ネットショッピングの普及などに伴い、特にコロナ禍以降は、宅配便の取り扱い個数が急増している。普段人々が何気なく利用している宅配サービス、しかしその荷物一つひとつは人の足と手によって届けられている。
2022年に結成30年を迎えたお笑いコンビ・アンバランスの黒川忠文は、最近まで芸能活動の傍ら宅配業に15年従事したベテラン配達員だった。本コラムでは“宅配のプロ”だった彼が、長年の経験をもとに積み重ねてきた配達テクニックや、その過程で経験した数々のエピソード、宅配業の裏側を明かす。
あなたの荷物はどんな経緯を辿り、どんな思いを背景にして届けられているのか。
目次
お笑い歴30年、宅配業歴15年の“宅配業者芸人”

皆様、初めまして。お笑いコンビ・アンバランスの黒川と申します。
いきなりですが、今や誰もがテレビやネットでのショッピングを利用していると思います。Amazon、楽天や個人売買のメルカリ、ヤフオクなどその種類はたくさんあるものの、最終的にお客様の手元に届けるのは宅配業者です。
今回は、宅配業に従事して15年の私が、この仕事を始めたきっかけからお話しします。
二足のわらじ生活のきっかけは、「たった4000円」の月給
以前、私が在籍していた芸能プロダクションはお給料制だったため、仕事があってもなくても生活は安定していました。お笑い芸人で給料制というのは大変珍しく、ほかの芸人からうらやましく思われていました。
でも次第に「こんなぬるま湯に浸かってていいのか?」と思うようになり、コンビで相談して、歩合制に変えてもらいました。当時、毎週のレギュラーと単発の仕事もあったので、なんとかなるだろうと思っていたのです。
しかし、歩合制に変わってから初めての給料日。
銀行口座を確認すると、事務所名義で借りていたマンションの家賃を引かれて入金されてたのはたったの4000円! これでは、奥さん、当時小学3年と1年の娘ふたりとの4人家族を養っていけません。
そういうわけで、すぐに宅配業の門を叩いた次第でございます。
3分に1個で平均1日150個を配達
この連載では、そんな私から宅配業の基本や裏側、エピソードを紹介させていただくことで、みなさまに少しでも「宅配」に興味を持ってもらえたらと思います。
まずはじめに、私たち宅配業者が1日に取り扱う配達物の個数や、ひと月でどれくらい稼げるのか、といった基本情報をご紹介していきます。

まず1日の配達個数について。配達者個人の能力や配達地域によって違いますが、私が担当する地域では平均150個くらい、多くて200個以上を配達する人もいます。私の場合、1時間の配達件数は20個くらい。「少なくない?」と思う方もいるかもしれませんが、1時間で20個ということは、3分に1個ということ。そう考えると、なかなかのハイペースです。
しかも1時間に20個という配達件数は、スムーズに配達できた場合の話です。
ひとつ配達して次のお宅へ移動する時間もかかれば、不在票を書いて投函したり、宅配ボックスへ入れる作業もあります。また、代引きの荷物であれば、代金を受け取ったりお釣りを渡したりと、作業が増えれば増えるほど荷物1個あたりにかかる時間が長くなります。
単純計算すると150個を配達し終えるのに7時間半かかることになりますが、これは休憩なしでの時間。加えて、朝の荷物の積み込みや帰社後の荷物保管、代引きの入金作業など加えると……けっこう大変なのがわかってもらえると思います。
“荷物1個あたり”の歩合制で働く配達員も
さて、皆さんが気になるのは「これでどれくらい稼げるのか?」ということでしょう。実は、配達員の稼ぎは雇用形態によって違いがあります。
たとえば運送会社の社員であれば、給料制のため安定した収入が見込めます。私自身が複数の会社のドライバーとお話しして算出した平均金額は、月給35~40万ぐらいでしょうか。
一方、社員ではなく委託で配達している、宅配業界では「サポーター」と呼ばれる配達員もいるのですが、この場合は荷物1個あたりの歩合制になります。それも、あくまで配達完了出来た個数によって歩合が決まるので、不在で持ち戻った荷物はお給料として計算されません。

委託している会社によって金額の違いはありますが、私が聞いたところでは1日150個の荷物を配達して(不在なしで)、2万~2万5千円くらいが「サポーター」の平均日給だと思います。(なお、この記事で紹介している金額は、私が働いていた時期のものなので、現在は変動があるかもしれません)
またサポーターは、配達に使う車を個人で所有しているかリースしているので、燃料、メンテナンス費などがかかります。こういった負担は、配達員にとって大きなストレスになる場合もあると思います。
宅配業者の大敵…配達車の故障が生むストレス
この配達に欠かせない車(軽バン)ですが、故障するときもあり、これがめっちゃめちゃストレスになります。当然ながら配達はストップするし、車の不具合を直さないといけない。過去の一番多いトラブルは「バッテリー上がり」でした。ですんで、車載道具のひとつとして「ブースターケーブル」は必需品です!(できるだけ長いケーブルがおすすめ)
一日150個も配達してれば少なくとも7、80回は車を止めてエンジンかけてを繰り返すわけで、バッテリーには相当な負担と消耗になるでしょう。15年間宅配業をしていた私は、5回以上はバッテリー上がりに苦労させられました。
まずは同僚の車に来てもらい(ジャンプスターターがあれば救援頼まなくてもいいですけどね)、ブースターケーブルを互いの車のバッテリーにつなぎ、始動する。これだけのことなんですが、来てもらった同僚には本当に申し訳ない気持ちになるんですよ。配達地域の異なるところから配達の手を止めてもらってわざわざ来てもらう、バッテリーの搭載位置によっては荷台の荷物をずらしたり、下ろしてもらうこともあるんです。
そう、軽バンのバッテリー搭載位置は、メーカーや車種によってバラバラなんです。ですからバッテリーが上がると「バッテリーどこや?」から始まって、荷物を移動させたりとけっこう時間がかかる。救援車との駐車位置によってはケーブルが届かなかったりと、ハプニングが重なることもあったりで、かなりの時間をロスします。
そうなると、時間指定の配達荷物が間に合うのかが気になって焦ってしまう。人はそういうときほどミスしますから、ここはまず落ち着いて、遅れる旨を配達先に連絡入れて、いつも以上に安全運転を意識して、時間に遅れたことを謝りながら配達していました。
このように、実際に従事したことのある人にしかわからない苦労やストレスも多い宅配業。その経験者のひとりとして、これから本連載で“あなたの荷物が届くまで”のアレコレをご紹介できたらと思います。次回もお楽しみに!
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