創作のエネルギーの源は“食”

昼も夜も音楽のことを考えられる環境に身を置き、ジャンルレスな楽曲を発表し続けるedhiii boi。東京でできた仲間たちとの関係も大きく影響しているらしい。そんな彼の創作のエネルギーの源は“食べること”なのだという。

──edhiii boiさんが日常生活を送り、音楽活動をしていく上で、“仲間”の存在とはどういった位置づけですか？

edhiii boi　僕はもともと人間関係の構築が不得意です。自分の言動で相手がストレスを感じているのではないかとか考えてしまうので、リラックスした状態でコミュニケーションが取れない。それに地元で音楽をやっているのは当時、僕のまわりにはほとんどいなかったので、共通言語が少なかったのも原因かもしれません。なので東京に出てきてから交友関係が広がりましたし、目の前の世界も一気に開けました。そこでは年齢なんかも関係ないですからね。僕のことを気にかけてくださる先輩も多く、ここで生活していくことを思うとワクワクしたのを覚えています。

──東京での生活でいえば、寝ても覚めても音楽のことを考えられる環境というのも大きいのではないでしょうか？

edhiii boi　本当にそうですね。朝から晩まで音楽と共存できている状態です。どこへ行っても音楽が鳴っているし、自分の呼吸すらも曲のBPMにつながる感覚がある。なのでもとはインドアタイプですが、積極的に外に出ていくことを心がけています。そんな生活を送っていると、自然とビートやリリックが生まれてきたりもするんです。聴くものも特定のジャンルに縛られていません。僕自身もジャンルの枠組みから飛び出していける音楽を作りたいと思っていますから。

──本当に恵まれた環境で日々を過ごせているのですね。

edhiii boi　環境の話でいえば、所属しているBMSGのアーティストとの関係もそうです。優しいお兄ちゃん的な存在ばかりで、年下の僕に対して誰もがフラット。いつも気にかけてくださいます。一人ひとりが音楽の世界における先輩であり、“仲間”というよりも、“家族”というほうがしっくりきます。みんなが顔を合わせる機会はめったにありませんが、どこにいても心はつながっている。これって家族的な関係だなって。そんな中でもよくプライベートで会っているのは、BE:FIRSTのJUNONくん。彼とはリズムやペースが合うので、特に自然体でいられるんです。

──そんな環境下での創作のエネルギーの源はなんですか？

edhiii boi　食事です。食べるものだけは好きなだけ手を伸ばそうと考えています。量ではなく、食べたいものを我慢せずに食べるということです。東京に出てきてから誰かと会う際、ご飯を食べに行きます。そこで好きなものを食べながら、気持ち的に満たされたリラックス状態で言葉を交わすんです。おいしいものを食べているときって、素直な気持ちが出てくると思うんですよ。その帰り道まで幸せですしね。食べ物が音楽に直結するわけではないですが、食事の時間を通して誰かに言われた言葉が刺激となって、クリエイションにつながってきたりするんです。

──意外な答えでした。でも改めて考えてみれば当然ですよね。食は生きていくための糧でもありますもんね。

edhiii boi　いろんなお話をする中で仕事や音楽の幅が広がっていくのはもちろんですが、僕の世代の学校給食はコロナ禍で黙食だったので、その反動もあるのかもしれません。誰かとの食事とコミュニケーションはセットです。影響を受けているカルチャーに関しては、やっぱりファッションへの興味が強くありますね。今はお世話になっている方が働いているお店でよく服を買っています。その方との出会いが、また僕の世界を広げてくれました。ちなみに「カメレオン」はとある映画にインスパイアされていますが、今のところ小説や映画に影響を受けて楽曲が生まれたのはこれくらいですね。創作の種は、やっぱり日常にあると感じています。

変化する音楽との関係

edhiii boiは音楽そのものだけを考えるのではなく、自身と音楽との関係についても思考している。デビューから2年を経た今の関係はどのようなものなのか。そして、17歳の高校生ラッパーである彼の今後の展望とは。

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──現在の活動につながるような、音楽との出会いはどんなものでしたか？

edhiii boi　地元でダンスレッスンに通っていたときにヒップホップのクラスでUSヒップホップを耳にして、衝撃を受けました。それからレッスンのたびにボイスメモで録音してはあとで調べる、そんな日々を送っていました。ダンスはダンスで夢中になっていましたが、音楽はまた別で。音楽は掘れば掘るほどおもしろい。クラシックも聴きますし、ジャズのライブにも行ったこともあります。特定のジャンルを突き詰めていく人への憧れもあるのですが、僕は、自分の好きなことややりたいことを追求していたら自然とジャンルレスなものになってきた。今後はもっと自分のやりたい音楽を押し出していけたらと。純度の高いものを作りたいんです。

──今のedhiii boiさんと音楽の関係は？

edhiii boi　今までは音楽が寄り添ってくれていたけれど、最近はどんどん遠のいていっている感覚があります。だから僕のほうから寄り添っていかなくちゃいけない。生活の一部ではあるんですけどね。憧れて聴いていたときと、作って発信するようになってからでは、音楽との付き合い方が違います。たとえば美容師の方だったら、技術面以外のことを考えないといけませんよね。どんな接客の仕方をすればお客さんが気持ちよく過ごしてくれるか、とか。そんなふうに、今までは考えなくてよかったことを考える毎日です。これから活動を続けていけば、立場も考え方も変わってくるはず。ただ音楽のことだけを考えるのではなく、ひとりの人間としてどう生きていくか。これを大事にしていれば、今よりもっといいものが見えてくるんじゃないかなって。

──それでは最後に、2024年の目標を教えてください。

edhiii boi　音楽番組にもっと出てから成人したい。高校生のうちに出るというのが重要なんです。もしも達成することができたら、いろんな人に勇気を与えられると思うんです。独りぼっちで音楽を作っていた僕でも、ここまでくることができたって。一人ひとりがその可能性を持っているはずだと示したいんです。