Suchmos・YONCEが、地元から離れない理由を語る

2020.1.15
Suchmos・YONCE

文=小田部 仁 撮影=神藤 剛


神奈川県茅ヶ崎市で生まれ育ち今も「地元」で暮らす、Suchmos(サチモス)のボーカルのYONCE(ヨンス)。都内を音楽活動の拠点としながら、今もなお都心まで1時間半以上かかるこの海沿いの街を、彼が生活の場として選んでいるのはなぜなのだろうか。

Suchmosというバンドにとって、そして、YONCE自身にとって、自分が自分らしくいるための理由がそこにはあった。

この記事は『クイック・ジャパン』vol.124(2016年2月発売)に掲載されたインタビューを転載したものです。


「地元はもういいや」と思い、横浜の高校に進学

サーフィンはやらない。でも、この街で生まれて育った――Suchmosのボーカリスト、YONCEは地元・茅ヶ崎に今も暮らしている。駅から徒歩1分の彼の実家は彼が知る限り少なくとも曽祖父の時代より同じ場所から1ミリも動かずそこにあるそうだ。タバコをくわえリラックスした様子で街を歩く彼の姿は、茅ヶ崎の青い空の下、よく馴染んでいた。YONCEの足は一度行ってみたかったという喫茶店「BRANDIN」へと向かう。店内にはアナログ・レコードがずらりと並び、コーヒーの柔らかな香りが漂っていた。YONCEが暮らす茅ヶ崎という街の豊かな時間の流れをそっと垣間見た気がした。

―――生まれた時から、ずっと茅ヶ崎に住んでるんですか。

YONCE いや、1年ぐらい前まで横浜で一人暮らしをしてたんですけど、バイト先が潰れたのを機に地元に戻ってきました。中学生ぐらいの頃は「なんにもないし早くこんな街出たい」って思ってたんですけど、今となっては、「この街、最高だな」って感じです。

―――勝手なイメージですが、茅ヶ崎に住んでいる少年少女は一度はサーフィンを経験しているものだと思ってました!

YONCE 全然そんなことないです(笑)! うちの家族は誰もやらない。やる地域とやらない地域があるんですよね。茅ヶ崎は中学校ごとにカルチャーがはっきりしてるんですけど。僕が通ってた中学は駅から近いこともあって、山側のヤンキーカルチャーと海側のサーフカルチャーのどっちにも触れてるバランスの良い「都会っ子」的な感じでした。成人式行くと、はっきりそれがわかるんですよ。海の方の奴らは洒落た感じで集合してるのに、山側の奴らは今時ダブルのスーツにセカンドバッグ。リムジンをチャーターして市役所の周りを流す。それを僕らの中学の連中は「うわー、変わんねぇなあいつら」って感じでニヤニヤ見てる。そういう三者三様の関係性でした。

「高校時代溜まり場にしていたライブハウスの楽屋です。 湘南で活動するシンガーソングライター藤森翔平と」(YONCE)

―――子どもの頃の地元の思い出で、心に残っているものってありますか。

YONCE 中学3年生の時に、友達と寝ずに海で朝日が昇るのを待ってたことですね。中3って受験勉強もそうですけど、人生の岐路に立たされる時期じゃないですか? そこで何をするかによってその後の人生がある程度決まってくる。でも、急に焦りだした友達の姿とかに僕は違和感を感じてて。「お前ら、なんだよ」って。結局、自分が大人になりきれてなかっただけだと思うんですけど。当時、僕は公立と私立の違いも知らないような大馬鹿だったんですけど、同レベルのバカな友達がいたんです。そいつと夜中、海に行って「朝日が出てくるまで、ずっと見てようぜ」って海辺にあるベンチに座って、あぁでもないこうでもないって色々話しながらただ昇ってくるのを眺めていました。もちろん、親には言わずに。週に2~3回ぐらいのペースでやってて、めっちゃひどい風邪ひいたのを覚えてます(笑)。

―――地元の高校に進学されたんですか。

YONCE その頃には「地元はもういいや」ってなってたので横浜の高校に進みました。僕は飲食店をやっていた叔父に中学生の頃から音楽を教えてもらってたんですけど、高校に通い始めた頃にはもう「音楽で飯を食っていくんだ」って気になっていて。軽音楽部に入って、藤沢のライブハウスに出たりしてました。学校よりその藤沢のライブハウスの方が圧倒的に実家から近かったから、学校サボってずっとそこに通ってましたね。もちろんガンガン実家には電話かかってきてたんですけど(笑)。親からは死ぬほど怒られたんですが、僕としては「いや、音楽やるし!」みたいな感じで、結局、高校2年生の時に退学しました。

地元にいると、世の中を引いた目で見ることができる


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