「ピアニッシモは解散の味」煙草と歩む納言・薄幸、人生の起点となった一服


めっちゃ煙草吸う私

元相方が大量注文を綺麗に平らげる。
何とも言いがたい、どんよりした重い空気が漂っていた。
数分の沈黙後、覚悟を決めて口を開く私。
「解散したいなって思って」
また長い沈黙が流れる。
「そう言われるかなと思っていた」
何となく察していた様だった。
察していた上で、大量注文していた。
大変心が強い人だ、と思った。

それから元相方はすぐに、それなら芸人を辞める事を私に告げた。
泣きながらそう告げる元相方を見て、申し訳ない気持ちと、今までの感謝の気持ちが込み上げて来て、自然と私も涙が溢れ出てきた。
私から解散切り出しておいて言える立場では無いけど、すぐに決断出来る元相方はかっこいいと思った。

数十分話した後、元相方が先に店を出る。
まだ店に残った私は、喫煙席に移動させて貰った。
それから数年後、今のコンビを結成する事になるのだが、その時は今後はしばらくピン芸人として活動するつもりだった。
“これから一人か”
不安やら恐怖やら色んな感情が混じり合う中、ピアニッシモを吸う。
“そうか、一人だとネタ合わせ中でも、相方に気を遣って禁煙席に行く必要も無いんだな”
そう思うと、楽だなと思う反面、寂しい気持ちにもなった。
多分その日、サイゼリヤでピアニッシモを1箱位吸ったと思う。

今は基本セブンスターだけど、稀にピアニッシモも吸う。
ピアニッシモを吸う時、たまに解散した時の事を思い出す。
タール1ミリのピアニッシモだけど、私にとっては少し苦い思いのある思い入れのある味だ。

ちなみに、禁煙席に行く必要無いんだなって書いたけど、今の相方・安部は喘息持ちだから、その時よりも更に禁煙席に座るハメになった。
安部、ちっともネタ書かないくせに。
人生上手くいかないもんだね。

連載納言・薄幸の煙たい記憶は、毎月1回の更新予定です。

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薄幸(納言)

(すすき・みゆき)お笑い芸人。1993年生まれ、千葉県出身。安部紀克との男女コンビ「納言」のメンバー。「三茶の女は返事が小せえな」「渋谷はもうバイオハザードみてえな街だな」など“街ディス”ネタが人気のコンビ。バラエティでは薄幸のヘビースモーカーっぷりや大酒飲みのやさぐれキャラクターにも注目が集まって..

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