Suchmos・YONCEが、地元から離れない理由を語る

2020.1.15


世間に寄せず自分を保てる場所

ここからYONCEの音楽活動は本格化していく。藤沢のライブハウスで出会った仲間と「OLD JOE」を結成。7年もの間、精力的な活動を続けるが、2015年夏に解散。YONCEにとっては高校2年生から生活の主体だったバンドだけあり「青春そのもの」だったという。OLD JOEの活動末期と重なるようにして、Suchmosが結成される。当時から今に至るまでYONCEを除くメンバーは全員・横浜市在住。YONCEは一貫して、「地元」のバイブスを共有する仲間たちと活動を続けてきた。

―――Suchmosを結成してから生活は変わりましたか。

YONCE Suchmosは2013年に結成して。メンバーとは横浜で出会いました。自分が横浜にいた頃は全員のメンバーがバスで行き来できるような距離に住んでいて、家で膝を突き合わせて曲作りとかしてました。ただ、このふたつのバンドを一緒にやっていた時はバイトも掛け持ちしてたし、とにかく大変でライブ終わって夜勤に出て、その後、蕎麦屋のバイトに行くみたいな経済的にも時間的にもイカツイ生活でした……。

―――それでも、都内に拠点を移してライブ活動をやりやすくしようとは思わなかった。

YONCE うーん……移り住んでもよかったんですけどね、職場も自由が丘だったし。でも、OLD JOEで下北沢や渋谷でライブをやるようになった18とか19ぐらいの頃から「東京はいいや」って思い始めてて。東京にいると何もかもが慌ただしくて、このままだとものすごいスピードで老けてくんだろうな、と思ったんです。渋谷の東急東横線を出たところの雑踏とかに嫌気がさしちゃったんですよね。「俺、アリンコかよ!?」って。茅ヶ崎が特別そうなのかもしれないですけど、自分の「地元」は自分の時間を大事にして暮らしている人が多くて。世間に対して自分を寄せない、無理して暮らしていない人が多いと思います。

仲良しメンバーは、 左からHSU(Ba)、YONCE(Vo)、 TAIHEI(Key)、TAIKING(Gt)、KCEE(Dj)、OK(Dr)の6人

―――横浜での一人暮らしを経て、地元に戻ってきてそれは特に感じますか。

YONCE 横浜も割とせわしないですけど、やっぱり東京とは全然違うなって思います。もちろん僕も東京に仲のいい奴がいなかったわけじゃなくて。そいつらはいい大学を出て社会に順応しながら音楽活動をしている人たちだった。でも、なんかしっくりこなくて。地元の友達は、仕事が嫌だとかそういうことではないんだけど、それぞれ明確に闘ってて。例えば、会社員やりながら競艇選手を目指していたり、あるいは、仕事帰りに逗子マリーナに寄ってマリン・スポーツを楽しんでたり。「自分の時間こそが本当の人生だ」ってことを大切にしている。「お前らも実は同じこと思ってたんだ!」ってことに気付いてうれしくなりました。

地元にいると、世の中を引いた目で見ることができる

一歩引いたスタンスで冷静に物事を観察し、何が大事なのかをきちんと考えること。それは自分自身の時間を大切にすることに他ならない。大都市の混沌の只中にいると気付かないものを、神奈川県茅ヶ崎市という絶妙な位置からYONCEは見据えていた。そして、彼の表現はその価値観を共有する仲間たちによって支えられている。その強靭なグルーヴはたとえ将来的にYONCEが地元を離れることがあったとしても揺るがないだろう。彼の心の拠り所は、いつだってここ茅ヶ崎にあるのだから。

―――「地元」にいると表現がローカルなものになってしまうという危機感はありませんか。

レペゼン茅ヶ崎のYONCE。 2016年1月に「LOVE&VICE」を発売。

YONCE 逆にこっちにいるとある程度引いた目で世の中を見れる気がする。実際、地元にもレゲエとかレベル・ミュージックをやってる人たちは多くて、その人たちの歌っていることはストレートに放送禁止レベルで。自分たちも同じようなことをやろうとは思わないけれど、自分たちの気付いた違和感を告発し続けるってことは継続していきたいです。広義の意味でのグランジ精神というか、そのローカルさが強さを持つんじゃないかな、と。レペゼンしたいとかって気持ちはあまりないです。茅ヶ崎には、自分が帰ってきて安心できるような場所であってほしい。

―――Suchmosでも、その価値観は共有できていますか。

YONCE だと思います。結局、何かに属すってスタンスを持っていない人たち、何かに抗おうとしている人たちなんです。前を向いて、常にポジティブに物事を考えている連中だったから上手くハモったんだと思うんですよね。バンドが大きくなって「地元」を離れることになっても、そこがブレていなければ大丈夫だと思う。でも将来的にはまた「地元」に戻ってきたいって思いはやっぱりありますね。ここにしかないものがやっぱりあるから。


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  • 『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』

    タイトル:『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08』
    発売日:2020年1月15日 形態:DIGITAL

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  • Suchmos(サチモス)

    2013年1月に神奈川県で結成されたロックバンド。ROCKとJAZZ、HIP HOPなどのブラックミュージックにインスパイアされたYONCE(Vo)、HSU(Ba)、OK(Dr)、TAIKING(Gt)、KCEE(Dj)、TAIHEI(Key) の6人編成のグループ。バンド名の由来はルイ・アームストロングの愛称サッチモから引用している。自動車のTVCMソングとして起用された「STAY TUNE」で世間に名を広める。洗練された音楽性のみならず、ストリート出身ならではの存在感にも注目が集まり、ファッションやカルチャー誌の表紙を飾ることも多くミレ二アル世代を代表するアーティストとして、頭ひとつ抜けた活躍を見せている。2017年1月25日リリースの2ndフルアルバム『THE KIDS』は「第59回輝く! 日本レコード大賞」において最優秀アルバム賞を受賞した。2018年末には『第69回紅白歌合戦』に出場。2019年9月8日(日)には、結成当初から公言しつづけてきた、地元・横浜スタジアムでのワンマンライブ『Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM』を実現し、30,000人を動員した。


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