バッテリィズ×エバース『M-1』を代表するコンビへ「東で一番、西で一番のしゃべくり漫才師になりたい」

2025.2.8
バッテリィズ×エバース

文=釣木文恵 撮影=澤田詩園 編集=梅山織愛


天真爛漫なエースのキャラクターが活きる漫才を数年かけて仕上げてきたバッテリィズと、2023年の『M-1グランプリ』敗者復活戦で注目を集め、「2024年は決勝進出間違いなし」と周囲から期待がかかっていたエバース。ふた組は2024年の『M-1グランプリ』で初の決勝進出を果たし、完璧な“しゃべくり漫才”を披露した。

普段は東京・大阪と異なる拠点で活動しているふた組だが、2024年2月から月に1回のペースでツーマンライブを開催している仲。改めて『M-1』当日の心境から、再びひとつしかない王座を争うこととなる2025年大会に向けての目標を聞いた。

2月17日(月)より発売となる総合カルチャー誌『Quick Japan』vol.176には、バッテリィズ×エバースの対談インタビューのアザーver.を掲載。

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バッテリィズ×エバース

『M-1』後、優勝したくらいの反響が

エース これは、あれですか? 答えたほうがいいですか?

寺家 答えるのだけは、せなあかん(笑)。

町田和樹(以下、町田) 僕は有名人になった気分っすね。かなり顔さされますし。だからまだ「楽しかった」という感覚っすね。

佐々木隆史(以下、佐々木) 僕ら結果的には4位でしたけど、会う芸人会う芸人みんな褒めてくれるし、人によっては「おめでとう」とか言ってくれるので、そんなにいい感じで映ってたんだなと思ってうれしいです。

寺家 僕はネタのかたち的に、決勝に行ったら一発で(タイトルを)獲らないといけないと思ってたので、けっこう悔しさもあるんです。ただ、1本目の点数が出たときに「間違ってなかったんや」というのが証明されたなと思って、そのうれしさが上回ってますね。僕もあまりにもみんなが「おめでとう」と言ってくれるので、優勝したんちゃうんかなと思うくらいです。

エース うれしかったです!

寺家 以上?

エース うん。悔しかったのは優勝できなかったあの一瞬だけで、みんないっぱい観てくれたから、それだけでいいかなって。

バッテリィズ×エバース
純粋すぎるキャラクターをお茶の間に焼きつけたバッテリィズ・エース

最終決戦は16人で漫才してる感覚

町田 口には出さなかったですけど、2番手と3番手はマジで来ないでくれと思ってました。令和ロマンのあとは嫌だなという感覚は全員あったと思います。

佐々木 僕は最初、「トップバッターでも全然いいや」という気持ちでいたんすけど。

町田 えー、マジ?

佐々木 令和ロマンがすっごい盛り上がってたのを見てからは「このあと出てったらザコ扱いされそう」とすごい不安になりました。

バッテリィズ×エバース
エバースのネタ作りを担当し、主導権を握る佐々木隆史

寺家 僕はまず5番目以降がいいなと思ってたんです。そしたら前年優勝の令和ロマン、準優勝のヤーレンズさん、さらに真空ジェシカさんまで行って「もうちょっと待ってくれ」となりました。これは5番目でもあかん、6、7番目以降がいいと。

エース 僕も後半がいいなと思ってました。でも令和ロマンのトップは逆にありがたかったかもしれないです。あのおかげでなんかすごい大会が楽しそうになって盛り上がったので、最高でした。

佐々木 たしかにお客さんの緊張感はなくなった感じありましたよね。

エース お祭りになった。

寺家 お笑いライブで見たことないくらい沸いてました。

寺家 よっしゃと思いました。

エース 僕はもう4番目くらいから集中力が切れてきて、「いつでもいいから、はよ漫才をさせてくれ」という気持ちでした。

町田 一緒にやってきたからおもしろいのも知ってるし、そりゃウケるだろうけど、ちょっとやりすぎだなと思いました(笑)。

バッテリィズ×エバース
『M-1』決勝では完璧なパフォーマンスを披露したエバース町田和樹

佐々木 バッテリィズさんが出るまで漫才コントが続いてたから、僕らでもバッテリィズさんでも、今出たら絶対トップ3に入るなって思ったんすよ。だから正直バッテリィズさんより先に呼ばれたかったんです。そういうことを考えてたので、バッテリィズさんが呼ばれたとき、僕ら「がんばってください!」という顔、全然できてないですもん(笑)。いざ行ったら、トップ3どころかむちゃくちゃ高い点出して。

エース あれはだいぶラッキーやった。

エース いやもうあのときの僕を見てくれたらわかると思います。ほんまにただただうれしいだけで。

寺家 セット壊れるかってくらい飛び跳ねてたもんな。でも僕は暫定ボックスに行くとき、「次エバースやったらこのまま超されるかもな」と思ったよ。

町田 あんなウケたあとに思いました?

寺家 俺らが出てしゃべくりの空気になったし、エバースってネタの後半どんどん盛り上がっていくから、町田がハマったらえぐいやろうなと。

町田 そんなこと思ってくれてたんだ。俺はもう「誰か挟んでくれ」としか思ってなかったですよ。このエースさんの勢いはもう塗り替えられないと。うしろであの盛り上がり見てたらマジで震えますよ?

佐々木 間にコント漫才のママタルトさんが入ったことで「よかった、これでフラットな目で観てもらえるかも」と思いました。

寺家 エバース10番手もありそうやったよな。

佐々木 いや、9番目でよかった。

町田 トム・ブラウンさんのあとに登場するのは2023年の敗者復活でもうこりごりだったので(笑)。

佐々木 真空ジェシカさんを超えてたかといわれたらかなり微妙なとこだな、と思っていたので、点数が出たときも「やっぱこれくらいか」と思いました。

町田 「どっちだ、これ?」って冷静に思っちゃいましたね。「もうちょっとウケてれば」くらいの感覚で。敗退が決まってからは、もうあとはバッテリィズさんに獲ってほしいとマジで思ってました。

エース あのとき、あの場に令和ロマンを応援してる人は誰もおらんかった。

町田 さすがにね。こっち側には(笑)。

寺家 今後優勝したとしても、2連覇したやつおると思うとな……。

エース だから最後、僕の中では16人ぐらいで漫才してました。

佐々木 ……あ、みんなの思いを背負って?

エース そう、透明のほかの演者がいるみたいな感覚。

寺家 今後の漫才師たちのためにも令和ロマンに勝たないと、というプレッシャー。叶いませんでしたけど。

バッテリィズ×エバース
謎に包まれたキャラクターに注目が集まっているバッテリィズ寺家

“バテエバ”として切磋琢磨してきた2024年

寺家 僕が前からエバースが好きで、動画とか観てたんですよ。最初にしゃべったのはふたりが「武者修行」というかたちで4泊5日で大阪に来たとき。

町田 知り合いが誰もいないなか、唯一、寺家さんが話しかけてくれて。

佐々木 「話す」と決めてなきゃおかしいくらい速攻で話しかけられました。

寺家 前の日から決めてたもん。「絶対この日しゃべりかけよ」って。

町田 モスバーガー連れて行ってもらいましたよね。

寺家 まだ大阪で誰とも飯行ってないって言うから、ぎょうぶの澤畑(健二)と4人で行って。そのときからいつか一緒にライブができたらええなとは思ってたんですよ。

町田 あれ、いつでしたっけ?

寺家 2023年の夏。

町田 お互い初めて敗者復活に行くより前ですもんね。大阪で僕らを気遣ってくれる先輩って感じでありがたかったです。

寺家 むっちゃ感謝してくれてるから、超ラッキーでした。

エース 僕は人のネタをほんまに観ないんで、なんにも知らなかったんですよ。

町田 エースさんと初めてしゃべったのは、2023年の『M-1』敗者復活戦の喫煙所だったと思います。

エース そう。そのときもネタ観たか覚えてないくらいですけど、大阪でもほんまにみんなが「おもしろい」って言ってたんで、ツーマンが決まったときは「ありがとう」と。

町田 「ネタを観てみよう」とはならなかったですか。

エース そうやな。俺、友達のネタしか観れんから……。

寺家 敗者復活の動画も上がったけど、『ケンタウロス』(エバースが2023年の敗者復活戦で披露したネタ)のネタ観んかった?

エース ケンタウロス……? 絶対観てないわ。

佐々木 バッテリィズさんとのツーマンで『ケンタウロス』をやったとき、エースさんが「あのネタめっちゃええやん、『M-1』でやったらええやん」と言ってくれて。

町田 もう、やったんすよ(笑)。

エース ほんまめっちゃおもしろかったから。こんなおもしろいやつらとツーマンできてラッキーでした。

寺家 ほんまにありがたかったです。最初は、僕らのライブにゲストとしてきてくれるかたちやったんです。そしたら「毎月でもいいです」と言ってくれて。

町田 僕ら、ふた組とも野球をやってたというつながりもありますし、単純に尊敬している先輩と大阪でやらせてもらえるというのもでかかったですね。

バッテリィズ×エバース
全員が野球経験者の4人

エバース「春夏秋冬しんどかった」

寺家 エバースは決勝に絶対行くという大方の予想があったと思うんですけど、自分らとしてもラストイヤーくらいの気持ちで行かんと、というのがあったので。どっちも決勝に行くという算段で始めたライブではあります。東で一番のしゃべくり漫才と、西で一番のしゃべくり漫才になりたいという気持ちで。

佐々木 実際ツーマンをやってみると、バッテリィズさんってどのネタもめっちゃウケるんですよ。それを見てると、スベりたくなくなる。毎回「バッテリィズのほうがおもしろかったな」と思いながらお客さんが帰ったら嫌だなと思って、ムキになったりして。ネタをやる気はすごく育てられました。

寺家 それは俺も同じこと思ってたよ。

町田 春夏秋冬、全部しんどかったっす。

寺家 せやな。ほんまにかわいそうなくらい期待されてたもんな。

町田 佐々木はネタ作りしてるぶん、もっとしんどいですよ。ただ、佐々木は自分で作ってるから、最悪ミスってもいいじゃないですか。でも僕は、佐々木に作ってもらってる立場だからネタをミスれない。なのに、噛んだり飛ばしたりしてぐちゃぐちゃな日もありましたし。

佐々木 まあでも、なんとか転ばずに走りきったなって感じですかね。

寺家 ほんまにすごいよ。

町田 決勝進出者発表のとき、僕らは先に呼ばれて、最後にバッテリィズさんが呼ばれたんで、ふた組で行けた!と、もうシンプルに心からうれしかったです。

佐々木 僕はもういっぱいいっぱいで、バッテリィズさんが呼ばれたとき「あ、まだ呼ばれてなかったんだ」と思いました。

寺家 準決勝から発表までの間に僕、カベポスター永見(大吾)と佐々木とご飯行ってたんですけど、佐々木がむっちゃ暗くて。

佐々木 ふたりに連れて行ってもらったんですけど、僕が決勝行けたか不安すぎて、頼んでもらったピザをため息つきながら食べてて。

寺家 1枚3000円のピザを「はぁ……」とか言いながら。永見が「俺に失礼やろ」と言うくらい佐々木は追い込まれてたんです(笑)。だからエバースが呼ばれたとき「呼ばれてるやんけ」と思いました。僕らは最後に呼ばれたのでもう余裕なくて「あ、どうやら入った」って感覚でしたね。

エース エバースが先に呼ばれたの聞いて、とにかく決勝直後のふた組のライブ(『バッテリィズとエバース』)で気まずくならないために絶対俺らも呼ばれてくれ!と思ってました。ふた組とも行けて、ほんまによかったです。

次の『M-1』でもふた組そろって決勝へ

バッテリィズ×エバース
これからもツーマンライブを開催していく予定だというバッテリィズとエバース

町田 2025年もふた組で戦うことになると思うんで、ツーマンライブでこの1年バッテリィズさんよりウケたなって思える瞬間を増やしたい。バッテリィズさんは勢いあるけど、俺らも負けてねえぞ、このときのライブは俺らのほうがウケてたけどな、といういい関係でやれたらいいっすね。

佐々木 2025年の『M-1』決勝の最終決戦にふた組で残って、次は僕らが1位通過したいっすね。

佐々木 優勝もどっちかがしますけど。

町田 取り合うしかないです、そこは。

寺家 でもさ、エバースの4位って、次を考えたら最高の状態よな。

町田 ネタを2本やってない利点はありますね。

寺家 初決勝4位で翌年優勝した錦鯉さんパターンやん。まあエバースはもし2025年に獲れんかったとしても、絶対ずっと決勝には行くくらい全ネタおもしろいんで、僕らはなんとかそこに食らいつかないと、という感じですね。ここから数年間、『M-1』をこのふた組でめっちゃ盛り上げて、10年後ぐらいに「あの一時代を築いた人たち」としてツーマンやるのもちょっとええなとか思う。たとえば今、和牛さんと銀シャリさんがツーマンするような感覚で。

エース ごめん、これどういう質問やったっけ?

町田 2025年の目標です。

エース 目標ですか。それはもう、2025年もまた一緒に決勝行きたいですね。エバースはまた行くと思うんで、僕らも絶対行くぞっていう気持ちでがんばっていきます!

町田 個人の目標か……。

佐々木 「彼女作る」?

町田 そうっすね、彼女作る(笑)。いやいや、『M-1』でちょっと知っていただけたかなと思うんで、もっといろんなところで、いろんなお客さんの前でやってみたいなっていうのはあります。

佐々木 僕は、おもしろいネタを作りたいですね。

寺家 それはそうやな、言っとかんと忘れるからな。僕、今回の『M-1』でこの3年分くらいを詰め込んだネタを出した感覚なんです。だから次は1年で3年分の新しい何かを考えないと。エースがテレビに呼ばれたら、それを観て新しいかたちを作らないと。アホがツッコんでるというかたちでもう1本新しいシステムを作って、また『M-1』の決勝に行けたらむっちゃ気持ちいいやろうなと思います。

エース 僕は次の決勝まで自分のおもしろさを保って、「この人おもしろい人間やな」と思ってもらえるようにがんばりたいですね。

町田 バッテリィズさん次第ですね。僕らはもちろんやりたいですけど。

寺家 もちろん。これまで以上にいろんなところでツーマンをやりたいなと思います。

『バッテリィズとエバース』
2025年2月17日(月)開場19:15/開演19:30/終演20:30
オンラインチケット:1,200円(税込)
オンラインチケット情報はこちら

『エバースとバッテリィズ』
2025年3月11日(火)19:00開場/19:30開演/20:30終演
場所:ルミネtheよしもと
チケット料金:前売3,000円(税込)/当日3,500円(税込)配信2,000円(税込)
販売URL:https://ticket.fany.lol/event/detail/927

エバースとバッテリィズ_ルミネ

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Written by

釣木文恵

(つるき・ふみえ)ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。

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