しっかり見せたほうが、心から笑えるものになる
――M-1で2年連続準優勝となった2017年の決勝ネタは、1本目が「ウェディングプランナー」、2本目が「旅館の仲居」でした。優勝したとろサーモンさんは1本目が「旅館」のネタでしたが、番手が後だった和牛さんが、かぶりを避けたのではという説を耳にすることもありました。
水田 1本目に「旅館の仲居」をやっても、そんなにウケへんやろっていうだけです。あれはよりグッと入りこんで見てもらわなあかんネタなので、1本目でわかってもらってからやるべきやろなと。
――和牛の楽しみ方や世界観を。
水田 たしかにシチュエーションのかぶりはありましたけど、それ以外はまあ全然違うネタやし。
川西 うん。
――予選からすべて違うネタで勝負したのも、和牛さんならではの闘い方でしょうか。
水田 あれはもともと全部長いネタだったんです。長いときはどれも楽しんでやれてたんですけど、M-1の尺に合わせて短くしていったときに、なんかやりにくいなあってなって、変えたっていう。準決勝終わってから、ふたりで大慌てで。
川西 僕らからしたら、バタバタと変えたというか。勝つためになにがいいかを考えたらそうなったというか。
水田 その結果、決勝の2本に関しては、おもしろさを残したまま短くできるなと。「旅館の仲居」なんて初めてやったときは17~18分あったと思う。
川西 「伝える」ことに重きを置いて、細かい部分まで意識していくと、必然的に長くなるのかもしれないですね。
水田 だから短いネタ苦手なんですよね、僕らは。しっかり見せたほうが、心から笑えるものになるなあっていう気持ちがあるんで。
和牛の漫才は、ものすごく精度の高い、芸として緻密に作り込まれた表現なのに、全然敷居が高くない。小難しい感じが少しもなくて、一見さんでもそのまま入っていけるような優しさがある。個人的にずっと「漫才」が苦手だった理由のひとつは、早口の大声でまくしたてる大阪弁でのケンカ調スタイルだった。怖い。どうしてわざわざ人前に立ってケンカをしているのだろうと思っていた。
水田 もしそれがおもしろかったら、怖いとは思わないわけですよ、ケンカしてても。ということは、おもしろく見せられてないこっち側の責任なんです。完全にやる側の責任です!
川西 ツッコミで相方を叩いたりすると、たまに、悲鳴が上がったりするんですよ。だけどこいつ叩かれてもしょうがないなーっていう奴をネタの中でちゃんとプレゼンしきれてたら、それも痛快なはずなんですよね。
――前からあるネタでも、今のおふたりがやっているほうが、当たりが柔らかい気がします。それは伝えること、わかりやすさを意識しての結果でしょうか。
水田 それもありますし、ふたりのネタ作りの雰囲気そのものも多分変わってきてます。5年より10年一緒にいたほうが、人間としてのつながりが濃いじゃないですか。だから昔の台本を今そのままやってもなにか違ってくる。余分な力がだんだん抜けてきているのかもしれないですね。
川西 仕事の拠点を大阪から東京に移したりなんやで広い世界に出たときに、本当のチームってここ(水田と川西)だけだと思うんですね。
水田 うん。
川西 だからここのチーム感は、強くはなっていってるのかもしれないですね。
ずっとふたりでやってきた。ふたりにしかできないことをやってきた。そのふたりの夢は今、みんなの夢になりつつある。2018年2月現在、漢字で「和牛」を検索すると、芸人「和牛」のプロフィールがトップに出てくる。牛肉よりも先に。これはかつてふたりの夢だった。本命視されながら3度目の王手に挑む今年の和牛には、苦節何年悲願の優勝、でもなく、そこへ至ることなく辞めていった者たちへのはなむけ、でもない現在進行形のドラマがある。
水田 去年も一昨年もM-1のことはすごい考えてましたけど、M-1に振り回されたらアカンというのは、ふたりともわかってましたから。たかがM-1、されどM-1、ぐらいの気持ちでいないと、うん。賞レースのために生きてるわけではないから。
――優勝のはるか先に見ている和牛としての夢はなんですか?
水田 おじいちゃんになっても漫才やってたいですね。
川西 僕は「伝説級の漫才師」ですね。後世に残るぐらいのが理想です。僕らよりずっとあとの時代に漫才をはじめる若者が、過去の漫才をさかのぼって見つけて衝撃走るような。そういう存在になれてたらいいですね(笑)。
水田 僕らが今のモチベーションでおじいちゃんになるまで続けてたら、たぶん、なれると思うよ。
川西 伝説級に。
水田 うん。
川西 うん。そうやね。
和牛(わぎゅう)
お笑いコンビ。2006年結成。史上初の3年連続M-1準優勝という記録を持つ。理屈っぽい水田のキャラクターをいかした、ストーリー性の高い漫才はお笑いファンからのみならず、幅広い支持を集める。DVD『アキナ・和牛・アインシュタインのしゃっふるゆるゆる旅 のはずが…~時間制限アリ!編~』(よしもとミュージックエンタテインメント)発売中。
-
『和牛のA4ランクを召し上がれ!』
和牛の単独冠番組であり、「リアル・身近・おもしろい・体験」をテーマに愛媛県内を巡るロケバラエティ「和牛のA4ランクを召し上がれ!」。
過去の放送を厳選したベストセレクションが発売。
充実の予約・購入特典も決定!【対象店舗限定各巻特典】生写真(3枚1セット)
【Amazon限定各巻特典】ビジュアルシート+生写真(3枚1セット)
【楽天ブックスBOX限定特典】コルクコースター(2枚1セット)<商品情報>
「和牛のA4ランクを召し上がれ!」Vol.1〜3 各¥3,300円(税込)
「和牛のA4ランクを召し上がれ!初回生産限定BOX(DVD3巻+番組オリジナル<おれのあいかた>Tシャツ)」¥12,100(税込)関連リンク