【貧乏必見】金をかけずに暖をとる、地下芸人の越冬術|神宮寺しし丸の“生き方説明書” #14


『食』〜50円で凍死を阻止〜

僕の冬の食事は「湯豆腐」です。
それに気付いたのは小学生の頃。毛玉だらけのセーターにペラペラのジャンパーを着込んでも、すきま風だらけの部屋は寒い。なんだか眠くなってきて凍死を覚悟した時、姉が作ってくれたのが湯豆腐でした。湯豆腐を作ると当然湯気が出ます。その湯気が部屋全体に広がり、震える僕を暖かく包み込んでくれました。僕は湯豆腐から出る湯気をまるで魔法の煙を見るように眺めます。

さらに湯豆腐は暖房器具という役割だけに終わらず、なんと食べられるんです。暖かく包み込んでくれた湯豆腐さんを食べるのは忍びないのですが、そこは食べざかりの小学生。湯豆腐にむしゃぶりつきます。熱い。出汁も具もない沸騰したお湯に豆腐が入っただけの素の湯豆腐は、味うんぬんではなく、ただただ熱い。しかし、今度はこの熱さが体の内側から僕を暖めてくれます。額から汗が吹き出します。気付いたら僕はTシャツ姿になっていました。

それからというもの、僕の冬は湯豆腐です。
「お鍋でいいんじゃない?」という声も聞こえてきますが、「だったら暖房つけるわ!!!」と大声を出してしまいます。お豆腐は50円で買える暖房器具です。それでも厳しいという時には、豆腐も入れずただお湯を沸かす「空焚き」という荒技もあります。部屋は暖まりますし、沸騰したお湯を飲めば、気付いたらTシャツです。

【注意】

暖をとるために辛い物を食べる人がいますが、あれはリスクが大きいのであまりお勧めできません。辛い物を食べると汗をかきます。瞬間的に体は暖まりますが、汗が引き始めたときの寒さは尋常じゃなく、風邪を引く可能性があります。

気軽に病院へ行ったり薬を買ったりできない僕らにとって、風邪は命とりなのです。

『住』〜はあきらめろ〜

僕の部屋はすきま風だらけです。すきま風には実家で鍛えられていたとはいえ、寒いものは寒い。当たり前ですが、すきま風防止の「すきまテープ」は貼っています。それでもすきま風は、その名の通りどこかのすきまから入り込んで来るのです。どうにかならないかと思い悩んで、すきま風が吹き込む窓を睨みつけます。そしてある決断をすることに。それは「窓をあきらめる」です。

僕は100円ショップへ走り、一番分厚いガムテープを買いました。その帰りに近所のスーパーで段ボールを貰います。そして、作業開始。今までお世話になった窓に一礼し、段ボールを押しあてます。それを分厚いガムテープでしっかり固定。数個の段ボールを固定すると窓は完全に塞がりました。さらに、窓のすきまというすきまにガムテープを貼り巡らせます。作業終了。今まで“窓”だった場所は“壁”となりました。

それからというもの、僕は窓の外を見ていません。
しかし、後悔はありません。綺麗な夜景でも見える窓ならともかく、隣の爺さんの洗濯物しか見えない窓になんの意味があるのか。そう思いながら窓、いや、壁を誇らしげに眺めております。

【注意】

部屋に人が来た時は、段ボールとガムテープが貼り巡らされた窓を見て引かれます。
しかし、「この人何か悩んでるのかな?」とめちゃくちゃ優しくしてくれることもあります。

神宮寺しし丸
元・窓の壁(制作費100円)

貧しさが生んだ冬の「衣食住」いかがでしたか?
皆さんも実践していただき、今年も無事に越冬しましょう!

連載神宮寺しし丸の“生き方説明書”は、毎月1回の更新予定です。

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