ドラマ『伝説のお母さん』は、なぜ社会問題をファンタジー世界の中に描いたのか

2020.2.17

写真提供:よるドラ『伝説のお母さん』(NHK総合)
文=早川大輝 編集=鈴木 梢


「ファンタジー作品」と言われれば、それは見た目も中身もファンタジーな作品だと、ほとんどの場合思うかもしれない。ところが、“見た目はファンタジーなのに中身は厳しい現実”という、変わったドラマがNHKで放送されている。

ライター早川大輝の連載「忘れたくない僕のテレビドラマ記録ノート」、今回は『伝説のお母さん』(NHK総合)について。ロールプレイングゲームの中のファンタジー世界によく似た世界で、登場人物たちは“ワンオペ育児”や“待機児童”など厳しい現実を突きつけられ奮闘する。ファンタジーと厳しい現実を組み合わせることで、見えてくるものはなんなのだろうか。

日本ドラマにはファンタジー作品が少ない

日本のテレビドラマには、ファンタジーを題材にした作品が少ない。とはいえ、漫画原作の実写映画が多いことを考えると、それは単純に予算の問題なのかもしれない。

そういう意味では、低予算を逆手にとり、あえてチープさを前面に押し出す手法をとったテレビ東京の『勇者ヨシヒコ』シリーズはうまかった。『ドラゴンクエスト』を彷彿とさせるファンタジー世界を舞台にした勇者たちの冒険活劇だが、セットを使いまわしたり、登場するモンスターがCGを使わずにぬいぐるみだったりと、チープさを隠す気がない。なんというか、大人が全力で遊んでいるようなドラマだった。

一方で、日本のドラマは常に「リアリティ」を求められているようにも思う。これが日本でファンタジードラマが少ないもうひとつの理由なのではないだろうか。日本でのファンタジードラマと言えば、『JIN -仁-』や『流星ワゴン』『時をかける少女』といった「タイムスリップ系」が多く、そのほか現代の日本に宇宙人がやってきた話、特殊能力を持った人間が出てくる話などがあるが、基本的には日本が舞台の作品だ。ファンタジーをひとつの要素に、それ以外の描写では現代社会を描いているものが多いように思う。日本ではない、ファンタジー世界を舞台に設定することは難しい。

だからこそ、『伝説のお母さん』には驚いた。


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