『東京卍リベンジャーズ』最終回が賛否両論を呼ぶ理由。“ループもの”が持つ危うさとは?
11月16日発売の『週刊少年マガジン』51号で、5年半にわたる連載に幕を下ろした『東京卍リベンジャーズ』。昨年には実写映画化・アニメ化され、来年1月にはアニメ2期、そしてゴールデンウィークと夏には実写映画が二部作で公開されることが決定している。
そんなブーム真っただ中に迎えた最終回は、賛否両論が渦巻く結果に……!? 今回は賛否両論を呼んだ『東京卍リベンジャーズ』最終回の背景とその理由に迫る。
※以下ネタバレを含みます。
目次
賛否両論の最終回!“伏線の未回収”を指摘する声も
──あと5話で完結へ。そう発表されたとき、マイキーは黒い衝動とやらを全解放しているし、タケミチは絶望を知らないのかと言いたくなるほど曇りなき瞳で彼に立ち向かっていた。
え? あと5話でこのふたりが全力で戦いながら、稀咲の「オレは」や半間の「死神と道化」などの匂わせワード、タケミチの新能力「未来視」の伏線を回収するだと!?(まだほかにもたくさんある)
……と、最終回を迎える衝撃よりも、本当に終わるのだろうかという不安のほうが大きかったように思う。
その後、最終回残り1話まで辿り着いた本作だが、想像だにしない急展開っぷりに、打ち切りを心配する声が上がった。
さらにネット上では、『ギャグマンガ日和』の“突如打ち切りを告げられた漫画家が伏線を無理やり詰め込んで最終回を描く”という「ソードマスターヤマト」の物語を連想する人が続出。その結果、「#ソードマスターヤマト」がツイッターでトレンド入りを果たす珍事が発生した。
翌週、無事に最終回を迎えるも、やはり未回収の伏線の多さを指摘する声も多く、賛否両論のフィナーレとなった。
打ち切りではなかった?インタビューで明かされた最終回の裏話
だが、そんな賛否を一蹴するかのように、『週刊少年マガジン』51号に掲載されたロングインタビューで和久井健先生はこんな話をしていた。
──最終回の構想はいつごろから決まってたんですか?
血のハロウィンくらいの時には決まってたと思います。
──そんな早くから!?
場地が死んだ時に、絶対生き返らせてやろうって決めてたんですよ。
『週刊少年マガジン』51号より
最終話だけではなくロングインタビューまで読み込むと、『東京卍リベンジャーズ』最終回はけっして打ち切りではなく、必然の結末だったのだと。そして、読者が伏線だと思っていたものは、そもそも伏線ですらなかったのかもしれないと思い知らされる。
けれど、なぜだろう。この釈然としない気持ちは……。それは『東京卍リベンジャーズ』の最大の特徴である“ループもの”が持つ危うさにあるのかもしれない。
“ループもの”の魅力と、主人公・タケミチとの相性のよさ
まずは、“ループもの”の魅力と、本作がいかにその魅力と相性のよかった作品なのかを説明したい。
『東京卍リベンジャーズ』は主人公・タケミチが、ヒナタが死ぬ未来を変えるため、そしてマイキーを救うために何度もタイムリープし、不良グループ「東京卍會」のトップを目指す物語だ。
なんらかの原因によって登場人物が特定の日や時代を何度も繰り返す……まさに“ループもの”ど真ん中の設定だ。
同じ内容が繰り返されることで混乱したり、なかなか前に進まないことにストレスを感じるという理由で、“ループもの”に苦手意識を持つ方もいるかもしれない。
だが、本作においては、それらのマイナスなイメージを凌駕するほど、“ループもの”に共通する「繰り返す困難と成長」という魅力を最大限に発揮した作品だったように思う。
たとえば、タケミチは最初の世界線では逃げてばかりの人生で、うだつの上がらないフリーター生活を送る大人になっていた。けれど、最悪な未来を変えるために何度も困難に立ち向かい、ループを繰り返す最中に心身共に成長していく。
もともとのタケミチが超絶ヘタレでケンカが弱いタイプであったため、彼の困難と成長がより輝いて映った。
すべてなかったことに……。「全員生還エンド」の虚無感
では、“ループもの”の危うさとはなんなのか。それは、何度も繰り返せるという性質上、すべてをなかったことにできてしまう点だ。
『東京卍リベンジャーズ』の最終回は、ほかの世界線では命を落としたキャラクター全員が生還するというハッピーエンドであった。
もちろん、過去に亡くなったキャラクターが生き返るのは喜ばしいことだ。だが、本作は死という残酷な展開があったからこそ生まれた、胸打つストーリーがたくさんあった。
場地の死後に大きな喪失感を抱えながらも、タケミチを壱番隊隊長に任命する千冬。最終章では、ドラケン亡きあと、自分の夢よりも彼との“双竜の誓い”をまっとうする三ツ谷……。
つまり、「故人の遺志を継いで前に進む」という唯一無二の力強さがそこにはあった。
最終回の全員生還エンドでは、その過程のループが詳しく描かれなかったことも相まってか、この胸打つストーリーの数々が一瞬でなかったことにされてしまった。結果、とてつもない虚無感に捉われてしまった。
虚しさ感じる最終回、唯一の救いは……?
そんな虚しさ感じる最終回だったが、唯一の救いはタケミチの相棒として奮闘した千冬がストーリーテラーとして登場したことだろうか。
前の世界線では敵だったキャラクターも、最終回の世界線ではみんな仲間。そして、タケミチとヒナの晴れ姿を見た千冬は心の中でこう呟く。
でも オレは知ってるんだ この幸せが当たり前じゃない事を…
『東京卍リベンジャーズ』278話より
なんでかわからないけど 記憶の奥にある あの背中が
何度も何度も失敗して たぐりよせた奇跡だって事を
千冬は、タケミチとタイムリープの秘密を共有するなど、前の世界線ほど密接な相棒ではなかったかもしれない。
けれど、幾度となくタケミチのリベンジを支えた千冬が、読者が“なかったことにされた”と思っていたものの存在を肯定してくれたことで、少しだけ救われた気がした。
──賛否両論を呼んだ『東京卍リベンジャーズ』最終回だが、『週刊少年マガジン』51号では、2023年11月ごろに特別編(タイトル未定)が発表予定であることが明かされている。いったいどんな物語が待ち受けているのか、今から楽しみだ。
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