ライブへの渇望によって生まれた最上のパフォーマンス
「今年が勝負」だと、最も強く伝えてくるのはいつも白岩瑠姫だった。ファンの存在を当たり前とせず、常に課題に目を向け、負けることが大嫌いな彼。JO1のライブ勘を危惧し、ライブに飢えていた闘う王子様は、ステージを牽引する存在感と憑依を見せた。「僕らの季節」と「KungChiKiTa」だけを見ても、まるで別人。アンコール最後の「Run&Go」で聴かせたシャウトに近いロングトーンは、とても忘れられそうにない。
「行けるところまで行ってやる」と、映画『JO1 THE MOVIE『未完成』-Go to the TOP-』で語っていた大平。ステージの下段に降りたり、大きく手を動かしてJAMを扇動したり、ライブにおける彼の存在は、JO1にとってもJAMにとっても大きかった。「地方にライブに行きたい」と、何度も口にしてきた彼もまた、ライブに貪欲だ。最後のコメントでも「メラメラ燃えている」と静かな炎を見せた。どんな場面でも揺るがず、自分の世界を持っている大平。だからこそワンシーンで魅了し、たったひと言さえも強く印象に残るのだろう。
「グループのブラックペッパーでありたい」と言いつづけてきた金城碧海。しかし願いとは裏腹に、彼は幾度となく主人公になってしまう。「SuperCali」ではもはやステージの支配者であり、「無限大」「OH-EH-OH」には、彼のボーカルが“飛び込んでくる”ような感覚があった。<世界はZERO 君がいないと>と歌う「ZERO」では、その温かなボーカルにより、歌詞の裏にある「君がいる満ち足りた世界」を感じさせた。「ライブを早く経験したい」とまだ先の夢のように話していた彼が、「Run&Go」にて花道の真ん中でひとり、飛び跳ねるように踊っていた。うしろ姿でも、きっと笑っていることがわかった。
いつも幸せについて考えている佐藤景瑚。「Rose」の曲振り前にさらりと言った「僕とJAMはつながっているんで」との言葉も、彼が言うのなら心からのものだと思える。パフォーマンスですべてを出し切ったのか、ぽわぽわとしたエンディングのコメント。最近は年を重ねていくことがおもしろいと言い、「僕のクリスマス、全部あげます」と、柔らかな笑顔でとんでもない約束をしてくれた。言葉がうまくはないけれど、いつだって心ごとくれようとする彼らしい、最大級の愛情表現だと思った。
関連記事
-
-
シティポップだけではこぼれ落ちる80年代前夜のリアルを、スージー鈴木が小説『弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる』で語り直した理由
スージー鈴木『弱い者らが夕暮れて、さらに弱い者たたきよる』(ブックマン社):PR -
政治家に学ぶ“絶対に謝りたくない”ときの言い回し。奇妙な「政界語」が生まれるワケとは?
イアン・アーシー『ニッポン政界語読本』(太郎次郎社エディタス):PR -