゲイだからって諦めなくていい」

2020.10.2


TIFはずっと目指していた場所だった

和田 私と似ているようで、似ていないのがおもしろいですね。ミキティーさんは、自分が理想とするアイドル像のために自分を律して、私は拘束・抑圧されていたから、開放する方向に向かっていく。それぞれの立場や思いの違いで、表現する方向が変わるんですね。

ミキティー 私は自分がゲイであることを隠していたときのほうが拘束されていたからかな。ゲイであることを公表して、「セクシャリティは関係なく、ミキティーが好きだよ」って言ってくれるファンがいる今のほうが、開放されているんです。

みんなで最高のアイドルになろうって決めたルールだから、愛おしく感じる。自分たちで決めたからっていうのもあるんだと思います。

――2017年には、二丁目の魁カミングアウトが世界最大級のアイドルフェス『TOKYO IDOL FESTIVAL』(以下TIF)に出演しました。アイドル業界の多様性を広げる出来事だったと思います。

2020年1月8日『二丁目の魁カミングアウト ワンマンライブ「ゲイでもアイドルになれる!」in 中野サンプラザ』より(撮影=タマイシンゴ)

ミキティー それまでにもいろんなアイドルフェスに出させていただいたんですけど、TIFにはなかなか出られず、ずっと目指していた場所でした。

TIFに出るための手段としては、ファンの人たちからのポイントを競うオーディションもあったけど、ファンの方に負担を強いる活動はしたくないので、そこには参加したくなかった。私たちがアイドルだと認められて、TIFから声をかけてもらえるまでがんばろうって決めていたんです。

毎年みんなで「今年は行けるかな」って期待しながら、ダメだったときには「来年またがんばろう」って言いつづけてました。出演が決まったときには本当にうれしかったし、みんなで「やっと壁を壊せたね」って言い合ったのをよく覚えています。ファンの人たちもすごく喜んでくれて、お祭りみたいになってましたね。

――今振り返ってみて、ゲイアイドルがTIFに出演したことの意味をどう捉えていますか?

ミキティー 私たちは、将来的には「ゲイアイドル」なんて言葉が存在しない世の中になったらいいと思っているんです。性別をあえて規定しないグループがたくさん出てくれば、「ゲイアイドル」が特別じゃなくなって、そんな言葉もなくなるんじゃないかって。だからTIFに選んでもらえたのは、その目標に一歩近づいた瞬間だったと思います。TIFが、アイドル業界が豊かになるきっかけのひとつになってほしいですね。

ファンのためではなく、自分のためにアイドルをつづける

――「アイドル=若い子がやること」というイメージも根強い女性アイドル業界ですが、近年ではAKB48の柏木由紀さんの「30歳まで卒業しない」宣言や、NegiccoのNao☆さん、Meguさんが結婚後もアイドルをつづけることに支持が集まるなど、年齢や結婚を気にせず、応援しつづけるファンも数多く存在します。

和田 年齢は関係なく、誰でも自分のありたい姿があります。何歳になっても、結婚をしてもアイドルをつづける選択や、それが支持されることは素晴らしいと思いますね。

ミキティー 私も、アイドルに年齢は関係ないと思うし、Nao☆ちゃんとMeguちゃんの選択は素敵で祝福したんだけど……。このふたりの場合はアイドルとして、人として真っ当に活動してきて、いろんな人の支えになっていたからこそ、結果的に結婚してもみんなから祝福されただけ。誰もが結婚してもアイドルをつづければいいわけじゃないとも思っています。

私はなっち(元モーニング娘。の安倍なつみ)が大好きで、彼女が結婚しても、私の中では永遠にアイドルだから。アイドルって、いくつになっても、結婚しても自分の心の中に宿りつづける。

真摯に活動をしたかどうかで、ファンや世間の反応も違うはず。応援する側の意見としては、まだまだつづけてほしいのに!って思ったアイドルが辞めてしまった経験があるからこそ、あやちょが今もアイドルをつづけていることはファンもうれしいだろうし、ほかのアイドルたちにとっての希望にもなっていると思います。

――和田さんは、ミキティー本物さんが語ったような「ファンの期待に応える」という考えもあったのでしょうか。

和田 アイドルという職業や女という性別で縛りがあったので、その延長線上にある期待に応えるのは難しいです。大勢の人が求める「アイドル」をつづけるとしたら、恋愛はたぶん禁止だし、それ以外にもいろんな不自由があると感じてしまう。

むしろ、自分のために生きていいという選択肢を提示したいですね。100%すべてファンのみなさんのためにアイドルをつづけるのではなくて、むしろ自分がやりたいからやっている。

私の考えを肯定してくれるファンの方はアンジュルムのころからたくさんいて、すごく暖かく感じていました。ソロになって、この姿勢を表明してから応援してくれるようになった人もいて、心強く感じます。

2020年8月1日『和田彩花ライブ「2020 延期の延期の延期」』より
2020年8月1日『和田彩花ライブ「2020 延期の延期の延期」』より

ミキティー ファンとしては、アイドルが自分を押し殺す姿は見たくない。私も、昔は無理におもしろく振る舞っていたけど、本当はめちゃくちゃ暗いタイプで。その部分をさらけ出したときに、「自然なミキティーのほうがいいよ」ってファンの人が言ってくれた。だから、今のあやちょのあり方はすごく自然で素敵だし、ファンの人たちもうれしいと思います。

「多様性」という言葉が独り歩きして正義になるのは怖い


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森 ユースケ

(もり・ゆーすけ)1987年生まれ。東京都出身。毎日ウルトラ怪獣のTシャツを着ているライター/編集。インドネシアの新聞社勤務、国会議員秘書、週刊誌記者を経て現職。近年は企業のオウンドメディア編集も担当。オリックス・バファローズファン。

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