マスクを外さない日本人、自分のことは自分で決められないのか

2022.11.8
マスクをする人

文=小林英介


2020年1月、日本で初めて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者が確認されてから、約3年が経った。本稿執筆日前日の2022年10月27日には、新型コロナウイルスの新規感染者数は4万2737人となり、10月20日の3万6110人から6627人増加しているが、8月19日の26万922人からは大幅に減少。死者数も9月2日の347人から10月27日には71人と減少し、重症者数も昨年9月4日の2223人から10月27日には120人とすべてにおいて減少をつづけている。


曖昧な「マスクの着用場面」

当初、新型コロナウイルスは、当たり前だがその姿が見えないことや、「無症状感染もあり得る」との情報もあったため「大変な疫病だ」と筆者も感じていた。数回にわたって、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言が発令され、「不要不急」という、曖昧で理解に苦しむ言葉が流行ったのも記憶に新しい。

そういった生活の中で、私たちは、感染対策としてマスクを日頃から着用するように呼びかけられ、マスクは手放せない「日常アイテム」となった現状がある。

ただ、どうだろう。それから数年が経ち、まじめ過ぎる日本人の性格がジャマをし、「皆がマスクをしているから」などと理由をつけて、なかなかマスクを外せず、結局は政府が「マスクを外してよい場面や着用する場面」を教えてしまう始末。みんな「私たちは子供ではない。なめているのか」と、怒りたくならないのだろうか。これまで日本人は「まじめ」と言われてきたが、その国民性が新型コロナを長引かせているという視点に、なぜ気づかないのかと思ってしまうのだ。

マスクをしながら汗を拭く男性

政府は2022年5月20日、新型コロナウイルス対策での「政府の考え方」を公表。屋内と屋外でマスク着用の有無が異なるとした。屋外では目安となる2m以上の「距離が確保できず、会話をする場面」であれば「マスク着用推奨」、それ以外は「マスク必要なし」となっている。一方、屋内の場合は目安2m以上の「距離が確保でき、会話をほとんど行わない場面」であれば「マスク必要なし」、それ以外は「マスク着用推奨」といった具合だ。

まず、私が少し引っかかったのは言葉の違いだ。マスクの「着用推奨」と「必要なし」では与える印象が大きく違う。「着用推奨」では「マスクを着用するといいですよ、おすすめですよ」と感じる反面、「必要なし」では「マスクを着用しなくてよい」ときっぱりと言い切られた感覚になるのは私だけだろうか。マスクの着用を「推奨」するのならば、外すのも「推奨」とすべきであり、マスクの「必要なし」であれば反対に「着用」とすべきではないのか。

責任逃れと世論の「分断」

さらに書いておきたいのは、「マスク着用の方法」をこれほど政府から細かく決められる必要があるのかという点だ。前述した言葉の印象もそうだが、皆、責任逃れをしたいという思いを感じてしまう。

人は、どうしても責任を取りたくないと思う生き物だ。「誰々のせいでこのような惨事になっている」と思うのは楽だし簡単だが、そのように文句を言う人は、実際にはその現場に立っていないのだから、私を含めて好き勝手なことを言えるのだ。

それに加え、「分断」も起きている。前回行われたアメリカ大統領選挙でも似たことがあったし、近頃の日本でも頻繁に起きていることだが、SNSなどで同じ考え方を持つ人同士がつながりを持つことにより、一種の集団を形成。集団の考え方と相反する考えを持つ人たちに対して、激しく攻撃するのだ。

ひとつたとえを挙げよう。数年前から接種が始まった新型コロナウイルスワクチンに対する考え方として、いわゆる「ワクチン賛成派」と「ワクチン反対派」(いわゆる「反ワクチン派」)に分かれている状態なのは、この記事の読者も周知の事実だろう。

ワクチン

はっきり言おう。ワクチンを打つか打たないかは個人で考えればよいことだ。私の知り合いにはワクチンを1回も打っていない人もいれば、4回目まで打ち終わっている人もいる。マスクも同様だ。マスクをするのもしないのも個人の自由。こちらは「マスクを着用しろ」との同調圧力が働いていると筆者は感じる。

実は先日、私はマスクを外して歩いていたところ、見知らぬお年寄りに「マスクをしてください!」といきなり怒鳴られた。「マスクをしろ!」と命令口調で言わなかったのには感心したが、いきなり怒鳴られたので、私は驚いた。 ただまわりには私しかおらず、お年寄りとも距離は取れていた。それにもかかわらず、「マスクをしろ!」と怒鳴られるのだから、同調圧力というものは怖いと感じた。

ただ、筆者は、どこでもマスクを外しているわけではない。新型コロナウイルスがまん延してきてからは、人混みの中や何かしゃべるとき、JR、地下鉄など公共交通機関を使う際にはマスクを着用している。

2020年の9月には、とある男性が、関西空港に向かっていた旅客機の中でマスクの着用を拒否し客室乗務員にけがをさせ、航空機を緊急着陸させ運航を妨げたなどの罪で逮捕されている。男性は2022年10月26日に開かれた裁判の中で「マスクの着用は個人に選ぶ権利がある」などと主張し、検察の懲役4年の求刑に対しても無罪を主張しているが、筆者としては、考え方が偏り過ぎていると感じる。

マスクの着用について、逮捕された男性の「個人に選ぶ権利がある」という主張は理解するが、他人にケガを負わせ、航空機を着陸させるほどのやりようだ。そこまでして自分の意思を貫き通すのは、到底、理解できない。今回の場合は、相手から言われたことに対して素直に従っていれば、事件にもならなかっただろう。あまりにも「やり過ぎ」で迷惑な話だ。


自分のことを自分で決められないのか

コロナ禍の人混み

コロナ禍で改めて感じたことだが、自分のことを自分で決められないのはいかがなものなのだろうか。たとえば、千葉県船橋市の株式会社WDCが調査した20代~50代の300人を対象とした「マスク着用アンケート」によると、屋外で人との距離をじゅうぶんに保てる場合にマスクを外しているのか聞いたところ、「外している」が46%、「外していない」が54%とマスクを外していない人が半数を超えた。そしてマスクを「外していない」と回答した人にその理由を聞いたところ、一番多かったのは「屋外でも感染対策を行いたいから」が34.57%で最多、次いで「マスク着用が習慣になっているから」が24.69%、「まわりの目が気になるから」が23.46%となった。

この調査結果を見て違和感を覚えないだろうか。あくまで調査は300人を対象としているのでサンプルが少ない気もするが、成人年齢を超えた大人たちが、マスクをしていないと「まわりの目が気になる」と回答しているのだ。まるで子供のような考え方だ。大人なのだから自分のことは自分で決められないのか。

人生のすべてを自分で決めろと言っているのではない。時には他人に助けられることもあるだろう。
私は「ワクチン反対」とか「コロナは風邪」とはまったく思っていない。ワクチンは数回打ったし、室内ではマスクをするが、ワクチンを打ちたくないのであれば打たなくてよいし、マスクをしたくないのであれば、周りの目など気にせず着用しない判断をしてもよいという当たり前の常識。これが人々の中に、なぜ、ないのだろうかと疑問に思うが、この想いを理解してくれる人はなかなかいない。

パチンコ・居酒屋・ライブハウス叩きなどはどこへ行った

スマホで批判する人

新型コロナウイルスがまん延し出した当初、パチンコ店や居酒屋、ライブハウス、飲食店が営業をつづけたことが批判の的にされ、休業に追い込まれた。なぜ批判されたのか。その理由は「密になる」からだということだった。
それならば、ほぼ毎日「密」である満員電車を止めるため、出社させないなどの措置も必要だったはずだ。人員不足などさまざまな都合があるのだろうが、命と仕事では、命のほうが大切に決まっている。

最近では、こうしたパチンコ店や居酒屋への批判をあまり見なくなったように思うが、どこへ行ったのだろうか。感染者が増えると、テレビをはじめとしたマスコミは酒を提供する飲食店や居酒屋などを叩いたが、よく考えてみてほしい。それらの店に行く人々の多くは、「密」など気にしてはいないのだ。「密」など関係なく、パチンコをしに行き、居酒屋で酒を飲み、ライブハウスに行っている。特に、居酒屋や飲食店では、マスクを着用した状態で店に入り、マスクを外して飲酒や食事をするのが当たり前になっている。そして、店を出ると再びマスクを着用しているが、もう意味がない。新型コロナ対策として実施している検温や消毒も含め、あくまで「対策をやっているというアピール」にほかならない。

微かな希望とこれからの日々

今までは、さんざん苦言ばかり呈してきたが、希望を持てる動きもある。前述したライブハウスについては、日本ライブハウス協会が2022年10月14日に「新型コロナウイルス感染症拡大予防ガイドライン」を改訂。観客のマスク着用、間隔の確保の周知など所定の感染対策を徹底することで、収容人数の100%の収容を可能とするとした。
また、新型コロナウイルスの感染者数、重症者数、死者数は、今のところ減少をつづけている。今までの傾向からすれば重症者は毎年1月前後、4月前後、8月前後で増えているが、筆者としては、今までどおりの生活をすればよく、特に気にするほどではないと考えている。

厚生労働省は、新型コロナウイルスを防ぐには手洗い、アルコール消毒、人混みを避けるといった行動面での注意点や、風邪の症状、37.5℃以上の発熱が4日以上つづいたり、強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)があったりする場合には注意するように呼びかけているが、よく考えてみると、インフルエンザや普通の風邪と同じ対処法ではないかとも思う。

そして、新型コロナウイルスによって確実に表面化した「分断」。これは、これからの時代も、もっと深まる可能性がある。果たして、これから私たちは、どのように考え、生きていけばよいのか。私は頭の片隅に少しだけ「モヤモヤ」を感じながら、日々を過ごすことは間違いないだろう。


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小林英介

(こばやし・えいすけ)北海道滝川市出身。1996年生まれ。公務員を経てフリーライター・編集者として活動。現在は業界紙の記者として働く傍ら、さまざまな媒体に寄稿している。数年前からさまざまな分野の記事執筆を始めて現在に至る。ビール、日本酒、焼酎を好み、ビールは毎日飲むほど。野球好きで、北海道の高校野球..

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